03 January 2018

2003年4月からのメッセージ

2003年(平成15年)4月1日,税制調査会基礎問題小委員会で,金子宏教授が意見を陳述し,そのうち所得税の各種控除に関する部分が,ジュリスト1260号(2004年)に掲載された。のちに金子宏『租税法理論の形成と解明 上巻』570頁に所収。

意見の骨子は,少子高齢化社会における所得税制の構造改革として,
  • 公的年金等控除の廃止
  • 給与所得控除の性格を明確化して具体的には3分の1を縮減
  • これらによって生まれる財源で基礎控除・配偶者控除・扶養控除を引き上げる
というものだった。

それから約15年たって,2017年(平成29年)12月22日に閣議決定された平成30年度税制改正の大綱は,

○ 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替
・給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律 10 万円引き下げ、基礎控除の
控除額を一律 10 万円引き上げる。
○ 給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の見直し
・給与所得控除について、給与収入が 850 万円を超える場合の控除額を 195 万円に
引き下げる。ただし、子育てや介護に配慮する観点から、23 歳未満の扶養親族や特
別障害者である扶養親族等を有する者等に負担増が生じないよう措置を講ずる。
・公的年金等控除について、公的年金等収入が 1,000 万円を超える場合の控除額に
195.5 万円の上限を設ける。公的年金等以外の所得金額が 1,000 万円超の場合は、
控除額を引き下げる。
・基礎控除について、合計所得金額 2,400 万円超で控除額が逓減を開始し、2,500
万円超で消失する仕組みとする。

こととした。見直しの規模こそはるかに穏健であるが,給与所得控除と公的年金等控除を減らして基礎控除を増やす,という方向において2003年4月の意見を引き継ぐ。

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