2012/07/06

東京地判平成22・6・24 FX(外国為替証拠金)取引の課税

個人居住者が,証拠金を預託して外国為替の売買を行い(店頭FX取引),帳尻金が生じた。帳尻金は,売買差損益金から手数料等を控除した残額と,スワップ金利差調整額との合計額である。裁判所は,これを雑所得に区分し,課税のタイミングについて次のように判示した。
  • 本件契約において原告から見てプラスの売買差損益金又はスワップ金利差調整額(実現スワップ金利)が生じた場合,それらは所得税法36条1項にいう「収入すべき金額」に当たるというべきであり,収入の原因となる権利が確定した時期(収入計上時期)は,売買差損益金については,建玉を反対売買により精算して決済したときであり,スワップ金利差調整額(実現スワップ金利)については,建玉を反対売買により精算して決済したとき又は毎月末というべきである。
原告は,手じまいして決済精算がされるまでの間は顧客の収益は未実現・未確定であると主張したが,裁判所は,契約の定めの内容などに照らし,この主張を認めなかった。根洗いなしのFX取引について先例的価値あり。判旨の理由付けは契約の定めに依拠しており,「FXスワップ取引が日々のスワップ金利の相場に基づいて新規に繰り返されるとみなせる(関本・税大ジャーナル17号52頁)」といったロジックでは必ずしもない。



なお,2012年1月1日以後に行われる店頭取引については,租税特別措置法41条の14により,取引所デリバティブ取引と同様の申告分離課税になった。同法は,事業所得・事業所得・雑所得のいかんにかかわらず等しく適用される。国税庁のタックスアンサー

2012/06/24

FATCAについて日米当局共同声明

6月21日付けで,日米当局が共同声明を出した。日本の金融機関が直接にIRSに登録するやり方と,日米租税条約上の情報交換とを,組み合わせる枠組だ。

2012年2月に米国が仏独伊西英との間で結んでいた枠組(Model I)では,もっぱら条約上の情報交換条項によっており,金融機関はそれぞれの居住地国当局に情報提供し,当局間で自動的情報交換がされることになっていた。これに対し,今回の日米枠組(Model II)は,直接登録と情報交換の組み合わせになっている。 要するに・・・
  • 日本の金融機関は,IRSに登録して,米国口座をIRSに毎年報告し,非協力口座の総数と総額をIRSに毎年報告する。
  • 条約の情報交換条項を利用し,IRSからのグループ要請(group request)に基づき,日本の当局は,非協力口座に関する追加情報を提供する。
  • 上の登録をすれば,個々の金融機関がFFI契約をIRSと直接結ばなくてもよい。
  • 適用外になる金融機関を特定する(特定の年金基金など)。
  • IRSに登録して,報告していれば,米国側はFATCA上の源泉徴収を免除する。
同日には,米国とスイスの共同声明が出されている。日米枠組と異なり,非協力口座に関する情報を金融機関が直接にIRSに提供する。

2012/06/20

Global ForumがG20に報告書を提出

メキシコのLos Cabosで,G20首脳に報告書を提出した。これを受けて,G20首脳宣言には,次のパラグラフが盛り込まれている。
48.租税分野では,我々は,透明性及び包括的な情報交換を強化するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は,グローバル・フォーラムにより報告さ れた進ちょくを賞賛し,すべての国,特に,枠組みが整っておらず,現時点ではフェーズ2への資格を有していない13の国・地域に対し,完全に基準を遵守し レビューの過程において特定された提言を実施するよう促す。我々は,グローバル・フォーラムが情報交換の実践の有効性の審査を早急に開始し,我々及び我々 の財務大臣に対し報告することを期待する。我々は,我々がその実施において模範を示し続ける,自動的な情報交換の実践に関するOECDの報告書を歓迎す る。我々は,各国に対し,適切な場合に,この普及しつつある実践に参加するよう求め,すべての国・地域が多国間執行共助条約に署名するよう強く奨励する。 我々はまた,オスロ対話のローマ会合の結果を含め,不法な資金の流れへの対処に係る省庁間の協力を向上させる努力を歓迎する。我々は,所得侵食と利益移転 を防ぐ必要性を再確認し,この分野におけるOECDの継続中の作業を関心をもってフォローする。
この和訳は外務省のサイトによる

2012/06/15

東京高裁平成22・12・16訟務月報57・4・864(相続税,制限納税義務者,債務控除)

Xさん(米国籍,ブラジル居住者)が,Aさんの死亡に伴い財産を相続。Aは死亡前にB社の代表取締役であった。B社の更生手続における管財人が,Aに対する損害賠償請求権を保全するため,Aが日本国内に所有する不動産を仮差押え。

損害賠償請求権
Aさん←―――B社(管財人)
不動産
↓相続
Xさん

争点は,この損害賠償債務が相続税法13条2項2号の債務に該当し,債務控除が可能か。
 相続又は遺贈により財産を取得した者が第一条の三第三号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものについては、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
 その財産に係る公租公課
 その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
 前二号に掲げる債務を除くほか、その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
 その財産に関する贈与の義務
 前各号に掲げる債務を除くほか、被相続人が死亡の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有していた場合においては、当該営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務
東京地裁は,
同項の前記趣旨や,同項が控除される債務を限定列挙していることに照らして,仮差押えがされた場合における被保全債権に係る債務が同項2号に該当すると解することはできない
とした。ここにいう「前記趣旨」とは,
同法が制限納税義務者の課税財産を同法施行地である国内の財産に限定した(同法2条2項)ことに対応して,その差し引くべき債務もまたその財産に関するもので,その者が支払うべきもののみに限定するという点
にある。東京高裁もこの判示部分を維持し,債務控除を認めなかった。上告及び上告受理申立て中。

本格的にはジュリスト掲載予定の浅妻評釈を待ちたいが,とりあえずコメントは3点。
  • 2号を限定列挙であると解する判旨が十分に論証されているかについては,検討の余地がある。仮差押えでなく差押えの場合に射程が及ぶか,という点に関係する。
  • 債務が人に対するものであるのにかかわらず,物だけとの関係で地理的切り分けを行う立法は,いかがなものか。国際的情報交換の充実を前提とすれば,国外財産と国内財産の比率で按分する制度との優劣を検討すべき。もっとも,国内と国外で分ける以上,生前に弁済していれば国内所在の積極財産がそれだけ減ったはずだったという不満は残るだろう。
  • 現在列挙されている担保権でいいのか。そもそも担保権に着目するやり方自体,合理的か。関連して,被担保債権が担保物の時価を超える場合の扱いはどうなるか。



2012/06/07

OECDが移転価格との関係で無形資産の中間討議ドラフトを公表

このサイトからダウンロード可能。パブリック・コメントの締切は2012年9月14日。

AnnexのExample 9で,多国籍企業グループの親会社の名前がShuyonaになっている。「主要な」会社というシャレだろう。Working Party 6は,他にも,Premiere, Primero, Primair, Primarni, Ilcha, Foersta, Birnincil, Zhu, Prathamika, Osnovni, Pervichnyi, という具合に,名前を繰り出す。