29 October 2016

欧州委員会、利子費用控除制限の分析をだしていた

The Effects of Tax Reforms to Address the Debt-Equity Bias on the Cost of Capital and on Effective Tax Ratesである。EU28か国の利子費用控除制限ルールと、法人税課税ベース改革案(CBIT, ACE, ACC, COCA)について、それらの影響を分析している。2016年3月に提出されたものが、今回公表された。

ちょうど2016年10月25日の法人税改革パッケージで、CCCTBを再提案しており、その中には、負債バイアスに対応する案が入っている。
  • 一方で、負債の利子費用控除をBEPS行動4やATADの線で制限
  • 他方で、自己資本についてリスクフリー利子相当額を控除(名前はAllowance for Growth and Investment (AGI))
European Commission logo

28 October 2016

2017年IFA地域大会のパンフレットが、でていた

ASIA PACIFIC REGIONAL TAX CONFERENCE, 2017 NEW DELHI – INDIA 28-29 APRIL, 2017

AUのBEPS対応について、1年後の評価がでていた

原文はここから読める。要約は以下のとおり。

Implementing BEPS, or Maybe Not - The Australian Experience One Year On

Graeme S. Cooper
University of Sydney - Faculty of Law

October 17, 2016

New Zealand Law Review, 2016 (Forthcoming)
Sydney Law School Research Paper No. 16/91

Abstract:    
This Paper examines Australia’s implementation of the BEPS project since the final reports were released in October 2015. The recent history demonstrates a confused picture. On the one hand, some of Australia’s actions have been both quick and supportive, with the government enthusiastic to announce its adherence to the BEPS project, though sometimes with quiet and subtle modifications to features of the OECD models. On the other, there have been projects that are seen by much of the rest of the as world inconsistent with the BEPS project, even if Australian policy-makers try to present them as BEPS-compliant. So while Australia’s politicians might wish to represent our recent tax measures as a form of BEPS cooperation, Australia is at risk of adding to the dangerous current appetite for unilateralist approaches to international tax.



フィナンシャル・レビュー127号が、出ていた

フィナンシャル・レビュー
平成28年(2016年)第2号(通巻第127号)

平成28年10月発行
目次
<特集>税制改革‐エビデンスに基づいた政策提言
田近 栄治 成城大学経済学部特任教授
 責任編集
田近 栄治
(成城大学経済学部特任教授)
 日本の所得税改革-経済,財政と社会保障の現状を踏まえた提言-
  1. はじめに
  2. 財政の課題
  3. 社会保障関係費はなぜ増大を続けるのか
  4. 所得税改革の課題と進め方
  5. おわりに
田近 栄治
(成城大学経済学部特任教授)
八塩 裕之
(京都産業大学経済学部教授)
経済格差と税・社会保障負担に関するマイクロ・シミュレーション
  1. はじめに
  2. データと推計方法
  3. 標準結果
  4. 2015 年度の公的制度による評価
  5. 政策シミュレーション
  6. 再分配効果と政策的含意
  7. まとめ
川出 真清
(日本大学経済学部教授)
 女性の労働と税―データを用いた現状分析―
  1. はじめに
  2. 103 万円・130 万円の壁
  3. 1989 年と2013 年の年収分布比較と要因分解
  4. 2004 年の配偶者特別控除の一部廃止の効果分析
  5. 現在の議論
  6. おわりに
横山 泉
(一橋大学経済学研究科/一橋大学国際・公共政策大学院専任講師)
児玉 直美
(一橋大学経済学研究科/一橋大学国際・公共政策大学院准教授)
家計の資産選択と金融所得課税
  1. はじめに
  2. わが国の金融所得課税改革
  3. わが国家計の資産選択の実態
  4. 家計の資産選択に関する先行研究
  5. 実証分析
  6. おわりに
山田 直夫
(日本証券経済研究所主任研究員)
 中小企業課税の新展開―資本と労働間の所得移転にどう対応すべきか―
  1. はじめに
  2. アメリカ ―パススルー法人を活用した社会保障税の節税問題―
  3. イギリス ―法人税の最低税率設定による法人成り問題―
  4. ノルウェー ―二元的所得税の下での節税問題と2006年税制改革―
  5. 日本 ―近年の制度変化と今後の改革の方向性―
  6. おわりに
田近 栄治
(成城大学経済学部特任教授)
八塩 裕之
(京都産業大学経済学部教授)
法人税の帰着―労働は法人税を負担しているのか?―
  1. はじめに
  2. 法人税の帰着に関する理論
  3. 法人税の労働への帰着に関する実証分析
  4. 分析方法とデータ
  5. VAR モデルの推定結果と動学乗数
  6. おわりに
布袋 正樹
(大東文化大学経済学部准教授)
 国際課税制度が多国籍企業の経済活動に与える影響
  1. はじめに
  2. 日本の国外所得免除方式への移行:税制改正の背景,目的およびその内容
  3. 外国子会社配当益金不算入制度による国外所得への税負担の変化
  4. 実証研究のレビュー
  5. 議論
長谷川 誠
(政策研究大学院大学助教授)
 財政力の地域間格差と税源配分:交付税は格差を是正するのか?
  1. はじめに
  2. 分析方法
  3. 分析結果
  4. 結論
宮崎 毅
(九州大学大学院経済学研究院准教授)
平成27年度の財務省財務総合政策研究所の活動

