諸富・宮本・篠田編著『デジタル時代の税制改革』は、「100年ぶりの国際課税改革の分析」という副題のとおり、2つの柱を中心として近年の改革の意義と限界を論ずる論文集。
財政学者と租税法学者の共同研究の成果。序章と第8章が全体像、第1章から第3章が2つの柱に関する検討、第4章と第5章が米国との関係、第6章がEUとの関係、第7章がGloBE情報申告書。一読して、次の点がとくに印象に残る。
- Pillar One多国間条約が発効しなくても新ルールが今後つねに参照されることになるという認識
- GloBEが課税ベースに会計の数値を利用するものであるため会計基準ショッピングや会計基準間の競争が生ずること
- 2017年米国GILTI創設が国際交渉におけるフォーカルポイントを作り出して合意を成立しやすくしたこと
- ドイツのGloBE受容がCFC税制の相当の改変を伴っていること
- GloBE情報申告書をCbCRとの比較でみていくという視点
- 途上国の視点
以下に目次をコピペしておこう。
序 章 新しい国際課税ルールの内容,その意義,直面する課題,そして税収効果(諸富 徹)
第1章 経済のデジタル化と「市場国」への課税権配分を巡る論理の変遷(篠田 剛)
第2章 利益Aに係るデジタル課税の意義と課題──移転価格税制の経験を踏まえて(江波戸順史)
第3章 グローバル・ミニマム課税における所得合算ルール(IIR)──税法と会計の関係(中嶋美樹子)
第4章 TCJA2017におけるアメリカ法人税の国際課税方式の変更に関する議論とその影響(吉弘憲介)
第5章 グローバルタックスガバナンスへのアメリカのパワーの影響──「BEPS2.0」第2の柱を素材として(松田有加)
第6章 EUにおけるGloBEルールの受容──ドイツでの国内法制化を中心に(辻 美枝)
第7章 BEPS2.0第2の柱におけるGloBE情報申告書の意義と手続保障(金山知明)
第8章 経済のデジタル化に伴う国際課税の動向と課題(宮本十至子)