- 消費税法8条の輸出物品販売場の規定は令和7年度税制改正で大きく見直され、新規定が令和8年11月1日から施行される。いわゆるリファンド方式への見直し。
- 改正税法のすべて令和7年版が手元に届いたので、消費税法の改正の箇所をさっそく読んでみた。財務省のウェブ版ではこれ。 ①ショッピングツーリズムの推進と②免税購入物品の横流し対策、という政策目標の両立に向けた努力と、平成30年度改正以降の手続電子化の成果が加わって、充実した解説になっている。
2.横流しの多発
- まず、「近年の主な見直し」の図表(848頁)を見るだけで、こんなにいろんな改正をやってきたのかと思う。免税販売手続が電子化されたことにより、輸出物品販売場における免税購入の実態が把握できるようになり、そこから国内での横流しが多発していることがわかってきたという(849頁)。
- じっさい、2025年1月の財務省・国税庁・経済産業省・観光庁「外国人旅行者向け免税制度の見直し(案)について」には、1億円以上の高額購入者の9割近くが捕捉できておらず、賦課決定できたとしてもほぼ全てが滞納となっているという状況が記されている(4頁)。
3.改正前の制度
- 改正税法のすべては、改正前の制度の概要を淡々と記述する(849-852頁)。
- ちょっとコメントしておくと、改正前の規定でもいちおう制度上は、免税購入対象者が出国する日までに免税対象物品を輸出しない場合、税関長又は税務署長は免除された消費税額に相当する消費税を即時徴収することとされていた(改正前の消費税法8条3項から6項)。たしかに法律の上では「その者から・・・直ちに徴収する」と書いてある。でもちょっと考えると、実際にどうやって徴収するのか、その実効性には疑問符がつく。
4.改正の内容
- 続いて、改正税法のすべては、改正の内容を詳しく解説する(852頁以下)。
- リファンド方式のイメージ図(853頁)がわかりやすい。輸出物品販売場は免税購入対象者に課税価格で販売するが、税関で旅券提示・確認を経てチェックできた段階で免税となり、消費税相当額を返金する。
- こうなると、税関での確認が執行の重要ポイントになる。税関長は、輸出物品販売場から国税庁長官を通じて事前に提供された購入記録情報に基づき確認を行う。この確認が消費税免除の要件である(新8条1項)。
- このしくみを支える情報インフラが免税販売管理システムだ。輸出物品販売場を経営する事業者は購入記録情報を国税庁長官に提供し、国税庁長官はこれを税関長に提供する(新8条2項)。確認をした税関長は税関確認情報を国税庁長官に提供し、国税庁長官はこれを輸出物品販売場を経営する事業者に提供する(新8条3項)。
- なお、質問検査権の規定(国税通則法74条の2)にもリファンド方式への見直しを反映して政令に言及する改正が入っていて、税関職員は、「輸出物品を消費税法第8条第1項に規定する政令で定める方法により購入したと認められる者」に質問し、輸出物品を検査することができる(これも令和8年11月1日から施行)。
- 免税対象物品も見直される。消耗品の特殊包装は、不要とされる。全国免税店協会のサイトによると、特殊包装とは下記のようなもので、「開封すると注意喚起の文字が表れて元に戻すことができません」と説明がある。言われてみれば、同じようなビニール袋を見たことがあるような気がする。
- 改正税法のすべての記述はさらに続き、免税販売手続における旅券等の提示や購入記録情報をシリアル番号で記録すること、輸出物品販売場の許可に関する見直し、直送・別送の場合の手続の見直し、基地内輸出物品販売場の廃止などを解説する(855頁以下)。
6.関連事項
- 「海軍販売所等に対する物品の譲渡に係る免税制度」について、所要の整備を行うがその内容に変わりがない、との記述がある。私はこの記述を読んで、租税特別措置法86条の2の存在をようやく認識した。
- さらに、酒蔵ツーリズム免税制度(租特87条の6)について、消費税と同様にリファンド方式への見直しを行う、との解説も(871頁)。
7.感想
国税庁の広報はこれ。免税販売管理システムAPI仕様書がダウンロードできるようになっている。これをみると、いまや国税職員に必要なスキルはこういうものになっているのだな、と感じる。
No comments:
Post a Comment
Comments may be moderated for posts older than 7 days.