20 December 2015

2015年のベスト商品


窓の外の工事音を,ほぼ完全にシャットアウトしてくれた。これは福音。

東京地判平成27年3月12日(株式が所得税法33条1項にいう「資産」に該当しないとした事例,日本振興銀行株式低額譲渡事件)

  • 銀行に金融庁の立ち入り検査。Xは銀行の取締役であり,のちに代表執行役。
  • 2010年3月5日付けの株式譲渡契約に基づき,Xが,銀行株式950株をD社に譲渡。1株あたり33万5000円。譲渡益が出る。
  • 9月10日に銀行が経営破たん。
  • 10月20日付けの株式譲渡契約に基づき,Xが,銀行株式3100株を,税理士Cに譲渡(本件株式譲渡)。一株あたり1円。ここから譲渡損が出たとして申告。
  • 中野税務署長が,本件株式譲渡を譲渡所得の計算の基礎に含めることができないとして,更正。
争点は,本件株式譲渡の時点において,銀行株式が所得税法33条1項にいう「資産」に該当しないものであったか否か。

東京地裁は,まず,一般論として次のようにいう。
同項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」には,一般にその経済的価値が認められて取引の対象とされ,増加益が生じるような全ての資産が含まれるが,その一方で,上記の増加益を生じ得ないもの,すなわち,社会生活上もはや取引される可能性が全くないような無価値なものについては,同項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」には当たらない
そして,株式について,自益権と共益権に着目して次のように判示する。
株式の経済的価値が自益権及び共益権を基礎とするものである以上,その譲渡の時点において,これらの権利が法的には消滅していなかったとしても,一般的に自益権及び共益権を現実に行使し得る余地を失っていた場合には,後にこれらの権利を現実に行使し得るようになる蓋然性があるなどの特段の事情が認められない限り,自益権や共益権を基礎とする株式としての経済的価値を喪失し,もはや,増加益を生ずるような性質を有する譲渡所得の基因となる「資産」には該当しない
しかるのち,この一般論を事案にあてはめて,結論として「資産」に該当しないとした。

自益権と共益権に着目してあてはめていくところは,整った法的三段論法。その前段の大きな一般論のところで,「社会生活上もはや取引される可能性が全くないような無価値なもの」というところに規範的評価が入っており,本件株式譲渡をはじきだすロジックが組み込まれている。事案をみすえたロジックと読むべきであろうか。

なお,株式が無価値になっていたとすると,経済的な意味での実損はどう扱われるか。この点は争点になっていない。ライブドア損害賠償金課税事件(神戸地判平成25年12月13日判例時報2224号31頁)の発想を援用すれば,保有株式につき資産損失と構成する(所得税法51条4項)ことが考えられる。もっとも,雑所得で売却損を出していた同事件と異なり,本件では譲渡所得で譲渡損を出していて,その射程は及ばない。

ちなみに,本件株式譲渡時の時価はゼロに近かったから,所得税法59条2項の適用の問題にはなりえない事案である。

BEPS行動4の2015年報告書へのコメント

2015年10月に,利子費用の損金算入に関する行動4の報告書が出た。これに対する日本法の角度からのコメントを,租税研究794号に掲載していただいた

そこでは触れていない点を補足しておく。クロスボーダー組織再編で用いられるdebt-push downsに対するtargeted rulesについては,2014年12月の討議文書においては,targeted rulesの対象として言及されていた(パラ181)。今回の報告書では,第9章がtargeted rulesについて述べているが,特にこの点に関する具体的な言及が見当たらない。ということは,米国でPfizer/Allerganのインバージョンについて指摘されているような利子費用控除の問題には,とくに個別措置を勧告しているわけではないということ。

公益社団法人 日本租税研究協会は、民間の立場から財政・税制問題を調査・研究するために創立された団体です。

マレーシア・シンガポール・タイの優遇税制,日本にも出先機関

租税研究794号(2015年12月)に,ベーカー&マッケンジーのEugene Lim et al.による講演「Rise of regional headquarter incentive programmes in Southeast Asia: implications for Japanese multinationals setting up Asian Regional Headquarter operations」が載っていた。

冒頭で,次のように述べられている。
ポストBEPSの世界においても優遇税制がなくなることはないということが,ここにきてはっきりしてきています。
そういう認識であったか。興味深い事実として,たとえば,シンガポールの国際統括本部(IHQ)になるための条件は公表されておらず,条件は具体的には交渉でシンガポール政府と固めることが可能だ,と指摘している(151頁)。

末尾に,「各国の投資開発庁の日本にいる出先の担当者にコンタクトなさるのも一案」との発言があったので,情報収集のためにすこし検索してみた。
探せばほかにももっとあるだろう。BEPS行動5は,アジアのこういう現実の中で考えていかなければならない。


