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2025/03/29

吉村典久教授退職記念論文集

吉村典久教授退職記念論文集が、慶應義塾大学法学研究会サイトの法学研究データベースに掲載されていた。私の論文も掲載していただいた。「南北問題と租税法:グローバルサウスの声にどう向き合うか」というかなり大風呂敷のタイトルで、国連の国際租税協力枠組条約をめぐる動きを中心に、途上国の高まる主張に対して日本政府がどのような方針で臨むべきかについて、意見を述べた。

最近、英語圏の専門誌では、「国連枠組条約を機会に国際課税のガバナンスをとっかえよう!」という論説をよく目にする。私は、南北問題の根深さを意識するからこそ、これには適切な距離を置いたほうがよいと考えた。この論文でも、直接投資額などのデータを踏まえつつ、ふわふわした主張に安易に乗っかってはいけないと主張した。IMFで長く支援にかかわってきたMick Keenさんとランチをはさんで対話した経験が、論旨を固める上で背中を押してくれた。日本の研究者の間でどう受け止められるかはよくわからない。

以下に、論文集全体の目次とリンクをコピペしておこう。

最新号98巻1号(2025年01月)

2025年01月28日発行

その他

表紙

法学研究98巻1号2025年01月 1-1頁

その他

中表紙

法学研究98巻1号2025年01月 2-2頁

その他

写真

法学研究98巻1号2025年01月 3-3頁

その他

堤林剣 

法学研究98巻1号2025年01月 5-7頁

その他

目次

法学研究98巻1号2025年01月 9-12頁

論説

日台民間租税取決め

髙久隆太 

法学研究98巻1号2025年01月 25-46頁

論説

居住用マンションの評価に関する一考察

渋谷雅弘 

法学研究98巻1号2025年01月 139-161頁

論説

不相当に高額な役員給与の損金不算入規定についての一考察

西本靖宏 

法学研究98巻1号2025年01月 227-247頁

論説

国境を越えた現物出資をめぐる課税問題(再論)

吉村政穂 

法学研究98巻1号2025年01月 249-268頁

論説

自己恩赦の憲法適合性:アメリカ大統領の恩赦権を素材として

大林啓吾 

法学研究98巻1号2025年01月 319-352頁

その他

吉村典久教授略歴・主要業績

法学研究98巻1号2025年01月 379-389頁

その他

後記

青木淳一 

法学研究98巻1号2025年01月 391-391頁

その他

執筆者紹介

法学研究98巻1号2025年01月 393-393頁

その他

第97巻第12号目次

法学研究98巻1号2025年01月 394-394頁

その他

奥付

法学研究98巻1号2025年01月 395-395頁

論説

フランスの相続税について

平川英子 

法学研究98巻1号2025年01月 420-397頁

論説

租税法と既得権益:カリフォルニア州のProposition 13 をきっかけに

浅妻章如 

法学研究98巻1号2025年01月 440-421頁

論説

南北問題と租税法:グローバルサウスの声にどう向き合うか

増井良啓 

法学研究98巻1号2025年01月 480-464頁

その他

目次(英文)

法学研究98巻1号2025年01月 488-485頁

その他

裏表紙

法学研究98巻1号2025年01月 489-489頁

2026/01/29

ChatGPT、租税法の研究動向を語る

 窮屈な場所での長い待ち時間に、ChatGPTに聞いてみた。

Q 租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

すると、以下のテクストが生成された。所要時間25秒。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

以下は、**国際的(制度形成の場・各国実装)学際的(法学×経済学×会計×政治学×心理学×情報科学)**の両軸から見た、近年(とくにBEPS 2.0以後)の租税法研究動向の「見取り図」です。


1. 国際租税秩序の再設計が、研究の“主戦場”になった

(1) グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)を中心に、国内法・条約・会計・執行が一体化

  • GloBE(IIR/UTPR/QDMTT)実装が進むにつれ、研究テーマは「理念」から実務に耐える法技術へシフトしています(立法選択、定義、セーフハーバー、申告・情報報告、二重課税調整、紛争処理)。(OECD)

