19 July 2012

OECDモデル租税条約の情報交換条項とその注釈が改訂された


ここからダウンロードできる。
  • 26条2項本文の改訂により,法執行機関間の租税情報交換を促進した。
  • 26条の解釈として,要請が情報漁り(fishing expedition)でない限り,個人名を特定せずに納税者グループの情報提供を要請することができるとした(いわゆるgroup requestの許容)。6月に日本国が米国との間でFATCA枠組み(Model II)に合意したが,そこでもgroup requestの手法が用いられていた。
国際的な租税情報交換の環境が,変わってきている。

06 July 2012

東京地判平成22・6・24 FX(外国為替証拠金)取引の課税

個人居住者が,証拠金を預託して外国為替の売買を行い(店頭FX取引),帳尻金が生じた。帳尻金は,売買差損益金から手数料等を控除した残額と,スワップ金利差調整額との合計額である。裁判所は,これを雑所得に区分し,課税のタイミングについて次のように判示した。
  • 本件契約において原告から見てプラスの売買差損益金又はスワップ金利差調整額(実現スワップ金利)が生じた場合,それらは所得税法36条1項にいう「収入すべき金額」に当たるというべきであり,収入の原因となる権利が確定した時期(収入計上時期)は,売買差損益金については,建玉を反対売買により精算して決済したときであり,スワップ金利差調整額(実現スワップ金利)については,建玉を反対売買により精算して決済したとき又は毎月末というべきである。
原告は,手じまいして決済精算がされるまでの間は顧客の収益は未実現・未確定であると主張したが,裁判所は,契約の定めの内容などに照らし,この主張を認めなかった。根洗いなしのFX取引について先例的価値あり。判旨の理由付けは契約の定めに依拠しており,「FXスワップ取引が日々のスワップ金利の相場に基づいて新規に繰り返されるとみなせる(関本・税大ジャーナル17号52頁)」といったロジックでは必ずしもない。



なお,2012年1月1日以後に行われる店頭取引については,租税特別措置法41条の14により,取引所デリバティブ取引と同様の申告分離課税になった。同法は,事業所得・事業所得・雑所得のいかんにかかわらず等しく適用される。国税庁のタックスアンサー