最近の租税事件を含めて,そのおりおりに思ったことの断片をつづります。 Candid and biased, and hopefully stimulating, comments on recent tax developments in Japan (and other matters).
28 October 2010
17 October 2010
最判平成22・3・2民集64・2・420(ホステス報酬の源泉徴収)
パブクラブを経営する者がホステスに報酬を支払う場合,その支払い金額から「政令で定める金額」を控除した残額に10%の税率を乗じて計算した金額が源泉所得税の額となる(所法204条1項,205条2号)。ここにいう「政令で定める金額」は,「同一人に対し1回に支払われる金額」につき,「5000円に当該支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額」である(所令322条)。
最高裁は,「ホステス報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合においては,施行令322条にいう『当該支払金額の計算期間の日数』は,ホステスの実際の稼働日数ではなく,当該期間に含まれるすべての日数を指す」と判示した。その理由は,「当該支払金額の計算期間の日数」が,当該支払期間の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った概念であると解するのが自然である,というところにあった。
このような問題については,機敏に立法的対処を行うべきことがらではないか。もし立法政策の問題として稼働日数を基準にするのが適切であるというのなら,法令にそう書き込めばよい。そして,そのような立法政策をとるべきか否かこそが,真剣に議論すべき点であろう。一般的に,雇用関係が流動化・多様化し,精密な源泉徴収に依存できない場面が増えている。現行ルールでは,一方で,計算期間の日数に応じて一日あたり5000円ずつの控除といったこまかい計算をする事務的な手間が,源泉徴収義務者に生じている。他方で,ラフな源泉徴収で足りるとすれば,報酬受領者個人の申告に精算をゆだねる部分が増え,納税協力コストが増大する(見方を変えれば申告漏れの可能性もある)。このあたりを勘案して,制度を改善していくことが,本筋である。
I teach Tax Law at UTokyo.
01 October 2010
東京地判平成21年9月17日(株式評価・連結加入時の法人税額控除)
次の場合の株式評価をどうするか。7月21日に一株あたり30万円で第三者割当を行い,10月末に上場承認,11月にブックビルディングしていたときに75~100万円,12月の上場初値が240万円だった。東京地裁は,総合判断により,結論として100万円でいいとした。
興味深いのは,裁判所「判例検索システム」の「裁判要旨」が,株式評価にあたって法人税額控除を与えなくてよいとした部分に,裁判例としての意義を認めているように読める点である。連結に加入する時点で,これまでの単体の生活をいわば身ぎれいにして清算し,フレッシュ・スタートをとらせる,という税制との整合性はとれているのであろうか。
I teach Tax Law at UTokyo.
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