1.消費税法の定める「課税の対象」の中核部分は、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」だ(消費税法4条1項)。ここに「国内」とは、消費税法の施行地をいう(2条1項1号)。だから、東京都文京区本郷のピザ屋が近所で行うピザの宅配は、「国内において」行われたといえるだろう。また、ローマのピザ屋が近所で行うピザの宅配は、「国内において」行われたとはいえないだろう。ここまでは常識の範囲内で結論が出る。
2.それでは、ローマ在住の料理カウンセラーが本郷のピザ屋店員に対して、電話相談でレシピの助言を継続的に行っていたら、「国内において」行われたといえるだろうか。これはかなりややこしい。
3.内外判定については、消費税法4条3項が、次のように定める。
資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。
一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券その他の資産でその所在していた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)
二 役務の提供である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該役務の提供が行われた場所(当該役務の提供が国際運輸、国際通信その他の役務の提供で当該役務の提供が行われた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)
三 電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地
4.まず迷うのは2号と3号のいずれを適用するかである。これは、3号の「電気通信利用役務の提供」である場合にあたるであろう。というのも、「電気通信利用役務の提供」は、消費税法2条1項8号の3で、次のように定義されているからである(下線は引用者による)。
電気通信利用役務の提供 資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第一号(定義)に規定する著作物をいう。)の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。
このあてはめは、消費税法基本通達5-8-3(6)からも確認できよう。
そうなると、レシピ助言サービスを受ける者が日本国内にいるから、「国内において行われた」場合にあたる、といって差支えないように思われる。もっとも厳密にいうと、この結論に至るためには、ピザ屋店員の住所というよりはむしろピザ屋本店の所在地を基準として考えることになりそうで、そうなると、このピザ屋が個人事業なのか株式会社なのかといったことも事実認定する必要があるのだが・・・。ややこしい。
5.以上で、「国内において」という要件についての話はとりあえずおしまい。しかし念のため、課税関係がどうなるかについて補足してみよう(やぶへびになりそうだが・・・)。上記2の電話助言は、個別契約でピザ屋事業者が事業として利用することが定められているような場合には、おそらく「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するだろう(消費税法2条1項8号の4、消費税法基本通達5-8-4)。そうなると、リバース・チャージ方式による役務受領者納税の出番となる。ただしここでも話はさらに込み入っていて、課税売上割合が95%以上である課税期間においては、当分の間はリバース・チャージ方式の適用がない(平成27年改正消費税法附則42)。こういった点について詳しくは、伴忠彦・海外取引の消費税実務のとらえ方(2024)が頼りになる。この本の69頁を読んで、こんなことになっているのか、とようやく気が付いた。佐藤英明=西山由美・スタンダード消費税法(2022)176頁、国税庁のタックスアンサーも参照。うーん、ますますややこしい。
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