日本政治史の本格的な研究書。神戸正雄の思想形成過程を河上肇と対比して論じ(第1章)、臨時財政経済調査会の税制改正案を分析し(第2章)、さらに進んで、知事公選・両税委譲・雪害運動・沖縄救済・地租法改正法案という諸問題を地域の「平等」に関する政治過程として捉え検討する(第3章)。
おおいに蒙を啓かれる。神戸正雄のものはこれまで断片的にしか読んだことがなかった。納税道義に関する彼の関心がどこに由来するか、本書によりはじめて理解できる。「道義院」設立論者であった彼の思想的枠組みは、「対外的な危機意識を背景にした国家的視点、非道義的な気風の排除、富豪への嫌悪感から来る社会主義との一定の親和性」にあったのである(22頁)。この考え方と財産税導入論が結合する。しかも神戸の場合、社会政策的税制論とは一線を画し、給付能力原則に適合した租税理論を展開した(65頁)。本書は、このような神戸学説の読み込みを経て、臨時財政経済調査会の議事がどのような対立軸を有していたかをつぶさに検討する(たとえば141頁)。なるほど。
時代を超えて、税制改正に携わるアクターに対して、「あなたはどういう理念をもって行動しているのですか」、と静かに問いかけるような、奥行きと広がりを感じた。日本史年表を片手に読み進むのも楽しい。
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