このたび、増井良啓・宮崎裕子 『国際租税法』第5版を、東大出版会から刊行していただきました。
第4版を刊行したのは2019年でした。それから7年の間に、国際課税をめぐる環境は大きく変わりました。OECD/G20 BEPS包摂的枠組みの「2つの柱」をめぐる議論が進み、とりわけグローバル・ミニマム課税は各国の国内法として実施される段階に入りました。他方で、こうした新しい動きだけを追えばよいわけではありません。国内法と租税条約の入り組んだ関係を、具体的な取引に即して見通しよく理解することは、国際租税法を学ぶうえで今も変わらないコアだと考えています。
そこで第5版では、単に近年の改正を追記するのではなく、いま国際租税法を学ぶために何を基本として残し、何を新たに加えるべきかを考え直しました。「2つの柱」をまとめて扱う章を新設したことも、そのあらわれです。また、外国子会社合算税制については、重要な最高裁判例を素材として、条文を読むだけでは見えにくい制度の考え方を突っ込んで検討する章を設けました。全体として、制度がなぜ現在の形になったのかという沿革にも、これまで以上に注意を払っています。
学生のみなさんには、まず、具体的な取引について「どの国が、なぜ課税できるのか」という問いを持ってほしいと思います。そのうえで、国内法、租税条約、各種の国際的ルールを行き来しながら考える。本書の設例やQuiz、Exerciseも、そのために置いてあります。複雑な制度の背後にある基本的な考え方をつかむための地図として、第5版を使っていただければ幸いです。