19 August 2015

平成27年度税制改正で、AOA関係の規定がさらに進化していた

平成26年度税制改正で帰属主義への移行が法制化され、ざっくりいって、法人については平成28年4月1日からスタートし、個人についてはさらに遅く平成29年1月1日から適用されることになっている。そして、平成26年度改正で法人税法や関連する租税特別措置法について大幅な改正がされたことは、周知の事実。

しかし、それで改正がすべて完了したわけではもちろんない。法人税法についても、平成27年度税制改正で、さらに新しい規定が付け加わっている。たとえば、142条の9である。

この規定は、次のAとBのバランスを念頭においている。

A 本店→PE→第三者
外国法人の本店からPEに、国内不動産を内部譲渡したのち、PEが第三者に再譲渡
→この場合、本店とPEの間の内部取引を時価で認識するがゆえに、再譲渡からはPEに帰属すべき譲渡益が出てこない。

B 本店―→第三者
外国法人の本店が、国内不動産を第三者に直接に譲渡
→この場合、「国内にある資産の譲渡から生ずる所得(新法人税法138条1項3号)」として、譲渡益に課税される。

そこで、Aの場合について、その内部取引の直前の帳簿価額に相当する金額で内部取引を行ったものとして、当該外国法人のPE帰属所得に係る所得の金額を計算することにした。これが新法人税法142条の9である、というわけである。

なるほど、芸が細かい。安河内さんや山田さんたち立案担当者による解説が、ここの704頁で読める。解説は、本店所在地国で、譲渡損益を認識しないことを前提としているようである。もしその国が、territorialな税制の下で、課税権離脱時に含み益を清算するような課税ルールを導入した場合には、日本国との間で相互協議案件になるのだろうか。さらに論点がありそうで、興味深い。日本にある不動産なのだから、日本国に優先的課税権が認められてしかるべきではあるのだが。
(特定の内部取引に係る恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算)
第百四十二条の九  外国法人の恒久的施設と第百三十八条第一項第一号(国内源泉所得)に規定する本店等との間で同項第三号又は第五号に掲げる国内源泉所得を生ずべき資産の当該恒久的施設による取得又は譲渡に相当する内部取引(同項第一号に規定する内部取引をいう。以下この項において同じ。)があつた場合には、当該内部取引は当該資産の当該内部取引の直前の帳簿価額に相当するものとして政令で定める金額により行われたものとして、当該外国法人の各事業年度の恒久的施設帰属所得に係る所得の金額を計算する。
2  前項の規定の適用がある場合の外国法人の恒久的施設における資産の取得価額その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

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