増井良啓・宮崎裕子『国際租税法』第5版の刊行についてポストし、追記までしたのですが、どうも一回の追記では済まなかったようです。さらにお伝えしたいことが出てきました。追記が本体より長くならないうちに、いくつか書いておきます。
1.最終章を「2つの柱」に充てたこと。Pillar Oneにはもう芽がないのではないか、それなのになぜ教科書で取り上げるのか、というご批判があります。しかし、本書で大事にしたかったのは、現在動いているルールの説明だけではありません。なぜPillar Oneが提案され、どのような問題に対応しようとし、どこで停滞したのか。その経緯をおさえることは、これからの国際課税を考えるうえで意味があります。むしろ、Post-Pillar Oneの世界がどこへ向かうのかを展望するためには、ここまでの議論を知っておくことは不可欠と考えました。なお、Pillar Oneに関するこのような見方は、日本における先行業績として、この本でも共有されています。
2.用語の変更。租税条約の「事業所得」条項を、第5版では「企業利得」条項という呼び方に統一しました。租税条約の本文テクスト「企業の利得(profits of an enterprise)」に忠実な呼称です。以前から、コラム「事業所得という言葉」で指摘してきたこと(第2版90頁、第3版92頁、第4版97頁、第5版96頁)を、本文に反映させました。
3.Exerciseに付けている「考え方のヒント」。授業に出席していた学生さんから、「ヒントがそっけなくてダメ」と、たいへん分かりやすいダメ出しをいただいていました。これに対するせいいっぱいの対応として、すこし丁寧に説明しました。答えそのものを書いてしまってはExerciseになりませんが、どこから考え始めればよいのかが分かる程度には、手掛かりを増やしたつもりです。
4.各章末尾の「争点(issues)」に付した文献。今回は、日本語文献だけでなく、その論点を考えるうえで有名な英語文献も、必要に応じて掲げました。大学院で国際課税について論文を書こうという方には、そこから文献探索を始めることで、少し近道になる場合もあると思います。
5.索引項目。これは、思い切って絞りこみました。国際租税法を学ぶうえで特に知っておいてほしい言葉を中心にしています。普通に調べものにも使えますし、学生さんが定期試験の直前に索引をざっと眺めて、「まだ意味の分からない単語が残っていないか」と自己点検する、といった使い方もできます。
こう書いてくると、まだほかにもお伝えしたいことを思い出しそうです。今度こそ、追記はこのくらいにしておきます。