不正軽油で,軽油引取税の脱税や,硫酸ピッチの不法投棄などが起こる。まさにそういう事案。仕入れた重油と灯油を石油精製工場に持ち込み,工場を設置する会社に委託してこれらを軽油にし,販売先に譲渡する取引を行っていた業者が,「軽油の製造」を行った可能性があるとして,最高裁は事件を破棄,原審に差し戻した。
原審が所有権の原始取得の有無を判断基準にしていたのに対し,最高裁は諸要素の総合的勘案により実質的に果たしていた役割をみよと判示。軽油引取税は道府県税だから,県ごとに総合判断の結果が分かれると,同一の取引に対して複数の県が課税する可能性がある。課税の競合である。地方税法144条の40は,道府県は相互に協力しなければならないと定めるが,これは,解釈適用の足並みをそろえるところまでいくのだろうか。
もっとも,県が摘発できなかったからこそ,不正軽油が社会問題になった(「執行の不足」)。とすれば,制度設計の上でより大きな問題は,課税の空白かもしれない。