新日独租税条約,BEPS行動に対応

2015年12月17日に署名。日本側のプレスリリースはこれ。ドイツ側のはこれであり,条約のドイツ語テクストはこちらのみにリンクがある。かねてより,ドイツの条約交渉方針は2013年8月22日にリリースされており,事業所得条項でAOAを取り込むことが既定路線だった。検索してみたら,先のリリースへのリンク先はいつの間にか削除されていた。

今回は,AOAの取り込みに加えて,BEPS行動に対応して表題や前文からして新しくなっている。すなわち,表題は
所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のためのドイツ連邦共和国と日本国との間の協定
となっていた。また,前文は
日本国及びドイツ連邦共和国は、
両国間の経済関係の一層の発展を図ること及び租税に関する両国間の協力を強化することを希望し、
所得に対する租税及びある種の他の租税に関し、脱税又は租税回避を通じた非課税又は課税の軽減(第三国の居住者の間接的な利益のためにこの協定において与えられる租税の免除又は軽減を得ることを 目的とする条約漁りの仕組みを通じたものを含む。)の機会を生じさせることなく、二重課税を除去するための新たな協定を締結することを意図して、
次のとおり協定した。
となっていた。条約漁りに対抗してLOBとPPTを入れ(21条),仲裁条項を入れる(24条5)など,面目を一新している。

東京弁護士会税務特別委員会,「税法の基礎知識」をアップしていた

「法律家のための税法」を読むための税法の基礎知識

その前書きを引用する。
東京弁護士会税務特別委員会では,「法律家のための税法」(通称「赤本」)を刊行し,その版を重ね,現在では[民法編]と[会社法編]の分冊となっている。同書籍は,弁護士に求められる税法ないし税務の知識を,民法や会社法の条文に沿って整理しているものであるところ,かかる書籍の体裁から,必ずしも税法自体の基礎知識について十分な記述がなされている訳ではない。
本特集では,「法律家のための税法」を読むにあたり役立つと思われる税法の基礎知識について,実務上特に重要な所得税,法人税及び相続・贈与税を中心に解説する。
次の4本の解説がある。

  • 総論:所得税,法人税,相続・贈与税の体系と基本的な考え方
  • 各論 1: 所得税の基礎知識
  • 各論 2: 法人税の基礎知識
  • 各論 3: 相続税・贈与税の基礎知識

法科大学院の租税法の授業でも重点項目として扱う諸点,たとえばキャピタルゲイン課税や無償取引などが取り上げられている。税務特別委員会の方々が「基礎知識」として何を意識しておられるかが伝わってくるように思う。

17 December 2015

OECD諸国における消費税の分配上の効果(2014.12)

14頁のExecutive Summaryの一節を引用しておこう。すなわち,食料品・水道・エネルギー製品に対する軽減税率についての評価である。
これらの軽減税率は,貧しい家計への支援をターゲットするためには極めて稚拙なツールであることが示される。最善でも,豊かな家計は貧しい家計と同じ大きさの総便益を軽減税率から得る。最悪では,豊かな家計は貧しい家計よりも総額ではるかに大きい便益を得る。
The Distributional Effects of Consumption Taxes in OECD Countries

The Distributional Effects of Consumption Taxes in OECD Countries
In series:OECD Tax Policy Studies
Published on December 10, 2014

14 December 2015

大阪地判平成27年4月14日 清算手続結了前の株式相続と,清算後の留保利益分配へのみなし配当課税

事案はおおむね次のとおり。

  • 株式会社Bの破産手続が開始している中で,2006年に株主Aが死亡して相続開始。
  • 2007年にB社の清算手続が開始し,相続人Xらが,B社株式などにつき相続税の申告。この株式は,財産評価基本通達189の6により,清算の結果分配を受ける見込みの金額によって評価。
  • 2010年にB社の清算手続が結了し,Xらに対して解散により残余財産分配(「本件各分配金」)。

    相続
A ――――→ X

    B社


争点は,本件各分配金のうちみなし配当とされる金額が,所得税法9条1項16号「相続・・・により取得するもの」として非課税となるか否か。

大阪地裁は,非課税にならないとした。最判平成22年7月6日(生保年金二重課税事件)との関係や,清算中の株式評価のあり方など,興味深い論点を含む。

相続のタイミングとの関係で事案を巨視的に位置づけると,(あ)生前に会社を清算して現金を相続する場合と,(い)株式を相続したあとで会社を清算する場合との間に位置するとみることができる。
  • (あ)だと,Aがみなし配当課税を受けて(所得税),税引後の相続財産がXの相続税の対象になる。
  • (い)だと,Xが株式につき相続税の課税を受け,しかるのち,Xがみなし配当課税を受けるであろう(所得税)。そして,(い)について,少なくとも相続後かなりの時期がたっていれば,所得税が課されるという結論に異論は少ないであろう。(株式の取得価額が引き継がれるという暗黙の前提を置いているが・・・)。
とすると,本件については,これらの場合とのバランスも考える必要がありそうだ。控訴中。

