2026年9月10日と11日、香港中文大学(CUHK)とKing’s College Londonの合同研究会に出席してきた。Leopoldo Parada さん(KCL)のお誘いによる。会合の正式名称はThe CUHK–KCL Annual Conference on Tax, Trade, and Investment Lawだ。日本からは福永有夏教授(早稲田大学)が参加されていた。
プログラムは、Day1に国際課税のパネルが2本、通商・投資のパネルが1本ずつ。Day2は、いくつかの平行セッションに分かれて、ペーパーのプレゼンと質疑応答があった。ぼくは、Beyond Double Taxation: The Making of the 1970 Japan-Korea Tax Treaty in Historical Contextという題目で、1970年日韓租税条約の締結過程から得られる示唆を議論した。Noam Nokedさん(CUHK), Brian Galleさん (UC Berkeley), Doron Narotzkiさん (Akron)などから有益なインプットをもらった。
セッションの内外で、Noam Nokedさんや王静宜さんをはじめとするCUHKのスタッフがどういう研究をしているか、どんなPh.D学生がいるか、といったことも見ることができた。中国本土の北京大学、武漢大学、厦門大学などから多くの教授や院生が参加していて、国際課税のみならず、国際経済法・環境法などの分野で次世代層が育っていることを感じとった。
宿では、Jeff VanderWolkさん(Squire Patton Boggs)から、彼の長い香港経験と、米国やOECDでの政策形成過程の経験から、いろんな話をきいた。
彼は、Jefferson Vanderwolk, “Hong Kong’s New Tax Treaty Network,” 9(3) eJournal of Tax Research 247–253 (2011)において、2010年前後の香港の租税条約ネットワークの急速な拡大の背景を論じた人だ。それによると、香港がこの時期に租税条約ネットワークを拡大したのは、国際的な情報交換・透明性への圧力の中で、国際金融センターとしての競争力維持を図るためだったという。ぼくは、かねてより、2010年署名の日港租税条約がどうして情報交換だけに特化するのでなく、フル規格の二重課税防止条約だったのか、不思議に思っていた。彼の見立てからすると、もともと香港側では源泉税がないので、日本側に源泉税を引き下げさせる意味があったということになる。
ちなみに、彼の最近の著作はUTPRの条約適合性に関するものが目立つ。今回じっくり話をきいてみて思ったのは、もともと香港流のterritorialityを重視する考え方が彼の根っこにあるということだ。だからこそUTPRのように「ある国の課税権に外から手を伸ばしてくる」ように見えるやり方に強い反感を示すのだろう、と感じた。
香港の投資ハブとしての今後についても、シンガポールとの競争はもとより、海南自由貿易港との関係とか、香港としてはじめて策定する新しい5カ年計画(2026〜30年)とか、継続して見ていきたいことが多い。