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2026/09/18

国際租税法第5版の刊行

このたび、増井良啓・宮崎裕子 『国際租税法』第5版を、東大出版会から刊行していただきました。

第4版を刊行したのは2019年でした。それから7年の間に、国際課税をめぐる環境は大きく変わりました。OECD/G20 BEPS包摂的枠組みの「2つの柱」をめぐる議論が進み、とりわけグローバル・ミニマム課税は各国の国内法として実施される段階に入りました。他方で、こうした新しい動きだけを追えばよいわけではありません。国内法と租税条約の入り組んだ関係を、具体的な取引に即して見通しよく理解することは、国際租税法を学ぶうえで今も変わらないコアだと考えています。

2026/09/15

CUHK–KCL Annual Conference on Tax, Trade, and Investment Law

 2026年9月10日と11日、香港中文大学(CUHK)とKing’s College Londonの合同研究会に出席してきた。Leopoldo Parada さん(KCL)のお誘いによる。会合の正式名称はThe CUHK–KCL Annual Conference on Tax, Trade, and Investment Lawだ。日本からは福永有夏教授(早稲田大学)が参加されていた。

プログラムは、Day1に国際課税のパネルが2本、通商・投資のパネルが1本ずつ。Day2は、いくつかの平行セッションに分かれて、ペーパーのプレゼンと質疑応答があった。ぼくは、Beyond Double Taxation: The Making of the 1970 Japan-Korea Tax Treaty in Historical Contextという題目で、1970年日韓租税条約の締結過程から得られる示唆を議論した。Noam Nokedさん(CUHK),  Brian Galleさん (UC Berkeley), Doron Narotzkiさん (Akron)などから有益なインプットをもらった。

2026/08/11

Musgraveは韓国で何を助言したのか

1.二度の邂逅と最近の発見

Richard A. Musgrave教授(1910–2007)には、二度、お目にかかったことがある。

一度目は1992年、私が米国ハーバード大学のInternational Tax Programにいたときだった。Musgrave教授がゲストとしてクラスにお越しになり、その場には金子宏先生も出席されていた。二度目は1997年、京都で開催された第53回国際財政学会(IIPF)大会だ。たまたまMusgrave教授がお一人で歩いていらっしゃるところに出会い、「ハーバードで先生のお話をうかがいました」とご挨拶したところ、にこやかに応対してくださった。

2026/06/17

最判令和8年6月16日、外貨間取引為替差益事件

最高裁の第三小法廷が、令和5年(行ヒ)第366号 所得税更正処分等取消請求事件につき、弁論を開いたうえで、上告棄却。ここから判決文を読める。

1.事案と上告理由

日本の居住者が、スイス所在の外国金融機関にある自己名義の預金口座へ合計105億円を送金、この外国金融機関に資産運用を一任した。この外国金融機関は、運用対象資産に属する外国通貨を用いて、他の種類の外国通貨や外国通貨建て有価証券を取得する取引を行った。

上告理由は、外国通貨により他の種類の外国通貨または同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引を行っても、為替変動のリスクが依然として存在し、為替差益は確定しない、それゆえ「収入すべき金額」(所得税法36条1項)があるとはいえない、というもの。

2.判旨の概要

最高裁は、上告を棄却した。判旨をたどると、まず、権利確定基準を確認したうえで、

所得税法は、所得の把握についても本邦通貨の額面価格の単位を基準に行うことを予定している

と判示する。それを踏まえて、次のように述べる(テクストの色付けは引用者による)。

以上を踏まえると、ある外国通貨により他の種類の外国通貨又は同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引が行われた場合、変動する外国為替の売買相場の下で本邦通貨との関係において変動していたある外国通貨の経済的価値が、上記取引により他の種類の外国通貨又は有価証券の経済的価値をもって固定化され、他の種類の外国通貨又は有価証券の経済的価値が流入することによって、ある外国通貨の取得時の経済的価値を上回る部分が実現した利得となるとともに、上記取引時に他の種類の外国通貨又は上記有価証券に係る権利が収入の原因となる権利として確定することから、その時点における他の種類の外国通貨の金額又は有価証券の価額の円換算額(所得税法57条の3第1項参照)を同法36条1項にいう「収入すべき金額」とすべきこととなる。

この判示を受けて、次の結論を導いた。

そうすると、居住者が、外国通貨により他の種類の外国通貨又は同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引を行った場合、上記取引を行った日の属する年分の所得の金額の計算上、上記取引時における他の種類の外国通貨の金額又は有価証券の価額の円換算額が「収入すべき金額」となると解するのが相当である。そして、上記円換算額から支払に用いた外国通貨を得るのに要した金額等を控除した金額が、上記取引に係る所得の金額となるというべきである。

3.補足意見

林道晴裁判官の補足意見は、法廷意見に賛同しつつ、補足して次のように述べ、立法による対応を促している。

しかし、それは飽くまでも為替差損益に係る課税について明文の規定がなく、外国通貨によって他の種類の外国通貨や同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引に係る所得の把握についても本邦通貨の額面価格の単位を基準に行うほかない現行法を前提とする解釈論にとどまる。外国通貨建ての投資や国際取引が日常的に活発に行われている現状において、所得の把握を常に本邦通貨の額面価格の単位を基準に行うこと自体に問題がないかも含めて、外貨建取引に係る所得税の課税の在り方を改めて検討すべき時期に来ていると考えられる。仮に、所得の把握を常に本邦通貨の額面価格の単位を基準に行う方針を維持するとしても、為替差益に係る所得の実現時期や、外貨建取引に係る「収入すべき金額」、必要経費等について定める規定を設けることなく、これを所得税法36条1項等の一般的な解釈適用に委ね、外貨建取引が行われた場合の円換算額の計算規定にとどまる同法57条の3を設けるにとどめていることは、租税法律主義の観点から望ましい状況とは考えられないし、日本の租税政策に対する国際社会からの信頼を損なう現象が出てくる可能性も否定できない。