ソウルでThe 2nd Asia-Pacific Regional Conference of IFA

このサイトで,1月から登録可能になるという。

11 December 2015

一橋法学14巻2号が,ウェブ上にアップされていた

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Issue DateAuthorsTitleOtherTitleSeries
10-Jul-2015高橋, 滋献辞Dedication-
10-Jul-2015佐藤, 弥恵一般国際法から見るWTO 法上の義務の性質The Legal Nature of WTO Obligations from the Perspective of General International Law-
10-Jul-2015宮崎, 綾望租税行政の国際的動向 : 協力的コンプライアンス(Co-operative Compliance)の意義と課題Co-operative Compliance under Japanese Tax Law-
10-Jul-2015小野, 秀誠オーストリア一般民法典(1811年、ABGB)の200年 : 啓蒙と官房学の結合Rechtspraktiker und die Entstehung des österreichischen BGB(ABGB)-
10-Jul-2015阿部, 雪子土地信託方式における空中権取引の課税Taxation of Transactions of Air Rights under the Land Trust System-
10-Jul-2015山田, 洋洪水防御と土地利用計画 : ドイツの「浸水地域」制度をめぐってHochwasserschutz und Raumplanung : Über die Überschwemmungsgebiete in Deutschland-
10-Jul-2015河野, 真貴子アメリカ化学物質管理法制度におけるリスク評価のコントロール(2)Control of Risk Assessment in the U.S. Chemicals Management System(2)-
10-Jul-2015濱田, 洋必要経費における「関連性」Relevance of Necessary Expenses in the Income Tax Act 37(1)-
10-Jul-2015藤木, 貴史アメリカの集団的労使関係法における熟議民主主義 : 被用者自由選択法案を題材としてDeliberative Democracy in American Labor Law : An Analysis of the Debate on the Bill of the Employee Free Choice Act-
10-Jul-2015加藤, 友佳同性婚と相続税・遺産税 : Burden 判決・Windsor 判決を中心としてSame-Sex Marriage and Inheritance・Estate Taxes : the Burden and Windsor Cases-
10-Jul-2015赤松, 晃帰属主義による国際課税原則の見直しの意義と機能 : 半世紀ぶりに改正された外国法人課税を中心にしてThe Significance and Functions of the 2014 Tax Reform in Line with the Authorized OECD Approach( AOA), Focusing on the Taxation of "Permanent Establishments"-

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Issue DateAuthorsTitleOtherTitleSeries
10-Jul-2015赤松, 晃帰属主義による国際課税原則の見直しの意義と機能 : 半世紀ぶりに改正された外国法人課税を中心にしてThe Significance and Functions of the 2014 Tax Reform in Line with the Authorized OECD Approach( AOA), Focusing on the Taxation of "Permanent Establishments"-
10-Jul-2015-水野忠恒名誉教授 略歴Short Biography of Emeritus Professor Tadatsune MIZUNO-
10-Jul-2015大林, 一広; 飯田, 連太郎; ジョナサン, ルイス政治的暴力と語り : 内戦、議会、自動内容分析Political Violence and Talk: Civil War, Parliament, and Automated Content Analysis-
10-Jul-2015リュック, ホイシュリング君主の投票権を通してみた君主政 : 歴史的比較法的分析La monarchie au prisme du droit de vote du monarque : Une analyse historique et comparée-
10-Jul-2015棟久, 敬信教の自由の保護範囲と国家の宗教的・世界観的中立性(2)Der Schutzbereich der Religionsfreiheit und die religiöse-weltanschauliche Neutralität des Staates(2)-
10-Jul-2015芳賀, 真一国際取引に対する消費課税の方法が厚生に与える影響についての仮想の市場を用いた模擬実験 : 仕向地原則と原産地原則、そして半額課税を比較する Simulation of International Consumption Taxation : Destination or Origin Principle?-
10-Jul-2015水野, 惠子「受益者等課税信託」と「受益者等が存しない信託」との関係における検討Taxation on Beneficiaries of Personal Trusts and Trusts without Beneficiaries-
10-Jul-2015高橋, 滋原子力関連施設をめぐる紛争と行政訴訟の役割 : 補論Judicial Review of Administrative Decisions Regarding Safety Regulations for Nuclear Power Plants in Japan Following the Fukushima Nuclear Disaster-
10-Jul-2015-水野忠恒名誉教授 著作目録List of Works by Emeritus Professor Tadatsune MIZUNO-
10-Jul-2015小泉, めぐみ課税繰延とキャピタルゲイン課税 : Law and Finance の視点に基づく分析Tax Deferral and Capital Gains Tax : Analysis Based on Law and Finance-
10-Jul-2015李, 鈞清末民国期におけるローマ法研究Studies of Roman Law in China : From the Late Years of the Qing Dynasty to the Period of the Republic of China-
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26 November 2015

