ある優秀な学生の方から、所得税法39条の適用範囲について質問をいただいた。質問というか、鋭いご指摘である。私なりに定式化すると、問題はこうである。
Aさんが八百屋を営む事業所得者であり、店で売っていた大根を自分で食べた。このとき、たな卸資産を「家事のために消費した」として、39条の適用があるのはわかる。じゃあ、大根を食べたのがBさんだったらどうか。
うーん。これはおそらく、「家事のために消費した」という規定の解釈適用の問題ではないか。ここで、主語は「居住者が」となっており、この例ではあくまでAである。
したがって、BがAの子どもであって、Aと生計を一にしているような場合には、Aが「家事のために消費した」といえるように思われる。やや遠い材料であるが、消費税法基本通達5-3-1も、「家事のために消費し(消費税法4条4項1号)」の解釈として、「個人事業者又は当該個人事業者と生計を一にする親族の用に消費し・・・た場合をいう」としている。
これに対し、BがAとは無関係の第三者である場合、Aが「家事のために消費した」というのは難しい。もっとも、たとえばBがAの友人であって、AがBに大根を贈与したといえるような場合には、所得税法40条1項の適用により、やはり総収入金額算入になるであろう。その場合、39条を適用した場合と結論は変わらないことになる。沿革的にも、昭和40年全部改正前、39条と40条はひとつの条文として規定されていた。
なお、この例からふつふつと実感されるのは、39条が役務の提供をカバーしていないという歴然たる事実である。散髪屋さんが自分の子どもの髪を切っても、39条の「たな卸資産を家事のために消費した場合」には当たらないのである。
いちおうこう考えてみたが、質問をくださった方は、どう考えられるであろうか。今度機会があれば、うかがってみたい。
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