本件の当時、非永住者の定義は、
とされていた(所得税法2条1項4号、下線は引用者による)。東京地裁は、本人の滞在日数や、家族の居住状況、米国永住権の取得、父の墓の米国への移築など、本件にあらわれた事実を総合考慮して、納税者が日本国内に永住する意思を有していなかったと認定した。居住者のうち,国内に永住する意思がなく,かつ,現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人をいう。
平成18年度税制改正で、非永住者の定義は次のように変わり、永住意思が要件でなくなった。
居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去十年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう。したがって、現在では、上の争点は問題にならない。また、本件の納税者は日本国籍を有していたから、現在のルールでは、非永住者にあたる余地がない。こうして、本判決の意義に現在における意義としては、「もっぱら内心の意思が問題となる場合において、それを多数の外形的事実から推認することによって認定するという一般的な判定手法を示した事例」 (宮崎裕子・判批・税研178号175頁、177頁)ということになろう。
なお、本判決は、他の争点についても判示している。たとえば、住所認定の手法として、従来の判例を踏襲している。また、オルゴールの譲渡から生ずる所得が「国内にある資産の譲渡により生ずる所得」として国内源泉所得にあたるか、といった点も争われ、国の立証が足りないとしてこれにあたらないしている。判決へのリンク。