事案は、次のようなものである。
被告人は,毎週土日に開催される中央競馬の全ての競馬場のほとんどのレースについて,数年以上にわたって大量かつ網羅的に,一日当たり数百万円から数千万円,一年当たり10億円前後の馬券を購入し続けていた。被告人は,このような購入の態様をとることにより,当たり馬券の発生に関する偶発的要素を可能な限り減殺しようとするとともに,購入した個々の馬券を的中させて払戻金を得ようとするのではなく,長期的に見て,当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の合計額との差額を利益とすることを意図し,実際に本件の公訴事実とされた平成19年から平成21年までの3年間は,平成19年に約1億円,平成20年に約2600万円,平成21年に約1300万円の利益を上げていた。第三小法廷は、所得税法34条1項にいう「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」にあたるかどうかの判断基準として、
と判示した。 これを本件の事案にあてはめて、上告棄却とした。営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。
大谷裁判官の意見があり、ふたつの意味で興味深い。
- 「外れ馬券の購入代金を必要経費として控除できるとした原判決には法令違反がある」といいながら、「本件事案の特殊性に鑑み、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまではいえない」として、法廷意見と結論を同じくしている。この意見によると、本判決は「事案の特殊性」による救済判決という位置づけになりそうである。
- 立法論として、「課税対象を明確にして妥当な税率を課すなどの特例措置を設けることも必要と思われる」と指摘している。きちんと立法論をするためには、課税のみならず、公営ギャンブルの収支に関する財政法的な考察が必要であろう。馬券配当の非課税化を訴える業界の声があることにも、注意が必要である。
判決当日に広く報道されており、これから多くの評釈が出てくるだろう。
【2015年3月12日追記】
国税庁が「最高裁判所判決(馬券の払戻金に係る課税)の概要等について」で、所得税基本通達34-1を改正する予定であるとアナウンス。
【2015年3月12日追記】
国税庁が「最高裁判所判決(馬券の払戻金に係る課税)の概要等について」で、所得税基本通達34-1を改正する予定であるとアナウンス。