2026/06/04

ミュンヘン会合の成果が公表されていた(続き)

 4部構成になっているといったが、特集全体の相互関係は、次のように読み取ることができる。

  • Part 1 は「国際課税の一般原理」を問う
  • Part 2 は「どの国が事業所得に課税すべきか」を問う
  • Part 3 は「所得課税以外の代替的財源は何か」を問う
  • Part 4 は「どの形式で協力を実現するか」を問う

すなわち、Part 1 は「国際課税秩序を正当化する原理は何か」を扱う。Riedel は、各国の法人税政策が国境を越える外部性を生むため、国内厚生と国際厚生は一致しないという経済学的出発点を与える。これに対し、Risse and Meyer は、国民所得は各国が自由に処分できる純粋な国内的産物ではなく、国際的な所有権秩序・市場秩序の相互承認に依存するという哲学的基礎を与える。この二つを軸に、Hebous and KlemmがAI課税を論じ、HeyがSTPが国際課税秩序の一般原理になりうるかを批判的に検討し、Bakerが人権・納税者権利という制約条件を加える。

Part 2 は、事業所得課税の課税権配分に関する2論文。Masui 論文が「居住地課税の後退」を論じ、Titus 論文が「市場国・途上国課税権の要求」を論じる。なお、研究会合にはもう一本、生産地課税に関する論文ドラフトが提出されていたが、ここには収録されていない。

Part 3 は、「法人所得課税だけで国際課税秩序を構成できるのか」という問題に進む。Schön の関税論文は、関税を単なる通商政策ではなく、国際課税秩序の一部として再配置する。Xu のVAT・間接税論文は、国際課税論の中心が法人税に偏っていることを批判し、VAT、デジタル取引税、気候関連賦課金を統合的に考えるべきだとする。Báez Moreno の純資産税論文は、富裕税復活論を検討するが、制度設計と執行上の構造的困難を強調する。

Part 4 は「どの形式で国際課税秩序を維持するのか」を扱う。Kofler 論文は、外国企業・外国人・外国産品に対する無差別原則を、租税条約、通商法、投資法、EU法の交錯点で検討する。van Weeghel 論文は、租税条約の役割を正面から再検討する。最後の Philip Baker の多国間協力論文は、OECD、UN、地域的枠組みの将来を見渡し、2025年以後の国際協力の不確実性を総括する。

*****

複数の異なる論者がそれぞれの主張を投げかけているだけに、特集全体から一義的な政策の方向性を読み取ることは困難だ。それでも、全体を通覧して、次のようなメッセージを感じ取ることができた。
  • 効率性と正義の対立あるいは補完
  • 包括的多国間主義と控えめな制度部品論の対立
  • 先進国中心秩序とGlobal South要求の対立
もっと読み込めば、building blocksをどう組み立てるかについては、さらにいろんな読みが可能だろう。

ぼくの継続的問題関心からは、tax mixにおけるVATの役割が大事だと思う。この点については、2つの論文が同じ方向を向いている。Masui論文は「居住地ベース法人課税が弱まるなら、次に何が中心になるか」という問いから、VAT・仕向地ベース消費課税の比重上昇のシナリオを描く。Xu論文は「国際課税論が法人所得税に偏りすぎている」という問いから、VAT・間接税を中心に据えるべきだとする。出発点は違うが、到達点はかなり近い。つまり、両者は「法人所得税中心、居住地vs.源泉地の国際課税」から、「VATを中核とする仕向地ベースのtax mix」への重心移動を示唆する。

これに対し、Riedel論文とTitus論文は、法人所得税またはDSTを通じて、市場国・利用者所在地国にヨリ多くの課税権を配分する方向だ。また、Schön論文とKofler論文は、関税、DBCFT、国境調整、VATとの関係を通じて、仕向地ベース課税の法的・制度的限界を検討する。もし出席できていれば、こういったあたりの相互関係を突っ込んで議論できたかもしれない。

ミュンヘン会合の成果が公表されていた

2025年12月、ミュンヘンで「Building Blocks of an International Tax Order」という研究会合が開かれた。二日間にわたって、12本の論文がプレゼンされ、それに対するコメントが展開された。ぼくは体調不良で行けなかったのだが、提出していた論文を公刊物に加えてもらった。それが、Bulletin for International Taxation Vol.80, Number 4/5, 2026の特集。

特集の趣旨を一言でいえば、断片化した世界において、新しい税制選択がなされる際においても有効に機能しうる国際課税設計の個別要素を検討してみよう、ということだ。会合の招待状には、こう書いてあった。

If a decade ago we wondered about how to further integrate tax international tax rules, today we wonder whether such cooperation can continue even on a bilateral level. In a spirit of some humility, therefore, this conference seeks not to suggest an alternative multilateral path forward. Rather, as we wait upon events, the intent is to explore discrete pieces of international tax architecture that might prove effective as new tax policy choices are made in a more fragmented world.

この文章を引用して序文が特集の趣旨を説明している。それに続く本体は4部構成。以下、149-151頁のabstractをもとに、各論文を概観しておこう。

Part 1: General Principles of International Taxation

Nadine Riedel, “National versus International Welfare”

法人税政策は、根本的に国際的な環境の中で作用しており、各国政府がほとんど内部化しないクロスボーダー外部性を生み出す。本稿は、国際法人課税の経済学的基礎を概観し、近年のOECD/G20改革を評価したうえで、実証的不確実性と地政学的制約の下では、広範な構造的再設計を追求するよりも、既存制度を統合・強化することを主張する。

Shafik Hebous and Alexander Klemm, “Can Siri and Alexa Pay Taxes?”