  • 2026年1月には、“Side-by-Side package”(共存・並立の枠組み)が提示され、特定国制度との整合や、QDMTT・申告(GIR)負担の位置づけが論点化しています。(OECD)
    → 研究としては、①「国際合意の法的性質(ソフトローの拘束力)」、②「国内実装の裁量と限界」、③「企業グループ課税の再構成(連結ベースの租税法理)」が中心課題です。

(2) Pillar Oneは“全面合意”より、部分モジュール(Amount B等)へ:TP研究が再編

  • Amount B(基礎的マーケ・販売活動の簡素化)がTPガイドラインに組み込まれ、2025年以降の適用選択が制度設計論点になっています(適用範囲、比較可能性、紛争予防)。(OECD)

(3) UN税条約化の動き:国際課税の“フォーラム競合”が研究対象に

  • 国連では**国際租税協力の枠組条約(Framework Convention)**をめぐるプロセスが進行し(交渉プロセスは2025–2027を目標とする説明もある)、OECD中心の秩序と並走する形で、正統性・包摂性・配分正義が強く論じられています。(financing.desa.un.org)
    → 「誰がルールを作るのか(ガバナンス)」と「どの価値を優先するのか(配分・開発・税源配分)」が、法解釈論そのものに影響する局面が増えています。


2. “執行・透明化・情報”が、租税法を情報法・刑事法・行政学へ接続した

  • 自動的情報交換、受益者情報、プラットフォーム課税、実質的支配者、ペナルティ設計など、透明化インフラが租税法の中核テーマとして定着。

  • 研究の焦点は、

    1. データ収集権限とプライバシー/適正手続(憲法・人権・行政手続)

    2. 国境を越える執行協力(国際行政法)

    3. 刑事・制裁の最適設計(刑事法・行動経済学)
      へ広がっています。
      → “課税要件論”だけではなく、情報→リスク選別→調査→争訟という「税務行政のプロセス法」が、研究フロンティアになっています。


3. 企業租税法は「会計・ガバナンス・サステナビリティ」と融合

  • 税務は企業の**ガバナンス(取締役の監督、税務リスク管理、開示)**と不可分になり、会計(不確実性、引当、実効税率)と一体で論じられます。

  • ESGの文脈では、**“tax transparency / responsible tax”**が、ソフトロー(開示基準・投資家要請)として企業行動を拘束し、法規範との交錯が研究テーマに。


4. 学際化の中心は「実証」「行動」「計量」:租税法研究の方法論が変わった

(1) 実証(Empirics)の標準化

  • 租税法の議論が、判例・条文解釈に加えて、ミクロデータ分析、自然実験、差の差分析、RCT、フィールド実験などを前提に組み立てられる場面が増加。

  • “租税法学”が、**法政策評価(リーガル・ポリシー・アナリティクス)**へ寄ってきています。

(2) 行動科学(tax compliance / tax morale)

  • 「なぜ人は税を払うのか」を、制裁だけでなく、社会規範・信頼・手続的公正・ナッジで説明し、制度設計(申告簡素化、通知文言、第三者報告)に落とし込む研究が定着。

(3) AI・デジタル化:税務行政3.0と法的統制

  • AIによるリスク選別、電子インボイス、リアルタイム報告、プラットフォームデータ連携が進み、論点は

    • アルゴリズムの透明性・説明可能性

    • 差別・偏り(バイアス)と救済

    • 自動化された不利益処分の適正手続
      へ展開。租税法が情報法・行政法・統計倫理と接続します。


5. 比較法・政治経済学の再評価:税は「制度の産物」として研究される

  • 同じ“所得課税”でも、執行能力、社会保障、財政連邦制、地方税体系、政治文化で機能が変わるため、比較制度論が強まっています。

  • とくに国際課税では、国内政治(産業政策・対外関係)と租税立法が直結するため、**政治経済学(誰が得て誰が負担するか)**が解釈・立法論に入り込む傾向が顕著です。