モントリオールで,Brian Arnold教授の記念大会

モントリオールでCanadian Tax Foundationの大会があり,Brian Arnold教授が70歳になられたのを記念して,BEPSの実施についてのボーナス・セッションがあった。また,その翌日に小人数での討議セッションがあり,CFC(David Rosenboom),利子費用控除(Scott Wilkie),租税条約(Jacques Sasseville),CbCと義務的開示(Shawn Porter),多国間条約(Andrew Dawson)について突っ込んで議論したのち,BEPS2015年成果物の「出来具合を採点」する総括(Hugh Ault and Graeme Cooper)があった。カッコ内の名前がそれぞれの討議リーダーである。

この大会は日本の租研大会をさらにおおがかりにしたようなもので,プログラムが豊富。BEPSについては,OECD,国連,カナダ財務省,米国財務省の責任者を招いてのセッションがあった。また,CRA(カナダの国税庁)と民間専門家との間のラウンドテーブルなどもあり,中立的な組織でオープンに実務的懸案事項について論じていた。活動を支える人たちの明るさが印象的。

Canadian Tax Foundation

25 November 2015

独豪租税条約が,BEPS行動15の多国間条約を先取りしていた

2015年11月12日に,新独豪租税条約が署名された。ドイツ側の発表はこれオーストラリア側の発表はこれ

注目されるのは,2015年10月に発表されたBEPS行動15(多国間条約の策定)の具体化に先行して,すでにして行動6や7の内容を取り込んでいることだ。
  • タイトルと前文が,租税回避の防止を含んでいる
  • 1条2項が,透明事業体についてのルール
  • 5条のPEの定義が,契約分割や補助的活動,コミッショネアなどへの対策を盛り込む
  • 11条4項の利子条項で,back-to-back financing arrangementへの0%税率適用を排除
  • 23条1項でLOB,2項でPPT,そして3項で国内法上の租税回避防止規定の適用可
ただし,savings clauseは入っていない。また,次の点も注目に値する。
  • 7条は旧型であり,AOAは取り入れなかった
  • 28条で,源泉税還付の手続ルール
  • 30条で,個人情報保護のルールを明記
BEPS成果物の租税条約に関する部分が,二国間で実施されてきているかなり早い例である。もっとも,すでに2015年7月8日に署名されたNZとサモアの間の条約例があり,一番早いというわけではない。

Treasury CrestWortbildmarke: Bundesministerium für Finanzen, Link zur Startseite


22 November 2015

政府税調が,論点整理を出していた

2015年11月13日金曜日,日本では,政府税制調査会が「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理」を公表。ここ25年程度の経済社会の構造変化を,新しいデータをもとに「実像」把握して,それをもとに所得税制のあるべき姿について論点整理。

入口のウェブサイト上では大部でとっつきにくい印象を与えるが,実際にはそのようなことはなく,データをまとめた図表部分のバイト数が大きいために,ファイルを13分割しているだけ。

まず,論点整理の文章部分の本体はこの部分。また,「実像」把握の部分は,この後半部分の数頁(37-43頁)に整理されている。いずれについても,豊富な図表データが付されている。

したがって,見かけ以上に読みやすい。駒場の1年生のゼミ生にも,すでにアクセスして読んでいた方がいた。たしかに,現物を精読すべき文書である。

14 November 2015

加藤晴久『ブルデュー 闘う知識人』(2015年)

この本は社会学の本ではない。・・・
社会学の本でないなら,何の本なのか,と問われれば,ブルデューへのわたしのオマージュであると答えよう。(「あとがき」より)
人間として,知識人として,社会学者として,どういう人であるかを識るからこそ書けるオマージュだ。ブルデューの同時代知識人に対する評価と ブルデュー社会学の理論的骨格がくっきりと浮かび上がる。終章「若い読者のために」は,必ずしも若くない読者(これから社会学に限らず幅広い諸学問領域に参入しようとする学生)にとっても,ブルデューの何をどう読むかを明快に教える。


ブルデュー 闘う知識人 表紙画像

10 November 2015

Financial Secrecy Index 2015が,米国の金融透明性欠如を批判していた

The Economistのこの記事でカバーされており,もとをたどると,TJNが2015年11月2日に発表したFinancial Secrecy Index 2015があった。米国をワースト第3位にしているところがニュースになる。第1位がスイス,第2位が香港。ちなみに日本は第12位で,CORPORATE TRANSPARENCY REGULATIONの指標が低評価の理由のよう。フル・データは12月に公表予定。関連記事はこれ

08 November 2015

大阪高判平成26・6・18 歯科医の死亡共済金を一時所得とした事例

 本件負担金270万円           本件共済金800万円
B ------------------>社団法人A -----------------------> X

