[昨日ポストした欧州委員会の提案の続き]
1.現行ATADの構造
現行ATADは、CFC所得の取り込み方法について加盟国に選択肢を与えている(7条2項を参照)。
- Model A 利子、ロイヤルティ、配当、株式譲渡益、金融リース、保険・銀行・金融所得、低付加価値の請求会社所得など、特定カテゴリーの非分配受動所得を対象にする
- Model B 税務上の便益を得るために仕組まれた「非真正な取決め」から生じる非分配所得を対象とする(資産・リスク・重要人的機能で識別)。その計算は独立企業原則による(8条2項)
2.Pillar 2との重複計算
Explanatory Memorandum (13-14頁)は、ATAD上のCFCルールとPillar 2の所得合算ルール(IIR)が低課税所得を親会社側またはグループ側で捕捉するという点で重複する、とする。また、Impact Assessment (5.1.2.2)は、(あ)低課税CFC所在地国のQDMTTと株主所在地国のCFC課税による経済的二重課税という問題と、(い)CFC計算・申告とGloBE計算・報告の重複によるコンプライアンス負担という問題、を指摘する。もっとも、Pillar 2とCFC課税の実際の重複については、Pillar 2施行後の実証データがいまだ乏しいのであって、今回の提案は企業側の意見、ATAD評価及び理論的分析に相当程度依拠している点に注意が必要。
3.改正提案
そこで、主に次の4つの改正を提案している。
- Model Aの義務化。Model Aは、特定カテゴリーの受動所得を対象とする比較的機械的な方式であり、欧州委員会はこれを、より効果的で、執行しやすく、法的確実性が高い方式と評価している。これに対し、Model Bは、移転価格税制と大きく重なり、各国の移転価格実務に依存するため不統一を生みやすいと評価。
- Pillar 2対象企業のCFC適用除外。Pillar 2の対象となるMNEグループ又は大規模国内グループに属するEU加盟国の納税者について、原則としてATAD 7条1項から3項のCFCルールを適用しない。なお、改正案7条8項は、5項から7項の定義や適用除外と異なる国内規定を加盟国が維持又は導入することを禁じる(加盟国の上乗せ的な課税を制限)。
- Side-by-Side制度国に親会社がある場合の特則。Side-by-Side制度国(現時点では米国のみ)にUPEが所在する場合、IIR・UTPRが通常どおり働かないため、単に「Pillar 2対象だからCFC除外」とするとATADの濫用防止水準が低下する。そこで、CFC課税の対象から外すにあたり一定の条件を付す。
- SME carve-out。小規模・中規模グループおよび国外恒久的施設を有する単体のmicro/small/medium-sized undertaking (これはEU会計指令の用語)について、CFCルールを適用しない。