朝日新聞の夕刊「編集者(が/を)つくった本」で、東京大学出版会の編集者、山田秀樹さんが3回にわたって連載。
- 連載1回目は、「近代日本の政治構想とオランダ」 思想的格闘の克明なドラマ。大久保健晴さんの書物を世に出したことが語られる。良書を世に送り出すという仕事の意義を,感じさせる文章。研究に対する山田さんの真摯な姿勢が,じんわり伝わる。
- 連載2回目は、「職業としての学問」 知の海、針路を示す灯台。「駆け出し編集者」であったころの山田さんにとって、ウェーバーが「灯台の明かり」を残してくれた。そのおかげで、後世の私を含め多くの者が多大の利益を享受することになった。
- 連載3回目は、「朱筆 出版月誌 1968-1978」「朱筆2 出版月誌 1979-1990」 代替物のない本、世に問う 「ひとつひとつ、代替物のない、自らが世に送り出す出版物」が編集者の勲章だ、という「出版太郎」の言葉。そういうものを作ることができる人生は、とても豊かだと思う。
粗雑な感想を山田さんにお伝えしたら、そのお返事で、宮田昇(ペンネームが連載3回目の「出版太郎」)『翻訳権の戦後史』(みすず書房)を教えてくださった。GHQ占領下の超法規的な著作権行政で「50年フィクション」が生まれたことや、万国著作権条約への加入といわゆる「10年留保」堅持運動などが、いきいきと描かれている。翻訳出版は、近代日本が西洋諸国の文物に向き合ってきた歴史そのものだった。
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