- 租税回避対策の指令は次の6項目に係る条文を含む。
- 利子費用控除
- 出国税
- 国外所得免除から外国税額控除へのswitch-over clause
- GAAR
- CFCルール
- ハイブリッド・ミスマッチ対策
- 租税条約の勧告は大変短く,BEPS行動6のPPTや行動7のPE認定を取り込むもの。
- 行政共助指令の改正は,国別報告書の自動的情報交換に関する新条文を挿入。
- 域外戦略に関するコミュニケーションは,EU域外諸国の税制をgood governance criteriaによって審査。イメージとしては,域内各国についてここでやっているようなもの。
- スタッフのワーキング文書もある。
最近の租税事件を含めて,そのおりおりに思ったことの断片をつづります。 Candid and biased, and hopefully stimulating, comments on recent tax developments in Japan (and other matters).
30 January 2016
欧州委員会の租税回避対策パッケージ
2016年1月28日,欧州委員会がAnti Tax Avoidance Packageを出した。ブリュッセル官僚のイチオシは依然としてCCCTBであるが,まずはG20/OECDのBEPS2015年成果物を受けてEUでなすべきと考えることをパッケージとして示した。概要はここからみることができ,全体を概観できる文書がこれ。
I teach Tax Law at UTokyo.
最判平成27・7・17(固定資産税,納税義務者の特定困難)
堺市西区日置荘(ひきしょう)あたりは池が多い。都市化が進んでこれらが埋め立てられ,登記簿では所有者が「大字西」などと記載されていた。西区だけでなく,南区・東区・北区でも同じように,所有者の帰属を確定することが難しい土地が複数あった。「原審の確定した事実関係等の概要」によると,これらの土地は,
控訴審大阪高判平成26年2月6日判例地方自治400号71頁は,一部取消。結論に至る判断の過程で,関係自治会等が納税義務者だとした。すなわち,登記簿の表題部の所有者欄に記載されている「大字西」等の名義によって表章される旧来の地縁団体は消滅しているものと同視し,地方税法343条2項後段を類推適用して,関係自治会等が同項後段にいう「現に所有している者」としてその土地の固定資産税の納税義務者に当たるとみるべきである,とした。
最高裁第2小法廷は原審のこの判断を是認できないとした。「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではない」という一般論が固定資産税の納税義務者の確定についても同様にあてはまると述べたうえで,次のように判示。
単なる「執行の不足」というストーリーにおしこめてしまうのは惜しい事実関係。事実関係の概要に出てくる「総有」という性格付けからして不思議にあやしい。そもそも全国津々浦々の土地がもれなく課税権の対象になるのか。課税権からの「飛び地」というか一種の「すきま」は存在しうるのか。近代国家成立以前の「誰のものでもないけど,でもまあみんなの土地」という構成の現代における位置付けが問われるはず。
地区の住民の総有に係る財産として,その異動状況の把握のために堺市が作成する財産台帳に登録されている(中略)。そして・・財産台帳に登録されている財産・・・の管理及び処分については,堺市の定める要綱等において,その決定につき当該地区の住民により組織されている自治会又は町会の総会の決議によることが基本とされている。という状態だった。そして,納税義務者を特定できないとして,固定資産税の賦課徴収が行われていなかった。これに対し,固定資産税の賦課徴収を堺市長が違法に怠ったとして,住民訴訟が提起された。第1審大阪平成25年4月26日判例地方自治400号44頁は一部却下,一部棄却,一部認容。
控訴審大阪高判平成26年2月6日判例地方自治400号71頁は,一部取消。結論に至る判断の過程で,関係自治会等が納税義務者だとした。すなわち,登記簿の表題部の所有者欄に記載されている「大字西」等の名義によって表章される旧来の地縁団体は消滅しているものと同視し,地方税法343条2項後段を類推適用して,関係自治会等が同項後段にいう「現に所有している者」としてその土地の固定資産税の納税義務者に当たるとみるべきである,とした。
最高裁第2小法廷は原審のこの判断を是認できないとした。「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではない」という一般論が固定資産税の納税義務者の確定についても同様にあてはまると述べたうえで,次のように判示。
原審は,本件各土地につき,本件固定資産税等の賦課期日におけるその所有権の帰属を確定することなく、前記2(2)イの要綱等における取扱い等に照らして関係自治会等をその実質的な所有者と評価することができるなどとして,地方税法343条2項後段の規定を類推適用することにより,関係自治会等が本件固定資産税等の納税義務者に該当する旨の判断をしたものであり,このような原審の判断には,同項後段の解釈適用を誤った違法があるというのである。結論は破棄差戻しであり,
本件各土地につき原審において判断されていない地方税法343条4項の適用の有無等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととされた。
単なる「執行の不足」というストーリーにおしこめてしまうのは惜しい事実関係。事実関係の概要に出てくる「総有」という性格付けからして不思議にあやしい。そもそも全国津々浦々の土地がもれなく課税権の対象になるのか。課税権からの「飛び地」というか一種の「すきま」は存在しうるのか。近代国家成立以前の「誰のものでもないけど,でもまあみんなの土地」という構成の現代における位置付けが問われるはず。
I teach Tax Law at UTokyo.
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