1.夏の集中講義で、消費税法の条文を読むための教室設例を織り込んで双方向で議論した。すると、鋭い質問が出て、楽しくもキビシイことになった。特にキビシかったのが、輸出免税だ。
2.仕向地原則については、教室で説明済みだった。また、仕向地原則の法律上のあらわれとして、7条1項の「免除する」がいわゆるゼロ税率を意味し(45条1項1号で輸出取引の対価の額が課税標準から除かれることを「ゼロ税率」と呼んでいる)、30条の仕入税額控除が働くことについても、特段の問題なく講義を進行できるはずだった。ところが、設例の設定で、7条1項の要件に相当する事実を明示的に書き込んでおかなかった。そこで、どんどん質問が出てきて、応答がうまくいかなかったのだ。
3.改めて整理しよう。
- 7条1項は、事業者が「国内において行う」課税資産の譲渡等のうち、本法からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(1号)について、消費税を免除する。したがって、7条1項を適用するためには、「国内において行う」要件を満たす必要がある。
- 「国内において行われた」かどうかの判定基準については、4条3項に定めがある。資産の譲渡の場合は、当該譲渡が行われる時において当該資産が所在していた場所(同項1号)が国内にあるかどうかにより判定する。それゆえ、譲渡時の資産の所在場所が国内であれば、「国内において行う」要件を満たす。
4.もうすこし具体的に考えよう。たとえばIncotermsのFOB(Free On Board)の場合、通常、日本の指定船積港において貨物を買主の指定した本船の船上に置くことによって、FOB上の引渡しが行われる。契約内容・取引実態に照らしてこの本船積込時が消費税法上も資産の譲渡時となる通常の取引では、その時点で本船は日本の港内にあり、貨物も国内に所在している。したがって、4条3項1号の「国内において」要件を満たす。その上で当該貨物が本邦から輸出されるため、7条1項1号の輸出免税となる。30条の仕入税額控除が働く。
これに対してDAP(Delivered at Place)の場合は、ちょっと注意が必要だ。DAPでは、売主が外国の指定仕向地に到着した輸送手段上で、荷卸しの準備ができた貨物を買主の処分に委ねた時に、売主の引渡義務が履行され、危険も買主に移転する。したがって、売買契約の内容および取引の実態からみて、この外国の指定仕向地における引渡しの時が消費税法上も資産の譲渡時であると認められる場合には、その時点で資産は国外に所在するから、4条3項1号により国外取引となる。すると、
- 4条1項の「国内において」要件を満たさず、消費税の課税対象外となる。
- 7条1項の「国内において行う」要件を満たさず、輸出免税に該当しない。
- ここで、仕入税額控除について、31条2項が働く。同項により、事業者が「国内以外の地域における資産の譲渡等……のため、資産を輸出した場合」には、輸出の事実を所定の方法で証明すれば、その資産の輸出を「課税資産の譲渡等に係る輸出取引等」とみなして30条を適用することになる。