研究動向を一言でまとめると

  1. 国際協調(OECD/UN)×国内実装が中心軸になり、

  2. 租税法は情報・執行・会計・ガバナンス・行動科学・AIへ接続して、

  3. 「解釈」だけでなく**制度運用と効果(実証)**を含む総合領域へ拡張しています。


(続く)

(続き、これでおしまい)文献バイアスのチェック

 【これまで】

1)租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

2)以上を、法学全体の研究潮流の中で、位置づけよ

3) 上記の「法学全体の研究潮流」は、どんなソースに依拠して、記述しているのか?

【今回】

この3)の結果をみると、リンク先の文献が存在することは確認できた。しかし、参照している文献に偏りがあるのでは、と気になる。そこで、文献バイアスのチェックをやってみよう。ちょっと迂遠なやり方だが、別のプロンプトで、次のようにきいてみた。

4) いま、法学は何が面白いか?日本語文献に加え、英語・仏語・スペイン語・中国語の文献にも目を配って、公法学・私法学・基礎法学を問わず、解説せよ

すると、ChatGPTは次のテクストを生成してきた。思考時間58秒。


以下引用++++++++++++++++++++++++++++

以下は、2026年初頭の時点で「いま法学が面白い」と言える論点を、公法・私法・基礎法を横断して“研究の争点(research frontier)”として整理したものです。結論から言うと、**対象(社会の変化)方法(研究技法)**が同時に更新されているのが、いまの面白さの源泉です。


1. いま法学が面白い理由(総論)

対象が「国家×市場×技術×地球」に拡張した

  • AI・データ・プラットフォームが、行政・企業・司法・生活を貫く“新しいインフラ”になり、憲法・行政法・民刑法・知財・国際法まで一気に接続されました(例:AIの透明性、説明責任、著作権、差別、国家安全保障)。EU AI Actの施行スケジュールを見ても、規制が「理念」から「執行・実装」段階に入っています。 (Sénat)

  • 気候変動は、環境法だけでなく、行政訴訟・憲法(将来世代)・会社法(取締役の注意義務)・金融規制(サステナブル投資)・国際法(適応・損失と損害)を束ねる巨大テーマになっています。 (ロンドン政治経済学校)

方法が「ドグマ」一辺倒から“混成(ハイブリッド)”へ

  • 実証・計量・計算社会科学が、解釈学と競合するのでなく接合され始めています(判例・立法過程・行政裁量・契約文言・制裁実務のデータ化)。欧州でも Empirical Legal Studies の組織化が進み、学会・会議のインフラが整っています。 (Esels)

  • 生成AIが、研究対象であると同時に研究手段になり、「法学の知の生産」自体が問い直されています(引用の真正性、学説形成の速度、教育の再設計)。 (papers.ssrn.com)


2. フロンティア①:AI・データ・アルゴリズム統治(Digital/AI Governance)

何が面白いか(争点)

  • 規制の型:リスクベース(EU)/推進法型(日本)/行政的統制+産業政策の複合(中国)など、設計思想が分岐し、比較法がそのまま政策論になる。 (Sénat)

  • “法の実装”:条文解釈だけでは終わらず、監督当局・標準化・監査・ガバナンス文書(チャーター)まで含む「制度生態系」を読む必要がある(公法と私法の境界が溶ける)。フランス行政裁判所(Conseil d’État)の司法内部向けAI利用憲章は象徴例。 (Conseil d'État)

  • 法学の教育・実務も巻き込む:AIがリサーチや起案を代替し、法曹・裁判・行政の職能設計が再編される。 (inlibra.com)

言語別「入口」文献(例)

  • 日本語:AI規制論の整理(法科大学院ローレビュー) (sllr.j.u-tokyo.ac.jp)/日本のDXと法(『法律時報』特集) (nippyo.co.jp)/日本のAI法(e-Gov・内閣府まとめ) (e-Gov 法令検索)

