03 March 2023

1936年の論説「税制改革と新聞への特典」

東洋経済新報昭和11年10月24日号13-14頁は、「税制改革と新聞への特典ー文化的使命の再検討ー」と題する論説で、当時の馬場財政における税制改革案について、以下のように論じた(旧字を改めた)。

まず、次の点が問題とされる。

  • 法人の営業収益税を3.4%から4.4%に引き上げるが、従来通り新聞社には課さない
  • 新設する事業税についても、新聞社を除外
  • 郵便料値上げにあたり、第三郵便のうち日刊の新聞紙の発行人又は売りさばき人より差し出す場合に限り、5厘に据え置く、しかも重量限度を拡張
何故に以上の如き特典を新聞に与えるか。政府の説明は、「新聞紙の持つ文化的使命に鑑み」というもの。
これに対し、次のように論じて、「今回の税制改革に当たって・・・従来新聞に与えている特典についてすらも再検討すべき筈であった」と主張。
  • 今や新聞社は立派に企業化されて、その少なからざるものがいかなる会社よりも利潤を得ている。「新聞社に利益をあげえないものがあるのは、他の会社においても同じく経営困難なものがあるのと同じ」。事業そのものとしてはいかなる観点からするも、課税の対象となりうる。
  • もし文化的使命をいうならば、「この相互的依存関係の社会にあって何ものが文化的使命を有さないであろうか。社会は新聞を無代で配達を受けているのではない。それは企業として当然なる利潤を織り込んで価格付けているのである。」
さらに筆を進め、文化的使命をいうなら雑誌のほうが一層文化的というべきだが、特典を雑誌社に及ぼすことを主張しているのではない、と断る。そのうえで、馬場蔵相と頼母木逓相が「新聞という強力なる機関の歓心と人気を買う目的」で新聞への特典を与えたと言ったら、両相はこれに対して果たして何と答えられるであろうか、と痛撃している。