30 March 2014

立命館法學352号

所得税、消費税、相続税など、多くの興味深い論文が掲載されている。


浪花健三教授退職記念論文集

 論     説       
譲渡所得課税における取得費および付随費用ならびに譲渡費用伊 川  正 樹
違法の質・相対性と法的関係の相対性(序説)
――刑法理論の進化と発展のために――
生 田 勝 義
消費税法に<不課税>の概念は必要か?岡 村 忠 生
所得の振替防止法理・果実発生源泉木の法理について小 川 正 雄
相続税と所得税による「二重の負担」奥 谷    健
大審院民事判例集(民集)における判決登載基準について木 村 和 成
公職選挙法第11条第1項第2号の憲法適合性の欠如倉 田    玲
イギリスにおける国会議員リコール法の行方小 松    浩
損害賠償なんか踏み倒せ!
――債務の消滅をめぐる課税関係に関する一考察――
髙 橋 祐 介
違法支出論における債務確定主義の意義と機能谷 口 勢 津 夫
「共通法」2条3条に関する小考趙   慶  済
集団密航助長罪の解釈論上の問題について
――東京高裁平成21年12月2日第9刑事部判決を契機にして――
本 田    稔
「承継的」共犯について
――最決平成24年11月6 日刑集66巻11号1281頁を素材に――
松 宮 孝 明
除斥期間と債務の承認・権利行使
――民法724条後段の20年期間との関係で――
松 本 克 美
個別対応方式における課税仕入れの用途区分の判断基準について三 木    笑
対価概念・仕入税額控除と消費税法の基本構造三 木 義 一
納税者権利憲章の国際的展開
――国際的税務専門家団体によるモデル憲章の紹介を中心に――
望 月    爾
東日本大震災に伴う洋上漂流物のアメリカへの漂着とその処理のための日本政府の資金供与森   道  哉
法人におけるみなし配当金額の計上時期の誤りとその救済可能性安 井 栄 二
実現前権利の課税問題山 名 隆 男
国際法における「裁判拒否」の概念湯 山 智 之
浪花健三教授 オーラルヒストリー
浪花健三教授 略歴・主な業績

22 March 2014

3割・7割論の制度的含意は?

税制調査会の
第1回法人課税ディスカッショングループ(2014年3月12日)資料一覧
に、富山和彦特別委員の興味深い資料がアップされている。

すなわち、

  • 製造業を中心としたグローバル企業(3割未満の世界)
  • 非製造業を中心とした地域密着・ローカル企業(7割超の世界)
があり、それぞれはリンゴとミカンのようにまったく異なる2つの経済圏を成している、というのである。この説得的な事実認識にもとづき、富山委員は、課税のあるべき姿と、成長戦略の課題を導出している。なるほど。

この事実認識の制度的含意が、考えどころである。

  • 「3割未満」のグローバル企業は、有名な大手企業だけでなく、資本金規模では中小のリーディング企業を含む。とすれば、資本金の大小でターゲットをしぼりこむようなやり方では、効果的な区分にならないおそれがある。
  • 「7割超」の地域密着・ローカル企業にとって、より良い経営によって生産性をあげるようにするために、何が効果的なのか。外形標準課税が赤字企業の退出を促すというシナリオは、そもそも競争がないという事実認識と整合的か。新陳代謝を促す施策は、どのような形であれば政治的に受入れ可能になるか。

根本的には、経済活動に対する中立性の確保を目指す以上に、法人税制が果たすべき役割がどの程度あるかが、問われている。