すでに9月に出ていた報告書である。
第1部の比較税務行政の情報が例年通り充実しているだけでなく,第2部の旬の話題が多彩で面白い。たとえば,第11章では,A blockchain scenario studyと題して,オランダの税務当局の3名が,分散台帳技術(DLT)の今後について4つの将来シナリオを描いている。
- DLTが経済界や消費者に浸透し,政府がキャッチアップに失敗するシナリオ
- 政府がDLTが繁栄する余地を設け,DLTがフルに潜在力を発揮するシナリオ
- 政府がDLTを採用し主導して,情報をフルに取得するシナリオ
- DLTに対する公衆の信用が失われてしまい,技術がテイクオフに失敗するシナリオ
未成熟の段階における新しい技術に対して政府がどのような態度をとるかによって,将来におけるグリップが異なってくる。つまり,政府がもつ情報上の地位が異なってくる,というのが,このシナリオからわかること(201頁)。どうなるかわからないところで,未来予測をたててみる。外れたとしても,意味がある。
他の章でも,行動洞察(behavioural insights)の応用とか,フリーランサーの納税とか,まさに旬の話題についていろいろと興味深い議論。