AIが経済を変容させるにつれて、AIに課税すべきだという主張が勢いを増している。しかし、AIそれ自体を標的とする課税は非効率をもたらすおそれがあり、その負担は最終的には人々に帰着する。本稿は、AI固有の税は適切ではないと論じ、むしろ、イノベーションを阻害することなく、デジタル時代のレントを捕捉し、国境を越える課題に対応し、衡平を保護する税制を重視する。

Mathias Risse and Marco Meyer, “International Tax Justice: The Independence Fallacy and the Myth of Freely Disposable National Income”

各国はしばしば、国民所得を自由に処分できるものとして扱う。著者らはこの前提を “Independence Fallacy” と呼ぶ。相互に結びついた経済においては、所得は、国境を越えて財産制度が承認されることに依存しており、そこからグローバルな分配的正義の義務が生じる。これらの義務は、財政主権を制約し、国際租税協調を支持する。

Johanna Hey, “The Single Tax Principle”

Single tax principle(STP)は、国際租税法において最も議論の多い考え方の一つであり続けている。本稿は、その内容、確立した諸原則との関係、および実務上の含意を検討し、STPから導かれる解決策、とりわけグローバル・ミニマム課税が、分断化した国際租税環境の中で存続可能であり続けるかを、EUの経験からの示唆も踏まえて探究する。

Daniel Shaviro, “Once for Good Measure? Comment on Johanna Hey’s ‘The Single Tax Principle’”

本コメントは、Johanna HeyによるSTP批判に応答する。

Philip Baker, “The Missing Building Block: The Promotion of Human Rights and Taxpayers’ Rights”

本稿は、人権および納税者権利の尊重と促進が、正統性ある国際租税秩序にとって不可欠な構成要素であると主張する。本稿は、この二つの権利枠組みを区別し、それらの法的および実際上の重要性を説明し、国際課税設計の中にこれらを組み込むことが、tax morale、適法性および制度的安定性を維持するうえで重要であることを示す。

Part 2: Taxation of Business Income

Yoshihiro Masui, “The Role of Residence-Based Taxation in Business Income Taxation”

本稿は、事業所得課税における居住地ベース課税の役割を評価する。その重要性は、法人居住地の多義性、居住地の選択可能性の増大、および個人株主所得を正確に課税することの困難性により、低下していると論じる。本稿は、居住地ベース課税の役割が縮小した将来について、三つのシナリオを示す。

Afton Titus, “Digital Services in Africa: Rebalancing Business Income Taxation through Inter-Nation Equity”

本稿は、アフリカにおけるOECDのPillar Oneと国内デジタルサービス税(DST)を比較し、公平性、中立性、簡素性および執行可能性の観点から評価する。アフリカのDSTは、国家間衡平その他の政策原則に照らして良好に機能する一方、Pillar Oneの評価は低い。本稿は、開発途上国の生存にかかわる財政不足が解消されるまでは、先進国はDSTを制約することを避けるべきであると結論づける。

Part 3: Other Sources of Public Revenue 

Wolfgang Schön, “Tariffs and the International Tax Order”

関税は、2025年に、現米国政権が多様な目的のために広範な関税を用いたことにより、国際課税の世界において顕著な特徴となった。本稿の主眼は、関税の役割を、間接税と直接税という二つの異なる文脈において定義することにある。消費課税の観点から見ると、関税は輸入品に対する差別的な税であり、無差別という概念そのものとその帰結に根本的な挑戦を突きつける。所得課税の観点から見ると、関税は、国境を越える物品販売から生じる利益に対する源泉徴収税の代替物として概念化できる。この出発点から、原産地国および仕向地国の政策選択肢が説明される。

Yan Xu, “VAT and Indirect Taxes: Rethinking International Taxation”

本稿は、VAT、デジタル取引税および気候関連賦課金を検討し、断片化したルールの下でデジタル化と脱炭素化により形づくられる経済における、それらの相互作用を明らかにする。本稿は、これらの間接税を国際租税論議の中心へもってくるべきであり、UN主導でOECDの知見を取り入れた多国間枠組みの中で、別個の縦割り領域として扱うのではなく、体系的に調整すべきであると論じる。

Andrés Báez Moreno, “Can Failed Taxes Be Revived through Modest Innovation? On the New Proposals for Net Wealth Taxes”

本稿は、純資産税に関する近時の提案が、伝統的な富裕税についてよく知られた失敗を真に克服しているのかを批判的に検討する。経済状況および透明性をめぐる条件の変化を認めつつも、「今回は違う」という楽観的主張に疑問を呈し、多くの制度設計上および執行上の問題は構造的なものであり、新たな実務上および法的な課題を生じさせうると論じる。

Part 4: Modes of Cooperation

Georg Kofler, “Non-Discrimination of Foreign Firms, Persons and Products”

“Building Blocks of an International Tax Order” という会議テーマの文脈において、本稿は、直接税における国際的な無差別基準の弱点と、なお残る存続可能性を検討する。租税条約、通商法および投資法を素材として、主として欧州の観点から、体系的な概観と現代的論点の選択的検討を通じて、保護の浸食を跡づける。

Robert J. Danon, “The Rise of Tax Treaty Supremacy: The Case of Non-Discrimination”

本コメントは、Georg Kofler教授の “Non-Discrimination of Foreign Firms, Persons and Products”に応答する。

Stef van Weeghel, “The Role of Tax Treaties”

主としてOECDモデルおよびUNモデルによって形づくられてきた二国間および多国間租税条約の拡大は、国際的な制度調整、貿易および投資を促進してきた。しかし、特に開発途上国にとっての公平性をめぐる懸念は残っている。本稿は、租税条約の影響、その批判、および、衡平性と効率性を改善するための、脱政治化され柔軟なモデル条約の可能性を検討する。

Will Morris, “The ‘Modest’ Tax Treaty: A Comment on Stef van Weeghel’s ‘The Role of Tax Treaties’”

