11 February 2026

固定資産税判例,まずはここから

固定資産税は市町村の基幹税で,最高裁判例が積み重なっている.以下,基本的なものを選りすぐってリストアップしておこう.

  • 固定資産評価を争う上で特に重要なのは,11が判断枠組みを示したことだ.
  • この領域で多くの訴訟が提起されている理由として,10が国賠訴訟に途を開いたことも大きい.

1.最大判昭和30年3月23日民集9巻3号336頁.固定資産税名義人課税事件.固定資産税は原則として登記簿上の所有者(名義人)に課される.いわゆる台帳課税主義.

2.最判昭和47年1月25日民集26巻1号1頁.名義人が負担した固定資産税と真の所有者への求償.台帳課税により真の所有者でない者が固定資産税を負担した場合,真の所有者に対して原則として不当利得返還請求が認められる.

3.最判昭和49年9月2日民集28巻6号1033頁.「学術の研究を目的とする」法人の意義.納税義務の成立・内容はもっぱら法律が定めるのであり,課税庁側と納税者側の合意等で納税義務を動かすことはできない(合法性の原則).

4.最判昭和59年12月7日民集38巻12号1287頁.新築の家屋が固定資産税の課税客体となる時期.

5.最判平成2年1月18日民集44巻1号253頁.固定資産評価審査委員会の口頭審理.

6.最判平成6年12月20日民集48巻8号1676頁.地方税法348条2項但書「有料で借り受けた」の意義.

7.最判平成13年3月28日民集55巻2号611頁.小作地に対する宅地並み課税により固定資産税等の額が増加したことを理由として小作料の増額請求をすることの可否.

8.最判平成15年6月26日民集57巻6号723頁.地方税法上の「適正な時価」と、固定資産評価基準の拘束力・司法審査の枠組み.

9.最判平成17年7月11日民集59巻6号1197頁.固定資産評価審査委員会の決定取消訴訟で,裁判所が「適正な時価」を認定した場合の取消範囲.

10.最判平成22年6月3日民集64巻4号1010頁(名古屋市冷凍倉庫事件).審査の申出及び取消訴訟等の手続を経るまでもなく,登録価格違法を理由として国家賠償請求ができる.

11.最判平成25年7月12日民集67巻6号1255頁(府中市事件).登録価格が「評価基準によって決定される価格」を上回る場合の違法性判断.

12.最判平成26年9月25日民集68巻7号722頁.賦課期日に登記簿に登録されていないが,賦課決定処分時までに賦課期日現在の所有者として登記されている者は納税義務を負う.

13.最判令和2年3月24日民集74巻3号292頁.固定資産税の税額が過大に賦課されたことによる国賠請求の除斥期間の起算点である「不法行為の時」は,賦課決定がされ納税通知書の交付がされた時点である.

14.最判令和7年2月17日裁判所時報1858号1頁,7頁,12頁.三菱UFJ信託銀行事件.複合構造家屋に対する経年減点補正率適用における低層階方式の合理性.

15.最判令和8年1月26日.南御堂事件.山門一体型ホテルの参道部分土地も課税対象.

なお,固定資産税判例に関する研究は数多いが,下級審判決の流れを網羅的にカバーする最近のものとして,髙橋祐介「市町村,また負けたってよ」税研211号16頁(2020),髙橋祐介「近時の裁判例からみた固定資産税の諸問題」租税研究895号92頁(2024)が参考になる.