国際租税協会IFAのCahiers106巻が届いた。2022年9月のベルリン大会で議論する予定。対面での大会開催がコロナ渦で延期されていただけに、無事に刊行されてよかった。例年どおり二つの議題。
A「国内・国際租税法におけるgroup approachとseparate entity approach」は、ドイツのHey and SchnitgerがGeneral Reportを書いた。ここで「separate entity approach(以下SEAと略す。)」は、各法人をひとつの独立の納税義務者として扱うことを指す(20頁)。日本語でいうと、独立法人アプローチとか、単体法人アプローチとかいったような感じか。これに対し、「group approach」は、SEAからのすべての逸脱を意味するから、とても広いコンセプト。
今回のGeneral Reportの問いは、税制がSEAから離れていっているのか(20頁)、である。答えは、SEAが依然として所得課税の世界で優勢であり、group approachは不都合な結果を避けるために必要がある場合に用いられる(51-52頁、56頁)、というもの。かなり広範な課税ルールを検討対象とし、法人所得税において法人を納税義務者にすることの意味が、さまざまな素材をもとに、これでもかこれでもか、といった感じで検討される。EU Reportと、39か国のBranch Reportを基礎にしている。日本支部のbranch reporterは鈴木悠哉会員。
- 何らかの形でグループ法人間で損益通算を許容する制度(日本の現行法ではグループ通算制度)をとる国は、2004年の当時に比べて若干入れ替わったが、それほど増えていない。国境を越えた損益通算を認める例は依然としてEU加盟国に集中。
- BEPSプロジェクトの各種合意(グループ内支払やhybrid mismatch、CbCRなど)や、EUのATADやCCCTB、さらにはデジタル課税の柱1と柱2などに視野を広げている。
- 個別法人単位の規律からさまざまなタックス・プランニングの余地が生まれることを意識している。これは、南繁樹弁護士が「租税属性獲得ツールとしての『法人』」(租税研究856号152頁(2021))と呼んでいたこととつながる。
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