22 August 2015

再分配的租税政策をめぐるパラドックス

UCLAのStark教授のこの論文が、

The Role of Expressive Versus Instrumental Preferences in U.S. Attitudes Toward Taxation and Redistribution, in Philosophical Explorations of Justice and Taxation 167 (edited by Helmut P. Gaisbauer, Gottfried Schweiger, and Clemens Sedmak, IUS Gentium, 2015).

米国の再分配的租税政策をめぐるパラドックスを論じていた。そのパラドックスとは、米国人が増大する経済的不平等に懸念を有しているという投票結果がある一方で、同じ投票結果によると、不平等を緩和する再分配的租税政策に大衆的反対が示される、というものである。イメージとしてわかりやすいのが、ブッシュ減税を契機にして2003年に出たマンガであって、Homer Simpsonが自分にもたらされた2ドルの減税を祝しており、しかし、実際には彼の裕福なボスはいくつものバッグ分の大きな減税を得ていた、というものである。

Stark教授は、投票者の選好表示が、instrumentalなもの(その政策を実現しようとするもの)でなく、expressiveなもの(政策の実現の有無にかかわりなく表示するためのもの、たとえばひいきの野球チームの試合で喝采しブーイングするがごとし)であるという仮説でもって、このパラドックスに挑んでいる。このexpressive preferenceという考え方は、公共選択論で1990年代からいわれてきたことらしい。へえ!

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