2026/09/19

国際租税法第5版の刊行、追記

 このたび、増井良啓・宮崎裕子 『国際租税法』第5版を、東大出版会から刊行していただきました。そのことをここでポストしたあと、さらにお伝えしたいことが出てきたので、以下に追記します。

今回の改訂では、コラムの数をかなり減らしました。ただし、コラムで扱っていた内容を単純に削ったわけではありません。現在の叙述の流れの中で扱った方がよいと考えたものは、相当数を本文に組み込んでいます。その意味では、内容を減らしたというよりも、本文とコラムに分かれていた叙述を組み直した、という方が正確です。制度の説明と、その背景にある考え方や具体例とがつながりやすくなり、全体として叙述の一体性が高まったと思います。

もうひとつ、今回は過去の版への参照を意識的に増やしました。教科書は改訂を重ねると、以前の版で何を書いていたのかが見えにくくなります。しかし国際租税法のように制度が速い速度で変わる分野では、以前の版そのものが、その時点で制度をどう理解していたかを示す記録でもあります。たとえば、イノベーション・ボックス税制を扱うコラム(第5版215頁)では、第4版の対応箇所を複数挙げました。また、CFC税制の制度目的の変遷について、第3版では参照していたものの第4版では削った参照文献についても、どの文献を参照していたかをピンポイントで復元できるようにしました(第5版189頁)。こうして、新版だけで閉じるのではなく、必要に応じて旧版へとさかのぼることができます。

逆に、第5版では、第4版の章を全部、収録しないこととした部分もあります。これは、そのテーマを論ずる意義がなくなったという意味ではありません。むしろ、現在でも一歩先に進んで考えるための教材として、そのまま使える内容だと考えています。教科書としての全体構成を考えて今回は外しましたが、関心をもった読者には、第4版の該当章を図書館などでご覧になってほしいところです。

要するに、版を重ねることによって前の版が不要になるのではなく、新旧の版を行き来することで、国際租税法の変化そのものも見えてくる。そういうつくりを目指しました。それにしては、第6章対話篇のM先生とYさんがあまり歳をとっていないように見えるところが、ご愛敬ですが。