「納税コンプライアンスの国際比較のために」と題する論文を、この本に寄稿しました。
出発点となったのは、《納税コンプライアンスが各国でどのように・なぜ違っているか》という問いです。この問いを手がかりに、Sven Steinmo教授(1953-2024)の研究から私なりに学び取ったことを記しました。とくに、各国の違いを説明する要素として文化と制度のいずれがより適切か、合理的選択論と一味違う「利益・規範・価値観」による説明をどうとらえるか、Steinmo & D’Attoma (2022)の議論はLevi (1988)の略奪的支配理論への対抗理論としてどこまで成功しているか。こういったことをじっくり考える機会となりました。
執筆の過程では、多くの方との愉しい交流に恵まれました。とくに、2025年度前半に駒場のゼミで議論をともにした学生のみなさん、2025年7月のオムニバス講義「現代と法」で貴重なコメントをくださった白石忠志教授に、感謝申し上げます。また、直接にお話しする機会はなかったものの、著作を通じて大いに教えられたのが、文化論的説明の難点としてN=K問題を指摘された久米郁男教授と、米国の歴史的制度論の特徴をあざやかに捉えた前田健太郎教授です。一介の老法律家として、目からうろこでした。
振り返れば、ずいぶん前に、神野直彦教授がSteinmo教授との昼食にさそってくださったことがありました。あのときのご縁が、長い年月を経て、めぐりめぐって今回の論文につながったように感じています。