親子が歯科医だった。父親のBが死亡して,Xが800万円を受け取った。これが相続税法9条のみなし贈与財産に当たらず,しかも,一時所得の計算上270万円は控除できないとして,Xが敗訴。結論は第1審大阪地裁平成25年12月12日税務訴訟資料263号順号12351も, この控訴審も,同じであるが,理由付けにおける一般論がかなり違う。

控訴審は,相続税法9条の適用があるためには
贈与と同様の経済的利益の移転があったこと,すなわち,一方当事者が経済的利益を失うことによって,他方当事者が何らの対価を支払わないで当該経済的利益を享受したことを要する
と判示する。また,所得税法34条2項の解釈として
「収入を生じた行為をするため,又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」とは,その収入に直接対応する支出に限られ,その収入との個別的対応関係が不明な支出は含まれない
と述べる。

一般論の射程をみきわめる必要があるが,かんじんの事案にはいろいろとわからないところがある。Xにとって800万円がストレートに贈与税の対象になってしまうならば,所得税の対象になるよりも不利ではなかったか。(Xは自分で負担したと主張しているようであるが)もしBが270万円を負担していたのであったなら,最判平成24年1月13日民集66巻1号1頁(逆ハーフ・タックス・プラン)の理由付けによって,Xは自ら負担していない金額につき控除が否定されるのではないか。

06 November 2015

TPPの暫定案文で,課税についての除外措置も公表されていた

2015年11月5日公表の内閣府のサイトをみると,案文そのものはNZのサイトにリンクがはってあり,そのText of the Agreementをたぐっていくと
29. Exceptions and General Provisions 
がある。そのうち,Article 29.4: Taxation Measuresが,課税に関する部分である。

これは全部で9つの項から成る条文で,第1項で用語を定義したのち,第2項において
Except as provided in this Article, nothing in this Agreement shall apply to taxation measures.
として,一般的に課税措置を適用除外するという原則を述べる。そして,租税条約との関係(第3項,第4項)に言及したうえで,次のように除外範囲を具体化している。

まず,第5項は,内国民待遇についてGATTと同様のルールをとることなどを示している。
5. Notwithstanding paragraph 3:
(a) Article 2.3 (National Treatment) and such other provisions of this Agreement as are necessary to give effect to that Article shall apply to taxation measures to the same extent as does Article III of GATT 1994; and
(b) Article 2.16 (Export Duties, Taxes or other Charges) shall apply to taxation measures.

そして,第6項は,注を略して転記すると大要下記引用のようになっていて(下線は引用者による。転記ミスがないことを望みたいが・・・),(a)から(c)の範囲では適用ありとしたうえで,さらに進んで,(d)から(j)までの規定については適用除外としている。

ざっと読むと,(a)では適用される場合が書いてある。(b)では,ここに掲げられた最恵国待遇などのルールから,個人所得税や法人所得税,相続税,贈与税などのいわゆる直接税が除外されている。(c)で,デジタル・プロダクツについてルールがある点も,興味深い。

 6. Subject to paragraph 3:
(a) Article 10.3 (National Treatment) and Article 11.6.1 (Cross-Border Trade) shall apply to taxation measures on income, on capital gains, on the taxable capital of corporations, or on the value of an investment or property (but not on the transfer of that investment or property), that relate to the purchase or consumption of particular services, except that nothing in this subparagraph shall prevent a Party from conditioning the receipt or continued receipt of an advantage that relates to the purchase or consumption of particular services on requirements to provide the service in its territory;
(b) Article 9.4 (National Treatment), Article 9.5 (Most-Favoured-Nation Treatment), Article 10.3 (National Treatment), Article 10.4 (Most-Favoured-Nation Treatment), Article 11.3 (National Treatment), Article 11.4 (Most-Favoured-Nation Treatment), Article 11.6.1 (Cross-Border Trade) and Article 14.4 (Non-Discriminatory Treatment of Digital Products) shall apply to all taxation measures, other than those on income, on capital gains, on the taxable capital of corporations, on the value of an investment or property (but not on the transfer of that investment or property), or taxes on estates, inheritances, gifts and generation-skipping transfers; and
(c) Article 14.4 (Non-Discriminatory Treatment of Digital Products) shall apply to taxation measures on income, on capital gains, on the taxable income of corporations, or on the value of an investment or property (but not on the transfer of that investment or property), that relate to the purchase or consumption of particular digital products, except that nothing in this subparagraph shall prevent a Party from conditioning the receipt or continued receipt of an advantage relating to the purchase or consumption of particular digital products on requirements to provide the digital product in its territory,