  • 英語:生成AIと法学研究の将来(SSRN) (papers.ssrn.com)

  • 仏語:生成AIと法曹職、EU AI規則の射程(仏上院報告) (Sénat)/行政裁判所のAI利用憲章 (Conseil d'État)

  • 独語:法のデジタル化(Max Planck系の論集) (pure.mpg.de)/EU AI規則(KI-VO)運用論点(BeckのRDi) (RSW)

  • 西語:デジタル法・フロンティア技術の特集号(IUS ET SCIENTIA) (revistascientificas.us.es)/民主主義とAI・DSA等(Revista de Derecho Político) (revistas.uned.es)

  • 中国語:デジタル法学の研究動向(人大・月報) (lti.ruc.edu.cn)/ネット法治・AIガバナンスの年次報告(CAICT等) (caict.ac.cn)


3. フロンティア②:プラットフォーム規制・ダークパターン・情報環境

何が面白いか(争点)

  • 表現の自由・消費者保護・競争政策・個人情報保護・刑事法(詐欺・名誉・ハラスメント)が、**同じ現場(UI/UX・推薦アルゴリズム・広告)**に折り重なる。

  • 研究は「価値」だけでなく「設計」へ:ダークパターン研究のように、法学がHCIや実証レビューと接続して“規制の対象定義”そのものを作っていく。 (サイエンスダイレクト)

  • 日本でもプラットフォーム規制を包括設計する科研プロジェクトが走っており、学界側の研究組織化が見える。 (KAKEN)


4. フロンティア③:気候訴訟・将来世代・サステナビリティ(公法×私法の合流)

何が面白いか(争点)

  • 訴訟が政策を動かす(政府枠組み訴訟/企業責任訴訟)。世界の年次スナップショットが整備され、比較研究が急速に進む。 (ロンドン政治経済学校)

  • グローバル・サウスの法形成:北だけが規範を作る構図が揺らぎ、気候訴訟の地図が塗り替わる。 (OUP Academic)

  • 会社法・金融法の中核化:サステナブル投資、取締役の義務、開示とグリーンウォッシュ規制は、私法の“周縁”ではなく中心争点。 (OUP Academic)


5. フロンティア④:法秩序の分断と接続(地政学・経済安全保障・越境規制)

何が面白いか(争点)

  • データ移転・輸出管理・制裁・サプライチェーンなどで、国際法・国内公法・私法(契約・準拠法・仲裁)が同時に動く。

  • “一つのグローバル法”ではなく、複数レジームが並立する 断片化/多元的法秩序(legal pluralism) を、どう統治するかが基礎法学・法理論のど真ん中になっています(AIと多元秩序を結ぶ議論も出ている)。 (ResearchGate)


6. フロンティア⑤:研究手法としての「データ化された法学」

何が面白いか(争点)

  • 判例・立法・行政裁量・監督執行のデータを用いて、**解釈学の前提(何が問題になっているか)**を経験的に描ける。

  • ただし「正しさ」は自動では出ない:生成AIの利用は、引用・判例参照の真正性問題を露呈させ、学術倫理・プロセス設計が研究テーマ化しています(実務でも“ハルシネーション事件”が問題視)。 (Cinco Días)


7. 6言語で読むための、最小限の“棚”の作り方(実務的提案)

  • 共通テーマで束ねる:AI/気候/プラットフォーム/越境規制/手法(実証)で文献を集めると、言語をまたいで比較しやすい。

  • 各言語で「年次報告」「特集号」「官庁白書」を起点にする

    • 日本:特集号(DX×法) (nippyo.co.jp)

    • 仏:上院報告・司法内部ガイドライン (Sénat)

    • 独:専門誌エディトリアル(AI規則の適用局面) (RSW)

    • 西:デジタル法の特集号 (revistascientificas.us.es)

