日本税務研究センターの金子宏教授共同研究会の成果として、日税研論集80号(所得税改革の国際的動向)が発刊された。
その一部として、私の論文「英国所得税改革の動向」を掲載していただいた。この論文では、労働所得課税の改革論を紹介し,所得税とNIC (国民保険料)との調整が熱心に論じられていること,その中で人的役務会社を介した雇用スキームが問題とされてきたこと,給付つき税額控除が制度的に定着してきていることをみた。さらに,視点を変えて,キャピタルゲイン税の改革論として,税制簡素化庁(OTS)が報告書を公表し,制度設計上の問題から実務的な論点までを広範に論じていることを紹介した。日本とは一味違う英国所得税の「肌触り」といったようなものをお伝えすることができていれば幸である。
ちなみに、以前のこの書評が英国の「長い19世紀」における所得税の定着を対象にしていたのに対し、今回の論文は21世紀に入ってからの動きをたどるもの。