but nothing in the Articles referred to in subparagraphs (a), (b) and (c) shall apply to:
(d) any most-favoured-nation obligation with respect to an advantage accorded by a Party pursuant to a tax convention;
(e) a non-conforming provision of any existing taxation measure;
(f) the continuation or prompt renewal of a non-conforming provision of any existing taxation measure;
(g) an amendment to a non-conforming provision of any existing taxation measure to the extent that the amendment does not decrease its conformity, at the time of the amendment, with any of those Articles;
(h) the adoption or enforcement of any new taxation measure aimed at ensuring the equitable or effective imposition or collection of taxes, including any taxation measure that differentiates between persons based on their place of residence for tax purposes, provided that the taxation measure does not arbitrarily discriminate between persons, goods or services of the Parties;
(i) a provision that conditions the receipt or continued receipt of an advantage relating to the contributions to, or income of, a pension trust, pension plan, superannuation fund or other arrangement to provide pension, superannuation or similar benefits, on a requirement that the Party maintain continuous jurisdiction, regulation or supervision over that trust, plan, fund or other arrangement; or
(j) any excise duty on insurance premiums to the extent that such tax would, if levied by the other Parties, be covered by subparagraph (e), (f) or (g).

上記の(h)には注11が付されており,
11 The Parties understand that this subparagraph must be interpreted by reference to the footnote to Article XIV(d) of GATS as if the Article was not restricted to services or direct taxes.
となっている。要するにGATSと同様の解釈でいくようだ。

第7項は,Performance Requirements関係。第8項は,課税と収用の区別にかかわる。第9項がシンガポールの留保を記している。

すこし入り組んでいるので,ざっとではなく,ちゃんと読まないといけませんね。まだ正文として確定していない段階であるし,そもそも発効するまでは効力のあるテクストでもないことも,留意点。

05 November 2015

Uberのtax planningが,記事になっていた

2015年10月22日付けFortuneの記事How Uber plays the tax shell gameである。たとえば,ローマでUberを利用して車に乗り,100を支払う。そのうち80はドライバーに,20はオランダのBVに。20のうちコストが10だとすると,コストを差し引いた残りの10がフルに課税されるかというと,そうではない。BVは0.2だけととって,残りの9.8をオランダのUber International C.V.にロイヤルティーとして支払う。CV (commanditaire vennootschap) はオランダ法上のパートナーシップに相当するが,バミューダにheadquarterを置いている。そして,バミューダは課税しないし,オランダも課税しない。なお,Uber International C.V.は米Uberの子会社だが,米国の租税法上,外国法人として扱われ,米国の課税からもシールドされるという。このからくりを,この記事はB.V.-C.V.とか,Double Dutchとかと呼んでいる。ビデオ説明もある。Hat tip: @masayoshimu

ドライバーに支払った80は,ドライバーが所得として申告するだろうか?この点についても,プランニングの余地が指摘されている

uber_diagram_web

02 November 2015

租税行政に関して,論文公募がでていた

2016 International Conference on Tax Administration: Call for Papers
 
The 12th International Conference on Tax Administration will be held at the Crowne Plaza Hotel, Coogee, Sydney on 31st March & 1st April 2016.  The theme of the conference will be Global trends and developments in tax administration service delivery.  Those interested in presenting a paper at this conference are encouraged to submit a proposal that accords with this theme (for example, digitalisation, simplification, benchmarking, alternative tax dispute resolution, citizen-focused tax administration, fostering voluntary compliance, tax administrative responses to BEPS, etc).
Your proposal should include the following details:
·      title of the paper;
       ·      author(s) brief bio and contact details;
·    an abstract of between 200-500 words of the contents of the proposed paper including its findings;
·   status of the paper (for example, whether it is part of ongoing research or whether it has been previously published, etc).
Proposals should be sent to Binh Tran-Nam at b.tran-nam@unsw.edu.au with the subject ‘Tax Admin Conference Call for papers’ by end of Monday 4 January 2016 (Sydney time).
 
A Steering Committee will select papers for the conference and will advise you of its decision by mid January 2016.  Full papers will be required to be submitted by early March using the conference template.  Selected papers will be published either as book chapters in an edited book or refereed articles in a special issue of the eJournal of Tax Research (an A ranked journal in the Australian Business Dean Council’s Journal Quality List 2013).  Papers submitted on time will be eligible for the Cedric Sandford Medal.
 
Enquiries about the conference should be directed to Binh Tran-Nam, Chris Evans and Michael Walpole .


