都市計画法上の強制的買取という形をとることで,5000万円の特別控除を利用して申告した事案。最高裁は高裁判決をくつがえし,特別控除を認めなかった。その理由は,土地所有者が具体的に建築物を建築する意思を欠き,都道府県知事等による当該土地の買取りが外形的に都市計画法56条1項の規定による買取りの形式を採ってされたにすぎない場合には,租特法33条1項3号の3所定の「都市計画法第56条第1項の規定に基づいて買い取られ,対価を取得する場合」に当たらないというもの。
この事案は,いくつかの興味深い問題を含んでいる。巨視的な視点からみると,土地買収にかかる公共支出と,譲渡所得税における租税優遇措置を,統合的に観察すべき事案かもしれない。用地買収の資金が足りない場合に,土地所有者に譲渡所得税がかからないルートを選ぶことで,その分,名古屋市としては買収資金を低めにおさえることが可能になる。租税上の利益(tax benefit)が,土地所有者から名古屋市に移転していることになる。最高裁はそのような移転自体をいけないといったのではなく,するつもりもない建築許可申請を出させて,「うそ」をいわせて租税優遇措置を利用することを否定したのではないか。
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