19 February 2011

最判平成22・10・15民集64・7・1764(所得税還付請求権の相続財産性,上野事件)

Aが生前に所得税更正処分について訴訟を提起していたところ,Aが死亡し,Xが訴訟を承継した。その後,処分の取消判決が確定し,所得税の過納金がXに還付された。Xは,これは相続財産を構成せず,Xの一時所得になるとして申告した。これに対し,税務署長は,相続財産にあたるとして,相続税の更正処分をした。

最高裁は,相続財産にあたると判断した。そうなると,同じ事案が将来に生じた場合,係争中の訴訟にかかる還付金を,いくらで評価すべきかが問題になる。この点,財産評価通達210は,「係争中の権利の価額は,課税時期の現況により係争関係の真相を調査し,訴訟進行の状況をも参酌して原告と被告との主張を公平に判断して適正に評価する」としている。筋のとおった取扱いではあるが,相続税の申告のアドバイスをする場合,判断に苦しむことが多いのではないか。割り切ってたとえば係争価額の5割評価を認めておき,裁判の確定後に調整する,といった解決ができればよいのだが。

[以下,2011年5月17日追記]
*係争関係の真相調査により適正に評価した金額が10で,10が相続財産のとして申告是認されたとする。そのあとで,訴訟が終結し,50の還付金が戻ってきたとしよう。差額の40だけ,さらに相続税が増額更正されることになるのだろうか。40があらためて相続人の一時所得か雑所得になるという解釈論は,判決のロジックとはあまりしっくりこないようだが,保険年金二重課税事件判決との関係も問題。
*宝くじを相続したあとで,1億円があたったら,その1億円は相続財産にならないだろう。これに対し,賃料増額請求や契約解除のような場合には,すでに相続財産があったということになるのだろうか。


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