31 October 2015

英国がBEPS行動4と5につき,実施のためのコンサルテーションをはじめていた

2015年10月22日に,英国財務省(HM Treasury)が次の文書を公表し,コメントをつのっていた。すなわち,
である。2015年10月5日にリリースされたBEPS最終報告書をうけて,その枠組みにそくして論点を提示している。

論点として提示されている質問の多くは「ヨコのものをそのままヨコにした」ような印象を受ける。とはいえ,こうしてすぐさま対応をとれるところが,英語が公用語であって,国の内外がシームレスにつながっている国の強み。しかも,翻訳作業なしに「実施に向けて動いていますよ」ということを,他の国々に対して対外発信できるのは,本当に有利なことだ。

日本におけるBEPS最終報告書の説明としては,税制調査会のサイトに,この財務省説明資料がアップされている。これはもちろん日本語による。

28 October 2015

国連の国際租税協力専門家委員会が,年2回になる

2015年10月19日から23日に,ジュネーブでEleventh Session of the Committee of Experts on International Cooperation in Tax Mattersがあった。この文書のパラ13によると,今後は年2回開催にするという。議題は,PEの定義におけるconnected projectsの意義や,extractive industriesの課税(下記リンク)など。

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work presented for approval (and approved) by the Committee:
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guidance note on capital gains taxation and indirect transfers                                  
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a proposal to work on the following guidance notes:
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20 October 2015

18 October 2015

Angus Deatonが2015年ノーベル経済学賞

このひと。需要の推計についてAlmost Ideal Demand(AID) Systemを考えた。また,Milton Friedmanの恒常所得仮説を実証データで覆した。今回の受賞について,AID論文共著者のJohn Muellbauerは,エビデンス・ベースの経済学の勝利だといっているらしい。「らしい」ということを含めて,この記事の受け売りなのですが。

16 October 2015

BEPS2015成果物では,各国がどこまで合意できたか

13本の報告書が,2015年10月5日にリリースされ,10月10日にG20財務大臣会合で承認された。これに関する解説文のパラ11を精読すると,今回各国がどこまで合意できたかが浮かび上がる。

パラ11の原文を引用する(太字は原文による,下線(1)と下線(2)は引用者による)。
11. A comprehensive package of measures has been agreed upon. Countries are committed to this comprehensive package and to its consistent implementation. These measures range from new minimum standards to revision of existing standards, common approaches which will facilitate the convergence of national practices and guidance drawing on best practices. Minimum standards were agreed in particular to tackle issues in cases where no action by some countries would have created negative spill overs (including adverse impacts of competitiveness) on other countries. Recognising the need to level the playing field, all OECD and G20 countries commit to consistent implementation in the areas of (1)preventing treaty shopping, Country-by-Country Reporting, fighting harmful tax practices and improving dispute resolution. Existing standards have been updated and will be implemented, noting however that not all BEPS participants have endorsed the underlying standards on tax treaties or transfer pricing. In other areas, such as recommendations on hybrid mismatch arrangements and best practices on interest deductibility, countries have agreed a general tax policy direction. In these areas, they are expected to converge over time through the implementation of the agreed common approaches, thus enabling further consideration of whether such measures should become minimum standards in the future. Guidance based on best practices will also support countries intending to act in the areas of mandatory disclosure initiatives or controlled foreign company (CFC) legislation. (2There is agreement for countries to be subject to targeted monitoring, in particular for the implementation of the minimum standards. Moreover, it is expected that countries beyond the OECD and G20 will join them to protect their own tax bases and level the playing field.

二つ目の太字部分以下に,まず着目しよう。ミニマム・スタンダードが合意されたのが,下線(1)の4つ,すなわち,条約漁りの防止,国別報告書の提出,有害税制への対抗,紛争処理の改善,である。
(1)preventing treaty shopping, Country-by-Country Reporting, fighting harmful tax practices and improving dispute resolution.
これら4つについては,下線(2)のように,モニタリングを行うことに各国が合意した。ということで,この4つについてが最強度の合意ということになる。

これに対し,
Existing standards have been updated and will be implemented, noting however that not all BEPS participants have endorsed the underlying standards on tax treaties or transfer pricing.
とあるのは,既存のスタンダード,すなわちOECDモデル租税条約や移転価格ガイドラインなどの改訂を指す。必ずしもすべての国が合意したわけではないことが,この文章からうかがわれる。国連の移転価格マニュアル第10章でブラジルがとっていたスタンスなどが思い出される。

続く文章は,ハイブリッド・ミスマッチと,利子費用控除について(下の引用文のイタリックは引用者による)。
In other areas, such as recommendations on hybrid mismatch arrangements and best practices on interest deductibility, countries have agreed a general tax policy direction. In these areas, they are expected to converge over time through the implementation of the agreed common approaches, thus enabling further consideration of whether such measures should become minimum standards in the future.
各国は「一般的な租税政策の方向」に合意した,と記している。そして,それが収斂することが予想され,将来のミニマム・スタンダードにすべきかどうかの更なる検討を可能にする,と述べている。含蓄のある表現だ。

さらに,義務的開示や,CFC税制については,ベスト・プラクティスに基づくガイダンスが出されたと記す。
Guidance based on best practices will also support countries intending to act in the areas of mandatory disclosure initiatives or controlled foreign company (CFC) legislation.