本コメントは、租税条約を壮大な制度ではなく契約として位置づけ、その設計における控えめさと現実主義を強調する。

Philip Baker, “Building Blocks of an International Tax Order: Perspectives for Multilateral Cooperation”

本稿は、OECD、UNおよび地域的イニシアティブにおける展開を概観し、改革を主導する見通しを評価する。

2026/05/20

G7財務大臣・中央銀行総裁共同声明のパラ13

2026年5月18-19日に、パリで、G7財務大臣・中央銀行総裁合同会議。共同声明のパラ13が、国際課税について以下のように述べた(財務省のこのサイトの仮訳による)。

以下引用************

金融安定を維持する均衡の取れた強固で幅広い成長の支援

国際課税

13. 我々は、OECD/G20 包摂的枠組み(IF)におけるグローバル・ミニマム課税との共存に係るパッケージを歓迎し、確実性と安定性の確保、成長の促進、公平な競争条件の確保、課税主権の保持、及び税源浸食と利益移転(BEPS)からの課税ベースの保護という我々の共通のコミットメントを強化する観点から、その実施の重要性に留意する。この成功に立脚し、我々はデジタル経済への課税に関する建設的な対話に取り組んでいる。これらの原則を考慮に入れつつ、我々は、この対話が、デジタル経済が既存の国際課税システムにもたらす課題についての共通理解を醸成するとともに、そのような課題にどのように効果的に対処し得るかを検討することを期待する。我々は国際協力を重視し、IF が、これまでの作業から得られた教訓を活用しつつ、デジタル経済への課税に関する深度ある作業を進めることを奨励し、支持する。我々は、デジタル経済が既存の国際課税システムにもたらす課題について、IF メンバーがその有効かつ持続可能な解決策を評価できるよう、2026 年末までに、それらの課題への共通理解を特定する IF の作業の進捗に関し、OECDの報告を期待する。

***********引用終わり

これを要するに、G7からIFに対して、

  • Globalミニマム課税のSide-by-Side packageを歓迎する
  • デジタル経済への課税の作業を支持し、2026年末までの報告を期待する
というメッセージだ。

なお、国内資金動員(DRM)に係るG7開発大臣・財務大臣共同宣言も出されており、そこでは、2026年3月2日と3日に東京で開催されたPCT Tax and Development Conferenceに言及している。

2026/04/07

Open AIの政策提言

2026年4月7日 6:04付け日経の記事で,「OpenAIが政策提言,AIで業務自動化なら課税 週4日勤務も推奨」とあった.もとの文書は,"Industrial Policy for the Intelligence Age: Ideas to Keep People First"と題するもの.

さっそくに,ChatGPTに「整理せよ」と指示したら,いくつかテクストを生成してきた.その中には,次のテクストが含まれていた.

租税法の観点から読むと、核心は三つあります。第一に、AIで税源構成が「労働」から「資本・企業利潤」へずれるという認識。第二に、それに対応して課税ベースを資本側へ組み替える必要があるという提案。第三に、税だけではなく、公的富裕基金によってAI利得の分配参加を制度化しようとする点です。つまり、これは単なる「ロボット税」論ではなく、AI時代の再分配国家をどう再設計するかという問題提起として読むのが正確です。

主張自体はさほど新しいわけではないが,この時期にOpen AI が提示した,というところにインパクトがあるのだろう.

現物にざっと目を通してみると,なかなか興味深い文書で,いろいろ突っ込みどころがある.国際課税の観点からは,文書の5頁に

They also focus on the United States as a starting point, but the conversation—and the solutions—must ultimately be global.

と書いてあるところが気になる.文字通り,米国を出発点としつつ,グローバルな対話と解決を考える,という方向だ.たしかに,AI利用は国境を越えるので,グローバルな議論は不可欠だ.

そうすると,次のような論点が大事だろう.

  • 資本課税に関する現在の国際課税ルール改革論にどう接続していくか.
  • 停滞しているPillar Oneのリブートとも関連するか.
  • 公的富裕基金(Public Wealth Fund)は,AIによって生じる資本利得に対して市民を直接参加させるしくみであるところ,これに対する課税権分配ルールのあり方は現行ルールでいいのか.
いずれも,議論すべき点が多そうだ.かつて,2018年度から3回連続で「AIと税制」というゼミを開講した(これこれこれ).再開すべき時期にきているのかも.

2026/03/15

IFA/APAC 2026年東京大会,司会者を公表

 2026年5月に,東京で,国際租税協会(Internatonal Fiscal Association, IFA)の研究集会を開催します.統一論題をNavigating Uncertainty: The Future of Multilateral Cooperationとして,国際課税の重要課題について,各国の識者がパネルを組んで議論するという企画です.このたび,各セッションの司会者が公表されました.詳細はこれで,その骨子を下記に転記しておきます.アジア太平洋・米州・欧州など各国からのパネリストについては,追って公表予定.

★IFA日本支部会員におかれては,参加にあたり,優待の早期割引が利用できます.国際課税に関心があるけれど未だ会員になっていない,という方におかれては,この機会に会員になられることをご検討ください.ちなみに,IFA日本支部とはこんなところです.