    • 中:ネット法治・デジタル法学の年次/月次動向 (caict.ac.cn)

    • 英:SSRN+大学研究所レポート(気候訴訟など) (papers.ssrn.com)



【とりあえず、これでおしまい】

2025/05/31

国税庁保有行政記録情報を利用した統計的研究

国税庁のこのサイトに、ディスカッションペーパーが公表されていた。日本の税務申告データを用いた貴重な研究だ。

たとえば、國枝=米田(2023)は、税務データの学術利用の意義につき、高額所得者の所得分布の分析の例を中心に説明する。すなわち、分析ができるようになった背景として、次のように指摘する(同2頁)。

これまで、我が国においては、国税庁統計年報のような所得階層別の集計データや高額所得者・納税者公示制度が存在したものの、個票を含む税務データの利用がほとんど許されておらず、我が国の財政学者は、国際的に評価される租税政策に関する実証研究を行うことが困難となっていた。・・・しかし、国税庁は、2021 年 6 月に、我が国の税・財政政策の改善・充実等に資する統計的研究を実施する研究者を公募することを公表した。この研究においては、税務大学校職員との共同研究を前提に、国税庁の保有する行政記録情報(税務データ)を利用した分析等を行うことができる。

そして、このような分析の一例として、高額所得者の所得分布のパレート係数の推計を説明し、次のように述べる(同3頁)。

高額所得者のデータを十分含まないサーベイデータでの分析と異なり、税務データを利用することで、我が国においても、超高額所得者への所得集中が進んでいることを明らかにすることができる。高額所得者の所得分布については、さらに分析を進めることとしているが、税務データの学術利用の意義を示す一例と考えられる。

税務データを用いることで、実証研究が進む。実態がわかり、制度改善のヒントになる。引き続き応募がなされ、良い成果が出てくることを期待したい。

法律家の眼からみて興味深いのは、このような研究を可能にしたのが共同研究という枠組みをとるというアイディアだったこと。そうすることで、守秘義務というハードルをクリアしている。

なお、これとは別に、国税庁は、国税庁保有行政記録情報を匿名加工した匿名データを利用して統計的研究を実施する研究に門戸を開いている。

2026/01/29

(さらに続き)ChatGPT、租税法の研究動向を語る

【これまで】

1)租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

2)以上を、法学全体の研究潮流の中で、位置づけよ

【今回】

ちょっと大風呂敷を広げている感じがしたので、ハルシネーションではないかどうか、確認してみた。

Q 上記の「法学全体の研究潮流」は、どんなソースに依拠して、記述しているのか?

これに対する応答は、以下の通り。所要時間52秒。


以下引用***********

上記の「法学全体の研究潮流」は、特定の1冊に依拠した叙述ではなく、(少なくとも英語圏を中心とする)法学の“プログラム論文/概念史的整理/方法論宣言”として広く参照される文献群を、いくつかの軸で**総合(triangulation)**して描いたものです。依拠したソースの「類型」と「代表文献」を、私が使った対応関係が分かるように整理します。


1) 「ガバナンス転回(規範中心→統治・実装中心)」の根拠

ここは、行政法・規制研究・公共政策の交点で形成された“regulatory state / governance”系の古典と、法学内部の “New Governance” 論が柱です。

  • **Regulatory state(規制国家)**の概念化:Majone「From the Positive to the Regulatory State」など(規制による統治へのシフトを説明)(Cambridge University Press & Assessment)

  • **Governance(governing without government)**の整理:Rhodes「The New Governance」(SAGE Journals)

  • 法学内部での“New Governance”宣言:Lobel「Setting the Agenda for New Governance Research」(規制領域横断の研究潮流として提示)(scholarship.law.umn.edu)

私の叙述で言う「正当化だけでなく、誰が・どの手続で・どう運用するかへ」という部分は、この系譜(規制国家+新ガバナンス論)に依拠しています。(Cambridge University Press & Assessment)