パラ11の読みとしては,こんなところだろうか。近いうちに,交渉の詳細を示す二次文献が出てくるのを待ちたい。

15 October 2015

Second-best Justice: The Virtues of Japanese Private Law

ラムザイヤー教授の新著が出る。このBook Talkによると,日本の司法が過度のコストをかけずに次善のところで効率的に法を動かしていると主張。交通事故の損害賠償額の定型的算定のごとし。

http://www.press.uchicago.edu/ucp/books/book/chicago/S/bo21163304.html

14 October 2015

最判平成27年10月8日(倉敷青果荷受組合事件)

権利能力のない社団(X)の理事長及び専務理事の地位にあった者(A)が当該社団からの借入金債務の免除を受けることにより得た利益が所得税法28条1項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与に当たるとされた事例

X -----> A

先行して,平成17年7月31日に別の株式会社BからAが借入金債務の免除を受けたときには,所轄税務署長が,平成26年6月27日付け課個2-9ほかで削除される前の所得税基本通達36-17の適用ありとしていた(「債務免除益のうち,債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては,各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しない」)。

その後,平成19年12月9日の理事会で,XがAに対し,借入金債務48億3682万1235円を免除した。所轄税務署長は,平成22年7月20日付けで,Xに対し,債務免除益がAに対する賞与に該当するとして,源泉所得税の納税告知処分と不納付加算税の賦課決定処分。その取消を求めてXが出訴。

岡山地判平成25年3月27日税務訴訟資料263号順号12184は,この債務免除益には所得税基本通達36-17本文の適用があるとして,Xの請求を認容。国が控訴。

広島高裁岡山支判平成26年1月30日は,控訴棄却。その理由は,所得税法28条1項の給与等にあたらないというものであった。高裁判決の要旨は,最高裁によって次のようにまとめられている。
XのAに対する貸付金は元本の弁済のめどの立たない不良債権であったところ,平成17年債務免除益に本件旧通達の適用があるとの判断が所轄税務署長により示された後にAの資産の増加がなかった状況の下で本件債務免除がされたことからすると,本件債務免除の主たる理由はAの資力の喪失により弁済が著しく困難であることが明らかになったためであると認めるのが相当であり,AがXの役員であったことが理由であったと認めることはできない。したがって,本件債務免除益は,これを役員の役務の対価とみることは相当ではなく,所得税法28条1項にいう給与等に該当するということはできないから,本件債務免除益についてXに源泉徴収義務はないというべきである。
国が上告。最高裁は原審を破棄し,事件を差し戻した。まず,次のように述べて,所得税法28条1項にいう給与に該当するという。
所得税法28条1項にいう給与所得は,自己の計算又は危険において独立して行われる業務等から生ずるものではなく,雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供した労務又は役務の対価として受ける給付をいうものと解される(最高裁昭和52年(行ツ)第12号同56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁,最高裁平成16年(行ヒ)第141号同17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁参照)。そして,同項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与とは,上記の給付のうち功労への報償等の観点をも考慮して臨時的に付与される給付であって,その給付には金銭のみならず金銭以外の物や経済的な利益も含まれると解される。
前記事実関係によれば,Aは,Xから長年にわたり多額の金員を繰り返し借り入れ,これを有価証券の取引に充てるなどしていたところ,XがAに対してこのように多額の金員の貸付けを繰り返し行ったのは,同人がXの理事長及び専務理事の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものとみるのが相当であり,XがAの申入れを受けて本件債務免除に応ずるに当たっては,Xに対するAの理事長及び専務理事としての貢献についての評価が考慮されたことがうかがわれる。これらの事情に鑑みると,本件債務免除益は,Aが自己の計算又は危険において独立して行った業務等により生じたものではなく,同人がXに対し雇用契約に類する原因に基づき提供した役務の対価として,Xから功労への報償等の観点をも考慮して臨時的に付与された給付とみるのが相当である。
したがって,本件債務免除益は,所得税法28条1項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与に該当するものというべきである。
そして,次のように述べて,事件を差し戻した。
以上と異なる原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件債務免除当時にAが資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であったなど本件債務免除益を同人の給与所得における収入金額に算入しないものとすべき事情が認められるなど,本件各処分が取り消されるべきものであるか否かにつき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
地裁で争われていた争点が,再度審理されることになる。その後,平成26年度税制改正で,所得税法44条の2が立法化され,債務免除益に関するくだんの所得税基本通達36-17は削除されている。この最高裁判決は債務免除益の収入金額算入については判断を下しておらず,あくまで給与所得該当性を述べているにとどまるが,果たして民集に載るだろうか?


12 October 2015

来週の駒場ゼミは,この4本

B班のみなさん,事前にコメントがあれば自由にポストしてください。

The Trans-Pacific Partnership
Every silver lining has a cloud (20)
Egypt after the Arab spring
A dud return to democracy (44)
Europe’s migrant crisis
Angela the beleaguered (85)
India and the environment
Greenery by stealth (21)