Monday, May 11, 2026  

YIN Session “Future perspective for young tax professionals in APAC”

Moderator: Mr. Ignacio Gepp (Chile, Chair of IFA/YIN)


Keynote Speech “International tax policy of Japan”

Mr. Tetsuya Utamura (Director, International Tax Policy, Tax Bureau, Ministry of Finance of Japan)


Session 1 “Fragmented futures: Global taxation and supply chains in transition”

Moderator: Ms. Natalia Quiñones (Colombia, President of IFA)


Keynote Speech “Japan NTA’s leadership in multilateral cooperation”

Mr. Kazuhiko Takeda (Deputy Commissioner (International Affairs), National Tax Agency of Japan)


Session 2 “De-globalisation and the reassertion of tax sovereignty”

Moderator: Prof. Richard Vann (Australia)


Session 3 “The evolving landscape of transfer pricing”

Moderator: Ms. Ana Claudia Akie Utumi (Brazil, Chair of IFA/WIN)


Tuesday, 12 May 2026

Session 4 “Wealth without borders: Tax challenges of High Net-Worth Individuals”

 Moderator: Prof. Masao Yoshimura (Japan)


Session 5 “Tax dispute resolution in a changing world”

 Moderator: Prof. Mitsuhiro Honda (Japan) 


Session 6 “The implications of digitalisation for the VAT system”

 Moderator: Prof. Yumi Nishiyama (Japan) 


Session 7 “Hot topics in Asian taxation: Emerging issues and regional developments”

 Moderator: Mr. Ichwan Sukardi (Indonesia, Chair of IFA/APAC)

2026/02/21

LEARNING RESOURCES, INC., ET AL. v. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL.

トランプ相互関税を違法とする米国連邦最高裁判決がでた

そこでさっそく,「この最高裁判決に関する専門誌の論評を調査せよ」とChatGPTに命じた.

すると,2026年2月20日前後に出た「専門的な論評」(法務・通商実務・判例分析・政策分析寄り)を横断して,次のテクストが生成された.以下,青字がChatGPTの生成したテクスト.

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結論から言うと、専門誌・実務家向け論評の主要論点は、(1) 判決理由の精密な読み分け(とくに major questions doctrine の位置づけ)、(2) 還付実務(refunds)の設計と権利保全、(3) 代替法源(Section 122/301/232等)による再構築可能性、(4) 実効面では「不確実性の継続」に収斂しています。(最高裁判所)

まず、最高裁判決そのものの最低限の確認です。連邦最高裁は Learning Resources, Inc. v. Trump で「IEEPAは大統領に関税賦課権限を与えていない」と判示し、V.O.S. Selections 側の判決を是認しました(6-3)。判決文シラバスでもその点が明示されています。(最高裁判所)

そのうえで、他の専門的論評をみると、ポイントがいくつかあります。

  1. 判決理由の「多数意見」と「プルーラリティ」を区別する論評(SCOTUSblog)
    SCOTUSblog の詳細分析は、Roberts意見のうち「IEEPAの文理解釈+憲法的背景による結論」(IEEPAは関税法ではない)が6名の法廷意見である一方、major questions doctrine を前面に出す部分は Roberts/Gorsuch/Barrett の3名のみで、法廷意見(majority holding)ではなくプルーラリティにとどまる、と明確に整理しています。これは実務・学説上かなり重要な読み分けです。(SCOTUSblog)
    同じSCOTUSblogの速報でも、Kavanaugh反対意見が「今後の大統領の関税権限を大きく制約しない可能性(他の制定法がある)」と述べている点が強調されています。(SCOTUSblog)

  2. 実務家向け通商・税務論評は「還付(refund)実務」を中心に据える
    Thomson Reuters Tax & Accounting は、企業税務・通商コンプライアンスの観点から、この判決を「大規模還付機会(最大1750億ドル規模)」として位置づけ、判決理由そのものよりも、どの輸入申告が対象か、どう計算・請求するか、期限管理をどうするかという実務課題を前面に出しています。特に、対象エントリーの特定、金額算定、抗議(protests)や post-summary corrections の検討、時効・期限管理の重要性を整理している点が実務色の強い特徴です。(tax.thomsonreuters.com)

Holland & Knight も同様に、最高裁は還付の要否・手続を具体的に指示していないため、権利保全のために記録整理と行政手続(PSC、protest、liquidation延長等)を早期に進めるべきだと整理しています。加えて、判決理由の内部構造(major questions を使ったのは3名、Kaganらは通常の文理解釈中心)まで比較的丁寧に要約しており、判例解説+実務対応のハイブリッド型です。(ホランド・アンド・ナイト)

Norton Rose Fulbright は、還付論点をさらに細かく扱い、(a) CIT(国際貿易裁判所)の全国的差止めの射程、(b) 不法徴収(illegal exaction)的整理、(c) reliquidation の可能性、(d) Customs の今後のガイダンス、(e) 「輸入者記録上の importer of record」にしか政府還付が直接行かないため、私法上の契約紛争(だれが最終的に返金を受けるか)が増える可能性、まで踏み込んでいます。これは The Economist の「refundsはmessになり得る」という指摘を、実務的に具体化した論評と言えます。(nortonrosefulbright.com)

  1. 代替法源(Section 122/301/232等)に関する評価は、概ね「再構築可能だが、機動性は落ちる」で一致
    Holland & Knight は、Section 122(上限15%、150日)、Section 301、Section 232、Section 201、Section 338 などの代替法源を列挙し、それぞれの法的要件や調査手続の必要性を示したうえで、政権がIEEPAの代替として組み合わせるシナリオを解説しています。特に Section 122 の時間制限と、150日の間に301調査を走らせる構図は、The Economist の分析と整合的です。(ホランド・アンド・ナイト)
    Thomson Reuters も同様に、今後は Section 232/301/122、AD/CVD、立法対応などへ政策手段がシフトすると整理しています。(tax.thomsonreuters.com)

  2. 政策分析・国際関係系の専門論評は「不確実性の持続」と対外交渉への影響を強調
    Chatham House の専門家コメントは、法理そのものよりも、北米(USMCA)や各国との交渉実務に与える影響を重視しています。Heather Hurlburt は、判決が IEEPA 系の包括関税を大きく削ったとしても、232/301ベースの関税は残り、還付も命じていないため、実効面での変化は限定されうると指摘しています。(チャタムハウス)
    また Julián Ventura は、Section 122 による新たな10%関税の示唆と、対象・適用・実施の細目が未確定であることから、「uncertainty will continue to be the name of the game」と評価し、貿易相手国側の対応困難性を強調しています。(チャタムハウス)

  3. データ分析系(Global Trade Alert)は「法理」ではなく「関税水準の量的インパクト」を提示
    Global Trade Alert の分析は、IEEPA関税が剥落すると米国の輸入加重平均関税率が 15.4% から 8.3% に低下し、7.1ポイント下がると定量化しています。また、何が落ちて何が残るか(IEEPAのベース関税・上乗せ・緊急EOは無効、232/301/MFNは残る)を明示しており、政策効果の即時測定として有用です。(globaltradealert.org)
    これは The Economist の「実効関税率が約半分に」という記述と整合的ですが、GTAの方が「どの法源ベースの関税が残存するか」をより構造的に示しています。(globaltradealert.org)

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(増井のコメントに戻る)

なるほど.上記で引用されたリンクは実在し,確認できた.

