国家学会は隔月に国家学会雑誌を出している。縦書きの雑誌なので、右向きに頁をめくると、通常はまず、「論説」からはじまる。ところが最近発刊された135巻9=10号はそうではなく、いきなり「学界展望」からはじまっている(809頁以下)。あれ?と思ってよく見ると、「論説」はその2本のいずれもが横書きのため、最終頁(914頁)から逆向きに掲載されていた。縦書きと横書きの混在ゆえに起こった現象といえよう。
この学界展望〈財政法〉で紹介されている3冊は次のとおり、おおいに興味をそそるラインアップだ。
- 渕圭吾教授が、Bateman, Public Finance and Parliamentary Constitutionalismを紹介。憲法上、財政に対して主たる権限を持っているのは執行府であって議会ではない、と主張する書物。財政と議会制民主主義の関係に関する従来の支配的見解を根本から批判するものと位置づける。
- 田尾亮介准教授が、Tuominen, The Euro Crisis and Constitutional Pluralism: Fiscal Stability but Constitutional Inequalityを紹介。ユーロ危機と、ヨーロッパの学説において広く通用している憲法多元主義の関係を論ずる書物。残された課題を積極的に明示。
- 藤岡祐治准教授が、Listokin, Law and Macroeconomics: Legal Remedies to Recessionsを紹介。財政政策、金融政策及び法の境界があいまいになっている現状において、法とマクロ経済政策を結びつけ、拡張的法政策を示した書物。大不況のような非常時を想定したものと評価。
書評文化の成立は学問の成熟をあらわす。学問領域としての財政法の豊かさを感じさせる。
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