02 July 2016

岡山地判平成26・7・16訟務月報61・3・702(外国子会社合算税制の適用除外を受けるためには確定申告書に書面添付を要する)

岡山に本店のあるゴム・合成樹脂の成型・加工・販売業の会社Xが、香港に子会社Aを置いて、広東の会社Bとの間で来料加工。

国税不服審判所平成24年1月25日裁決は、詳しく事実認定を行い、Aの主たる事業は製造業であり、その事業を主として本店所在地国等で行っていたといえないとして、外国子会社合算税制の適用除外にあたらないとした。X出訴。

岡山地裁の判決は、今度は、確定申告書に租税特別措置法66条の6第6項の書面添付がないという理由で、適用除外を認めなかった。

平成19年改正前の同6項は、次のように規定していた。
第一項各号に掲げる内国法人が第三項又は第四項の規定の適用を受ける場合は,当該内国法人は,確定申告書にこれらの規定の適用がある旨を記載した書面を添付し,かつ,その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存しなければならない。
判決は、この規定を次のように解釈した(番号、下線、色付けはすべて引用者による)。
措置法66条の6第6項は,ある特定外国子会社等が適用除外要件を満たすかどうかを判断するに際し,その事業内容,事業に係る取引相手などを適正に審査することが必要になることを受け,同条1項各号に掲げる内国法人に確定申告書への適用除外記載書面の添付等を義務付けることによって,①当該内国法人に適用除外規定の適用を受ける旨の意思を明らかにさせ,②課税庁が適用除外要件該当性の判断の根拠となる資料を当該内国法人から早期かつ確実に収集し,適用除外要件について適正かつ迅速に判断することを可能にするために設けられたものと解されるところ,③その規定文言及び④適用除外要件の判断における上記内国法人からの資料収集等の必要性,重要性に鑑みれば,同条6項は,適用除外規定の適用要件を定めたものと解するのが相当であり,その趣旨は,平成19年改正前の規定文言の下でも既に明らかであったが,同改正によって,より明確なものになったというべきである。
つまり、

  • 6項の趣旨 ①納税者に意思を明らかにさせる、②課税庁が早期確実の資料収集と適正かつ迅速な判断できるようにする
  • 理由 ③規定文言、④上記・・・資料収集等の必要性・重要性
  • 結論 6項は適用除外要件の適用要件だ
ということ。ここで、③は、既定の文言をじっとにらんで、「これは適用要件だ」という頭で読めば、そう読める。でも、そういう頭で読まなければ、それほど一義的なことではない。なにしろ、「適用を受ける場合は」、書面を添付しなければならないとしか書いてないからである。だから、③規定文言がこうなっていますよ、というだけでは、理由としてはちと弱い。

そういうわけで、④上記・・・資料収集等の必要性・重要性、というところがポイントだろう。ここで「上記」というのは、②のことをいいかえている、と読める。つまり、②の早期確実、適正迅速というところが効いていて、あとから書面を出してもだめであって、確定申告書に添付しなければ間に合わないよ、といっているのだろう。

これを要するに、平成19年改正の文言が次のように書いてあることを、必ずしもそう明確には書いていない文言の下で、規定の趣旨を補って解釈で導き出した、ということのように思われる。
第三項又は第四項の規定は,確定申告書にこれらの規定の適用がある旨を記載した書面を添付し,かつ,その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り,適用する。
この判決はそのまま確定したようである。もし国税不服審判所の裁決で実体的な適用除外要件について審理していなかったならば、納税者は判決のこの理由だけで控訴を断念しただろうか。

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