そこで次に,ChatGPTのプロンプトをそのままフォローして,上のまとめを租税法・通商法の視点から,①判決法理,②救済実務,③比較法の順に整理させた.①②③の3項目は,ChatGPTのおすすめをそのまま(=無反省に)フォローしただけのもの.

すると,次のテクストが生成された.

************

本件の出発点は明確です。最高裁は Learning Resources v. Trump で、「IEEPA(International Emergency Economic Powers Act)は大統領に関税賦課権限を与えない」と判示しました。シラバス上も、争点はまさに「IEEPAが関税を許容するか」であり、結論は否定です。

  1. Delegation / Major Questions / Nondelegation の論点整理

この判決で最も重要なのは、「何が法廷意見(majority holding)で、何がそうでないか」を切り分けることです。SCOTUSblog の整理が有用で、6名が参加した法廷意見部分(Parts I, II-A-1, II-B)は、IEEPAの文言・構造・憲法的背景を用いて、IEEPAは関税を授権していないと解しています。他方、major questions doctrine を用いた部分(Parts II-A-2, III)は Roberts/Gorsuch/Barrett の3名のみで、プルーラリティにとどまります。つまり、「major questions で勝った事件」ではあるが、同時に「文理解釈で6名が一致した事件」でもある、という二層構造です。

法廷意見(6名)レベルのコアは、かなり古典的かつ租税法的です。最高裁シラバスは、(a) 憲法上、関税は Article I の taxing power(Congress)に属すること、(b) IEEPAの列挙権限には tariffs/duties の明示がないこと、(c) “regulate . . . importation” を「課税権限」まで含むと読むのは不自然であること、(d) 政府も「regulate」が「tax」を意味した他の制定法例を示せなかったこと、を並べています。さらに “regulate exportation” まで課税を含む読みになりかねず、輸出税禁止との緊張も指摘しています。これは、授権立法の解釈として「税・関税は明示的授権を要する」という強いシグナルです。

そのうえで、Roberts/Gorsuch/Barrett の3名は major questions doctrine を前面に出し、「非常に大きな経済・政治的重要性を持つ権限主張には clear congressional authorization が必要」「緊急事態法制だからといって例外はない」「外交・通商文脈だからといって例外はない」と述べます。ここは今後の行政法・通商法訴訟への波及可能性が大きい。ただし、Kaganら3名は結論には賛成しつつ、「通常の法解釈で足りる。major questions の“thumb on the scale”は不要」と距離を置いています。したがって、本判決の将来射程を読む際は、「IEEPAの解釈に関する先例価値」と「major questions 拡張の先例価値」を分けて扱う必要があります。

Kavanaugh反対意見(Thomas, Alito joined)は、別の意味で重要です。Reutersが要約する通り、反対意見は「今回の判決は大統領の関税権限全般を大きく制約するとは限らない。単に IEEPA という“間違った statutory box”を使っただけだ」と見る。これは、判決の制度的意味を「大統領通商政策の全面否定」ではなく「IEEPAの否定」に限定する読みです。実務上は、この反対意見の評価がそのまま次の争点(122/232/301等)に接続します。

  1. 関税還付の法的性質と実務(illegal exaction / reliquidation / protest)

The Economist の「refundはmessになりうる」という指摘は正確ですが、専門実務論評を読むと、その“mess”の中身はかなり具体的です。SCOTUSblog は、最高裁の判断が解決したのは「授権の有無」であり、refund mechanism(還付の仕組み)や restitution(返還命令)、行政上の回収手続には触れていない点を強調しています。しかも返金の明示的議論は主として Kavanaugh の反対意見側に現れる。つまり、救済は「次段階の訴訟・行政実務」に委ねられている、という構造です。

Norton Rose Fulbright の論評は、この救済論点を最も実務的に分解しています。そこでは、CIT(Court of International Trade)の全国的差止めと、違法関税の徴収金を政府が保持できないという違法徴収(illegal exaction)的な整理を前提に、還付は原則として視野に入るが、具体的な経路は CIT と Customs(CBP)の運用次第だとされます。さらに、reliquidation(再清算)命令の可能性、CBPガイダンス(Federal Register やCSMS)による実務設計、そして未清算 entry と既清算 entry の手続分岐(PSC / protest)が指摘されています。これは、救済法の問題が、行政手続・税関実務・時間管理の問題へ直ちに変換されることを示しています。

この点は、租税法研究者の目で見ると興味深いです。違法課税の返還という一見単純な命題が、通商実務では「誰に返すのか(法的納税者/importer of record)」「どう請求するのか(PSC / protest / CIT complaint)」「いつまでに請求するのか(liquidation 状態・時効・不服申立期間)」「誰が最終的に経済的利益を受けるのか(価格転嫁・契約条項)」という複数の層に分かれます。Norton Rose Fulbright は、政府還付の名宛人は importer of record に限られ、輸入者に償還した第三者には政府から直接還付されないため、契約解釈・私法紛争が増えると警告しています。

