23 June 2023

13th Annual IRS/TPC Joint Research Conference on Tax Administration

米国で、税務執行の研究会合(オンラインと対面)→YouTube画像をクリックすると、8時間にわたるセッションの録画画像を視聴できる

報告概要が公開されている。納税サービス、税務調査の影響、納税者行動の理解、国際的脱税、の4部構成。マイクロデータを用いた実証研究の数々

Hat tip:@SoCalTaxProf


20 June 2023

法システムとしての租税法Ⅰ:法制度の中における租税法の機能

 フィナンシャルレビュー152号の特集が、本日公刊された。目次をコピペしておこう。

<特集>法システムとしての租税法Ⅰ:法制度の中における租税法の機能

 

 序文(PDF:605KB)

  1. ローマ数字1.本特集号の目的
  2. ローマ数字2.本特集号の視座と構成
  3. ローマ数字3.今後の展望

中里  実

(東京大学名誉教授)

神山 弘行

(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 法制度の効率性と租税法の役割
―Kaplow & Shavell の“double distortion” テーゼ再訪

本文(PDF:1126KB)

  1. ローマ数字1.本稿の研究課題と意義
  2. ローマ数字2.Kaplow & Shavell(1994)再訪
  3. ローマ数字3.KS1994 を巡る米国法理論史
  4. ローマ数字4.考察のまとめ

藤谷 武史

(東京大学社会科学研究所教授)

 所得再分配を巡る法制度:GAFA 課税問題と才能課税問題との接点に関する試論

本文(PDF:1221KB)

    1. ローマ数字1.序:最適課税論の出発点と前提
    2. ローマ数字2.従来の移転価格税制の考え方は何故GAFA 等にうまく当てはまらないか
    3. ローマ数字3.長期個人視点の租税法学と短期世帯視点の社会保障法学
    4. ローマ数字4.生涯単位の稼得能力
    5. ローマ数字4.まとめ:所得税という名前だから所得稼得者側の属性の単一の指標を突き詰めることが理想とは言い切れないかもしれない

浅妻 章如

(立教大学法学部教授)

 スタートアップ企業によるイノベーションを促進する税制の設計のあり方

本文(PDF:1142KB)

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.イノベーション促進税制の正当化
    3. ローマ数字3.イノベーション促進税制の設計
    4. ローマ数字4.わが国のイノベーション促進税制の評価
    5. ローマ数字5.おわりに

長戸 貴之

(学習院大学法学部教授)

 通商法と租税法の抵触
―デジタルサービス税をめぐる論点を素材として―

本文(PDF:863KB)

    1. ローマ数字1.問題の所在
    2. ローマ数字2.新しい領域における衝突
    3. ローマ数字3.結びに代えて

吉村 政穂

(一橋大学大学院法学研究科教授)

 租税の機能としての景気調整機能

本文(PDF:1106KB)

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.租税法と租税政策における景気調整機能の位置付け
    3. ローマ数字3.現行法の分析
    4. ローマ数字4.おわりに

藤岡 祐治

(一橋大学大学院法学研究科准教授)

 世代間衡平と租税法
―租税・財政・社会保障―

本文(PDF:1212KB)

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.現在世代の将来世代への責任
    3. ローマ数字3.危機対応の財源
    4. ローマ数字4.社会保障法と租税法
    5. ローマ数字5.結びに代えて

神山 弘行

(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 

07 June 2023

新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2023改訂版案

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版案は、2022年閣議決定から1年がたち、「人への投資や設備投資の遅れといった課題に更に加速して取り組む必要性」を踏まえて改訂するもの。税制に関する指摘を多く含む。

たとえば、Ⅲ.人への投資・構造的賃上げと「三位一体の労働市場改革の指針」、(6)成長分野への労働移動の円滑化、の中で、所得税法の退職所得控除について次の記述がある(12頁)。

②退職所得課税制度等の見直し

 退職所得課税については、勤続20年を境に、勤続1年あたりの控除額が40万円から70万円に増額されるところ、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘がある。制度変更に伴う影響に留意しつつ、本税制の見直しを行う。

また、Ⅳ.GX・DX等への投資。そこでは、知的財産の創出に向けた研究開発投資を促すための税制面の検討や、高度外国人材の呼び込み(19頁)に言及するし、暗号資産について次の記載もある(29頁)。

暗号資産に係る税制上の取扱いについて、第三者が短期売買目的以外で暗号資産を継続的に保有する場合を、他の暗号資産の保有と区別して取り扱うことが可能かどうか、法令上・会計上の在り方を踏まえて、速やかに検討する。

さらに、 Ⅴ.企業の参入・退出の円滑化とスタートアップ育成5か年計画の推進、(4)スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築。ここでは、ストックオプションの環境整備についてかなり具体的な記載がある。やや長くなるが、引用しておこう(36-38頁)。

(ⅰ)ストックオプションプールの日本での実現に向けた会社法制上の措置(略)