2) 「トランスナショナル化(国内法の閉域→国際的ルール形成・ソフトロー・相互運用)」の根拠

ここは、国際法/国際関係法の側の“トランスナショナル法過程”と、国際機関・私的主体を含む規制の「行政法化」を論じる潮流が柱です。

  • Transnational Legal Process:Koh「Transnational Legal Process」(国家・非国家アクターが複数フォーラムで規範を“作り・解釈し・執行し・内面化する”という枠組み)(UNL Institutional Repository)

  • Global Administrative Law(グローバル行政法):Kingsbury/Krisch/Stewart「The Emergence of Global Administrative Law」(国際機関等の意思決定に、手続・理由提示・審査など行政法的コントロールが立ち上がるという整理)(Duke Law Scholarship Repository)

私の叙述で「条約だけでなくモデルルール・ソフトローが実質拘束」「法源・正統性が前景化」としたのは、この2つ(TLP+GAL)の議論枠組みを下敷きにしています。(UNL Institutional Repository)


3) 「実証・社会科学化(Empirical/Socio-legal turn)」の根拠

ここは、**Empirical Legal Studies(ELS)**の制度化を示す編集序文・ハンドブック類と、法と社会(socio-legal studies)の系譜です。

  • JELS創刊と方法論宣言(ELSの自己定義・制度化の指標):Eisenbergら「Editor’s Introduction」(Journal of Empirical Legal Studies, 2004)(Wiley Online Library)

  • ELSの概説・位置づけ:Eisenberg「The Origins, Nature, and Promise of Empirical Legal Studies」(2011)や、Oxford Handbookの導入部(ELSの国際的拡がりにも言及)(scholarship.law.cornell.edu)

  • 規制研究と“応答的規制”(法執行のデザインを社会科学と結ぶ代表作):Ayres & Braithwaite『Responsive Regulation』(1992)(John Braithwaite)

私の叙述で「解釈学だけでなく制度効果の検証が標準化」「コンプライアンス研究が方法論的に拡張」とした部分は、ELSの制度化(JELS等)+応答的規制の流れに依拠しています。(Wiley Online Library)


4) 「データ化・AI化(アルゴリズム行政/手続保障の再設計)」の根拠

ここは比較的新しい領域なので、行政法原理(適正手続・説明責任・裁量統制)を、アルゴリズム意思決定にどう移植するかを論じる研究が中心ソースです。

  • 公共部門におけるアルゴリズム意思決定と行政法原理:Oswaldら「Algorithm-assisted decision-making in the public sector…」(2018)(royalsocietypublishing.org)

  • アルゴリズムが「ルール」か「ガイダンス」か(手続法=APA等との接続):Henderson & Krass「Algorithmic Rulemaking vs. Algorithmic Guidance」(2023)(jolt.law.harvard.edu)

  • 「手続的正義」や“voice(聴聞・参加)”の欠落を論じる近時研究:Kinchin「Voiceless: the procedural gap in algorithmic justice」(2024)や、due process by design(2025)(OUP Academic)

私の叙述で「説明可能性・バイアス・適正手続・救済が中核論点」とした部分は、こうした“algorithmic governance × administrative law/procedural justice”文献群に依拠しています。(royalsocietypublishing.org)


5) 要するに、何に依拠して“潮流”と言っているのか

私が「潮流」と言うときの根拠は、だいたい次の4種類です。

  1. 分野を定義した古典(概念装置の提示):Majone(規制国家)、Rhodes(ガバナンス)、Koh(TLP)、Kingsburyら(GAL)(Cambridge University Press & Assessment)

  2. 法学内部での方法論・運動の制度化:JELS創刊序文、ELS概説・ハンドブック(Wiley Online Library)

  3. 実装・執行設計を軸にした学際の定番:Responsive Regulation(John Braithwaite)

  4. 新領域(AI等)で行政法原理を再定式化する近時研究:Oswald、Henderson & Krass、Kinchin など(royalsocietypublishing.org)


(続く)