Holland & Knight も同様に、判決は refund の要否・運用を決着しておらず、企業側は権利保全(preservation steps)を先行させるべきだと位置づけます。実務家論評の共通トーンは、「勝訴=即自動還付」ではなく、「勝訴+別途の救済・事務プロセス」が必要、という点にあります。

  1. 日本法・WTO法との比較可能な視点

比較法的に見ると、本判決の第一の含意は、「通商政策でも、課税(関税)である以上、授権の明確性が要求される」という統治構造の再確認です。最高裁は関税を Article I の taxing power に明確に接続し、IEEPAの一般的な “regulate importation” から関税権限を引き出す解釈を拒否しました。これは、行政裁量の広い通商・安全保障領域であっても、課税授権には明示性が必要だというメッセージです。日本法の観点からいえば、租税法律主義・課税要件法定主義の議論と比較可能な構造を持ちます(もちろん米国では憲法構造・delegation doctrine の文脈で語られる点が異なる)。

第二に、WTO法との関係では、本判決は直ちに「関税政策の国際法適合化」を意味しません。Reuters も示すように、政権側は他の法源(Section 232/301 等)への切替を明確に示唆しており、実際に判決直後に別法源による10%関税を公表しています。Holland & Knight や Norton Rose Fulbright の整理でも、Section 122(短期・上限付き)、232、301、201、338 など複数の代替経路が列挙され、IEEPA喪失後も高関税政策の再構築は可能と見られています。したがって、本判決の主効果は「関税水準の恒久的低下」よりも、「法源の付け替え・手続の増加・時間差の発生」にあるとみるのが妥当です。

第三に、比較租税法的に面白いのは、「違法な徴収の返還」が財政・政治・私法・行政手続を横断して問題化している点です。Norton Rose Fulbright は、還付額規模ゆえに議会が timing や制約を立法的に設ける可能性にも触れています。これは、租税法でいう不当利得返還・過誤納還付の問題に似て見えつつ、通商法では制度設計がより多元的(CIT、CBP、契約実務、連邦議会)であることを示します。研究上は、「違法課税の救済」を租税手続法だけでなく通商救済法・行政救済法の交点として捉える素材になります。

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(増井のコメントに戻る)

ふーん.3つの整理のうち,①法廷意見の2層構造の指摘や,②反対意見の評価がそのまま今後の還付実務につながってくる,というあたりが参考になる.③比較法のところは,要検討.ChatGPTが「比較租税法的に面白い」というテクストを生成するとき,どんな学習経路でそうなるんだろうか.

以上,後半の3つの整理についてはともかく,前半の論評調査からは,今回の敗訴を受け,政権は別の狭いやり方で相互関税を維持しようと試みるだろう,という見通しが得られる.日本企業の目からすると,投資約束への影響が目下の関心事.

2026/02/09

EUの行政協力指令(DAC)について,簡単な入口

〇DACとは?(メインページによる)

  • The Directive on Administrative Cooperationのこと
  • 課税分野における相互援助および各国の国税当局間の安全な行政協力について,EU加盟国のニーズに対応する調和された枠組み
  • EU域内における課税目的の情報交換に関する規則・手続および協力の在り方を規律
  • 目的は,税の公正を確保するために,脱税および租税回避と闘うこと

〇その構成と,指令の英語テクストへのリンク

  • DAC1:Council Directive 2011/16/EU(基本指令)— EUR-Lex(EN) 

  • DAC2:Council Directive 2014/107/EU(金融口座情報=CRSの自動交換)— EUR-Lex(EN) 

  • DAC3:Council Directive (EU) 2015/2376(タックスルーリング・APAの自動交換)— EUR-Lex(EN) 

  • DAC4:Council Directive (EU) 2016/881(CbCRの自動交換)— EUR-Lex(EN) 

  • DAC5:Council Directive (EU) 2016/2258(AML情報=実質的支配者情報等への税務当局アクセス)— EUR-Lex(EN)

  • DAC6:Council Directive (EU) 2018/822(クロスボーダーアレンジメントの開示義務=MDR)— EUR-Lex(EN) 

  • DAC7:Council Directive (EU) 2021/514(デジタル・プラットフォーム報告)— EUR-Lex(EN)

  • DAC8:Council Directive (EU) 2023/2226(暗号資産情報の自動交換=CARF)— EUR-Lex(EN) 

  • DAC9:Council Directive (EU) 2025/872(Pillar 2トップアップ税情報申告の情報交換)— EUR-Lex(EN) 


〇日本語で読める参考文献

2026/01/29

ChatGPT、租税法の研究動向を語る

 窮屈な場所での長い待ち時間に、ChatGPTに聞いてみた。

Q 租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

すると、以下のテクストが生成された。所要時間25秒。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

以下は、**国際的(制度形成の場・各国実装)学際的(法学×経済学×会計×政治学×心理学×情報科学)**の両軸から見た、近年(とくにBEPS 2.0以後)の租税法研究動向の「見取り図」です。


1. 国際租税秩序の再設計が、研究の“主戦場”になった

(1) グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)を中心に、国内法・条約・会計・執行が一体化

  • GloBE(IIR/UTPR/QDMTT)実装が進むにつれ、研究テーマは「理念」から実務に耐える法技術へシフトしています(立法選択、定義、セーフハーバー、申告・情報報告、二重課税調整、紛争処理)。(OECD)

  • 2026年1月には、“Side-by-Side package”(共存・並立の枠組み)が提示され、特定国制度との整合や、QDMTT・申告(GIR)負担の位置づけが論点化しています。(OECD)
    → 研究としては、①「国際合意の法的性質(ソフトローの拘束力)」、②「国内実装の裁量と限界」、③「企業グループ課税の再構成(連結ベースの租税法理)」が中心課題です。