(ⅱ)税制適格ストックオプションの制度見直し
 ディープテック系を中心に、事業化まで時間を要するスタートアップや、事業拡大のために未上場期間を長くとりたいスタートアップが、IPOのタイミングを柔軟に選べるようにすることが重要である。スタートアップの従業員報酬としてグローバルに活用されているストックオプションについて、スタートアップの事業の成長速度に応じて権利行使(上場)のタイミングを柔軟化でき、また簡便な手続で応用できるようにするため、令和5年度税制改正において、創業5年までにストックオプションを付与する場合、権利行使期間を10年から15年に延長した。
 また、スタートアップの手続の簡素化の観点から、株券の保管委託義務を不要化することとしたところであるが、そもそも、税制適格ストックオプションの株式保管委託要件がM&A等の場面において制約になっている。これに対し、非公開会社では会社法の制約によって株式に譲渡制限が付されていること、また、発行会社及びストックオプション付与対象者によって税務処理が行われていることに着目し、非公開会社における税制適格ストックオプションの株式保管委託要件の撤廃を検討する。
 社外高度人材への税制適格ストックオプション付与のためには、一定の要件を満たすスタートアップに限定され、かつ中小企業等経営強化法による計画認定が必要となるが、この認定制度について調査を行った上で、認定に伴う手続負担なしで税制適格ストックオプションの付与を可能とするよう検討を行う。
 スタートアップの人材獲得力向上の観点から、税制適格ストックオプションの上限額の大幅引き上げ又は撤廃を検討する。
 これらを含めて、スタートアップフレンドリーな制度となるよう税制適格ストックオプションの手続の簡素化や要件の更なる見直しを含めて利便性向上を図る。
(ⅲ)未上場会社の株価算定ルールの策定
 税制適格ストックオプションの権利行使価額は、当該ストックオプションに係る契約の締結時の株価を上回ることが要件となっている。未上場会社であるスタートアップが税制適格ストックオプションを導入する場合の当該株価の算定について、売買実例等により算定した価額に加え、財産評価基本通達の純資産価額方式(会社の総資産の価額から負債等の額を差し引いて評価額を定めるという、小規模会社向けの簡便な算定方法)による算定を認めることとする。また、会社が種類株式を発行している場合には、その内容を勘案しつつ、純資産価額方式によって算定された価額となることを明確化する。この点について、速やかに通達等を整備する。
 あわせて、種類株について、どのような場合に種類株主総会の特別決議を要する場合に該当するか明確でないといった指摘がある。そこで、実際のニーズを踏まえながら、要件の明確化を含めて必要な検討を行う。
ほかにも、個人からベンチャーキャピタルへの投資促進(44頁)、海外進出を促すための出国税等に関する税制上の措置(46頁)、海外の投資家やベンチャーキャピタルを呼び込むための環境整備(47頁)、オープンイノベーションを促すための税制措置等(48頁)、組織再編の更なる加速に向けた検討(49頁)など。Ⅶ.資産所得倍増プランと分厚い中間層の形成では、NISAとiDeCoについて具体的に言及(55-56頁)。

03 June 2023

安部慶彦・詳解合同会社の法務と税務

ゼミ卒業生の安部さんから、単著を公刊したとのうれしいお知らせをいただいた。合同会社について、「より広く、より深く実務に浸透する一助」(4頁)となることを目指して書かれた力作。合同会社の歴史から説き起こし、設立、社員・持分、社員の加入・退社、業務執行・機関、計算、組織再編・組織変更、解散・清算等を包括的に論じ、終章では株式会社と比較して合同会社を選択することのメリットとデメリットを利用目的ごとに検討している。

必ずしも通読を想定していない書物とのことだが、一読すると、いいところがたくさんあった。たとえば・・・

  • 先行文献が多くない合同会社に関する貴重な書物
  • 法務と税務の双方に目配り
  • 課税リスクを慎重に指摘
    • 持分の時価純資産法による評価の設例(82頁)など工夫をこらしており、そこから財産評価通達194の課題を指摘するところ(87頁)などは、慎重な筆致ながら「なるほど」と思わせる
    • 社員間で経済的価値が移転する場合の課税リスクという共通のテーマが、追加出資や持分譲渡、社員の加入と退社、出資の払戻し、残余財産の分配といった具体的な局面について論じられている
    • 業務執行者の報酬について、法人が業務執行社員となることができることに着目した分析(157頁)、グループ会社の場合に言及する箇所(159頁)なども、はっとするところ

今後、版を重ねていくことを期待したい。気の早いことであるが、そのときのために2点を指摘。

  • 必ずしも税務に明るくない法務専門家にとってヨリ優しい記述を たとえば「税務上のパススルー性」(15頁)は、知っている人には自明のことではあろうが、前提知識の確認という意味でも、はじめて登場する箇所で一言説明するなど。また、みなし配当に関する計算式は、そもそもどうしてそういう計算をするのかをちらっと補足しておくとよさそう(手前みそだが私の授業でも説明に苦労する)
  • 争いが生じて問題になる事例の蓄積を 設立登記からはじまって、解散・清算に至るまで、いわば法の生理現象面の叙述がかなり堅実になされている→今後さらに知りたいのは、法の病理現象とでもいおうか、「ここが困ったのでこういうことになってしまった」という個別具体的な実態だ→もっとも日本の裁判例・裁決例ではまだ素材が少ないであろう→国際的側面でミスマッチが生ずるような場合などはありそうな気もする