今夏は東京も猛暑で大変だったが、サリー教授の回顧録を読めたのが夏休みの収穫だった。この本だ。A Half-Century with the Internal Revenue Code: The Memoirs of Stanley S. Surrey, Edited by: Lawrence Zelenak, Ajay Mehrotra, Carolina University Press, 2022
1945年夏に海兵として東京に来た時には軍の階級が低くて帝国ホテルに入れなかったが、その後、1949年にシャウプ勧告のメンバーとして東京に滞在したときには帝国ホテルに宿泊したという。1972年10月に東京大学で講演したことも出てくる(この時の様子は日本側では租税法学会の学会誌創刊号である租税法研究第1号に記録されている)。1978年に訪日したときに金子宏教授が視察旅行に同行されたことも、書かれている。
1969年からIFA(国際租税協会)のPSC(常設学術委員会)のメンバーとして議論の活性化に尽力したことや、国連モデル租税条約の起草をリードしたこと、あるいは、ハーバード大学にITP(国際租税プログラム)を創ったことなど、なつかしくもありなじみ深くもあるエピソードが、本人の手で活写される。
何よりも印象的だったのが、1930年代のリアリズム法学全盛期のコロンビア大学で学んだのち、government lawyerとして続々と成果をもたらしていくダイナミックな仕事ぶりである。ALI(アメリカ法律協会)のプロジェクトを次々と主導して、制定法の改善に取り組み、それが1954年法典の基礎になっていく。こういった初期の活躍ぶりをはじめとして、まさに「内国歳入法典との半世紀」という題名にふさわしい内容。歯に衣着せぬ率直な文章で、同時代の人物評や政策評価のひとつひとつが味わい深い。しかもそれに、編者による丁寧な注釈がついていて、背景理解を助けてくれる。
サリー教授は1984年に逝去され、残された原稿がOldman教授の研究室からHalperin教授の研究室を経て、今回の出版に至ったようである。2022年の今、これを読むことができて本当によかったと思う。全体は大部な書物だが、編者による導入の章はここで読める。また、この回顧録を用いた租税支出に関する論文も出ている。