22 October 2016

米国の自主的開示、10万人を超える

2016年10月21日付けのこのプレス・リリースで、米国内国歳入庁が公表。
  • Offshore Voluntary Disclosure Program (OVDP)で、2009年以来、55800人、追徴税99億ドル
  • Streamlined Filing Compliance Proceduresで、48000人、追徴税4.5億ドル
これまでの経緯は、これ。各州でもやっている(NYの例、MNの例)。

なお、OECDの比較法研究は、まず2010年に出ていて、アップデートがこれ(2015)


14 October 2016

ADB「アジアパシフィックの租税行政2016」が、でていた

宮木さんのこの記事で、報告書の公刊を知った。
  • アジア各国の租税の対GDP比率は平均で18.8%であり、OECD平均の34.2%よりずっと低い。
  • 歳入当局の自律性が限定されてしまっている(歳出予算の柔軟使用、内部組織設計、人材任用について)
  • 長期的プランニングが大事
  • 電子サービスの強化が希望
  • 豪、NZ、星の自主的開示プログラム
報告書の本体はこれである。公共財の提供(=政府の本務)のために、改善すべき点がだいぶある。

なお、最後の自主的開示(voluntary disclosure)については、報告書本体の105頁以下で論じられており、主たる納税義務自体の減額または免除を伴うtax amnestyとは区別すべきであるとしている。たしかに、最近のエコノミスト誌も、インドネシアとインドの例をあげて、tax amnestyには批判的な記事を出していた。ここでも、ベストプラクティスと、「おすすめできないやり方」とがあるということだろう。


11 October 2016

NIRA「わたしの構想」No.26が、でていた

今なぜ軽減税率なのか?

「わたしの構想」No.262016/10発行
識者:マルコ・ファンティーニ(欧州委員会 税制・関税同盟総局 VAT部門長)、マリー・パロット(ニュージーランド内国歳入庁政策戦略部門 シニア・ポリシー・アドバイザー)、ボー・ロススタイン(オックスフォード大学ブラバトニック公共政策大学院 教授)、大竹文雄(大阪大学社会経済研究所 教授)、星 岳雄(東京財団 理事長、スタンフォード大学 教授) *原稿掲載順企画:加藤淳子(NIRA 総研 客員研究員、東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
今なぜ軽減税率なのか?
 政府は消費増税時期の再度の先送りを表明。2019年10月の引き上げの際、同時に軽減税率制度を導入するとしている。軽減税率導入の目的とされるのが、「逆進性」の緩和だ。消費税には所得や資産に関係なくすべての人に同じ税率がかかるため、所得の低い人ほど、税負担が重くなる逆進性があるとされる。しかし、すでに軽減税率を導入している欧州諸国の専門家は、他国には導入しないよう助言してきた。軽減税率は本当に逆進性の緩和に有効なのか。わが国の実情に合う制度なのか。検討する。

08 October 2016

東京地判平成27・9・29(神鋼商事事件-受贈益)

この判決。次の事案において受贈益の課税を肯定。
  • 平成19年3月、タイ関連会社の新株引受け。
  • 他の株主が新株予約権を行使せず、持株割合が29%から97%に上昇。
  • 純資産価額で一株あたり3万2461バーツの新株を取得し、額面の25%たる250バーツを払い込み。
  • 差額を受贈益とする更正処分。
なぜこういう取引をしたのだろうか?判決文からは、タイの外資規制緩和があったことがわかる。いわく、
平成12年から、タイ人及びタイ法人以外の企業が発行済株式の50%以上を保有している企業であっても、資本金を一定額以上とすれば、参入できる業種が制限されないこととなった
とのこと。増資し、支配権を確立するというビジネス上の理由があったことがうかがわれる。関連して、ジェトロのこのサイト

わからないのは、 どうして具体的にこの手法をとったか。株式価値と払込金額の差額がこれだけ大きいと、受贈益の認定リスクはあった(いうまでもないが、払い込まれた金額が資本等取引として損益計算から外れるというのはあくまで新株を発行する会社側の話であり、法人株主たる親会社側についてはもろに損益計算の話になる。金子宏ほか『ケースブック租税法第4版』458頁)。このリスクを避けるために、プランニングの可能性はなかったか?すぐに思いつくだけでも、たとえば・・・
  • 新株の価値を推計したうえで、それに見合った金額を払い込み、しかるのち、配当や貸付金といった形で日本親会社に還流するというやり方は?
  • 増資の前に他の株主をキャッシュアウトして、しかるのち増資する、といったやり方は?
といった疑問がある。ともあれ、上告受理申立中のようである(この資料の16頁)。先例との関係では、東京高判平成22・12・15に続くもの。

なお、受贈益が誰からやってきたかについては、子会社からと構成しても、他の株主からと構成しても、その点では益金算入という結論は変わらないはず。