(2) Pillar Oneは“全面合意”より、部分モジュール(Amount B等)へ:TP研究が再編

  • Amount B(基礎的マーケ・販売活動の簡素化)がTPガイドラインに組み込まれ、2025年以降の適用選択が制度設計論点になっています(適用範囲、比較可能性、紛争予防)。(OECD)

(3) UN税条約化の動き:国際課税の“フォーラム競合”が研究対象に

  • 国連では**国際租税協力の枠組条約(Framework Convention)**をめぐるプロセスが進行し(交渉プロセスは2025–2027を目標とする説明もある)、OECD中心の秩序と並走する形で、正統性・包摂性・配分正義が強く論じられています。(financing.desa.un.org)
    → 「誰がルールを作るのか(ガバナンス)」と「どの価値を優先するのか(配分・開発・税源配分)」が、法解釈論そのものに影響する局面が増えています。


2. “執行・透明化・情報”が、租税法を情報法・刑事法・行政学へ接続した

  • 自動的情報交換、受益者情報、プラットフォーム課税、実質的支配者、ペナルティ設計など、透明化インフラが租税法の中核テーマとして定着。

  • 研究の焦点は、

    1. データ収集権限とプライバシー/適正手続(憲法・人権・行政手続)

    2. 国境を越える執行協力(国際行政法)

    3. 刑事・制裁の最適設計(刑事法・行動経済学)
      へ広がっています。
      → “課税要件論”だけではなく、情報→リスク選別→調査→争訟という「税務行政のプロセス法」が、研究フロンティアになっています。


3. 企業租税法は「会計・ガバナンス・サステナビリティ」と融合

  • 税務は企業の**ガバナンス(取締役の監督、税務リスク管理、開示)**と不可分になり、会計(不確実性、引当、実効税率)と一体で論じられます。

  • ESGの文脈では、**“tax transparency / responsible tax”**が、ソフトロー(開示基準・投資家要請)として企業行動を拘束し、法規範との交錯が研究テーマに。


4. 学際化の中心は「実証」「行動」「計量」:租税法研究の方法論が変わった

(1) 実証(Empirics)の標準化

  • 租税法の議論が、判例・条文解釈に加えて、ミクロデータ分析、自然実験、差の差分析、RCT、フィールド実験などを前提に組み立てられる場面が増加。

  • “租税法学”が、**法政策評価(リーガル・ポリシー・アナリティクス)**へ寄ってきています。

(2) 行動科学(tax compliance / tax morale)

  • 「なぜ人は税を払うのか」を、制裁だけでなく、社会規範・信頼・手続的公正・ナッジで説明し、制度設計(申告簡素化、通知文言、第三者報告)に落とし込む研究が定着。

(3) AI・デジタル化:税務行政3.0と法的統制

  • AIによるリスク選別、電子インボイス、リアルタイム報告、プラットフォームデータ連携が進み、論点は

    • アルゴリズムの透明性・説明可能性

    • 差別・偏り(バイアス)と救済

    • 自動化された不利益処分の適正手続
      へ展開。租税法が情報法・行政法・統計倫理と接続します。


5. 比較法・政治経済学の再評価:税は「制度の産物」として研究される

  • 同じ“所得課税”でも、執行能力、社会保障、財政連邦制、地方税体系、政治文化で機能が変わるため、比較制度論が強まっています。

  • とくに国際課税では、国内政治(産業政策・対外関係)と租税立法が直結するため、**政治経済学(誰が得て誰が負担するか)**が解釈・立法論に入り込む傾向が顕著です。


研究動向を一言でまとめると

  1. 国際協調(OECD/UN)×国内実装が中心軸になり、

  2. 租税法は情報・執行・会計・ガバナンス・行動科学・AIへ接続して、

  3. 「解釈」だけでなく**制度運用と効果(実証)**を含む総合領域へ拡張しています。


(続く)

2026/01/23

閣議決定で、グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置を令和8年度改正で講ずることに

 これであるSbS packageを受けたもの。冒頭のパラグラフを引用しておく。

グローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)は、各国の法人税引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境を整備するため、多国籍企業に対して各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組みであり、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトの一環として、令和3年に約140カ国・地域が参加するOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」において合意され、我が国としても法制化した。

その上で、国際課税システムの安定化等の観点から、グローバル・ミニマム課税と、独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について、令和7年6月以降「BEPS包摂的枠組み」において交渉が行われ、令和8年1月5日に合意が成立したことから、当該合意に則り、令和8年度税制改正において、次のとおり我が国制度の見直しを行うこととする。

2026/01/06

昨夜のOECD SbS packageへの各界反応まとめ

昨夜のリリースから丸1日たたないうちに、世界中でいろんなコメントがとびかっている。ChatGPTに調べさせたら、リンク付きで、下記引用のまとめがでてきた。

  • リンク先をたどってみると、かなり裏が取れている印象
  • ただし6)については「実務家がこういっている」というリンクは付いておらず、OECD文書へのリンク
  • 日本の記事については、「今回(2026年1月5〜6日頃の報道)は、国内ではまず通信社(ロイター/共同)電が流れ、それを地方紙サイトやポータルが掲載する構図が強いように見えます」とな

ーー以下引用ーーーーーーーーーーーーーーー

主要な反応の整理(リンク付き)

1) OECD自身の位置づけ(「安定・確実性」「途上国の一次的課税権」)

OECDは、147の包摂的枠組み参加国・地域が「グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の協調運用の今後(way forward)」に合意したとし、“side-by-side”(既存ミニマム課税との並立)を通じて国際課税アーキテクチャの安定性・確実性を確保する、という語り口です。また「特に途上国の一次的課税権(first taxing rights)の保護」を強調しています。 (OECD)


2) 米国政府(財務省):明確な「非適用」・主権フレーミング

米国財務省は、今回の合意を「米国本社(U.S.-headquartered)の企業はPillar Twoの適用を免れ、米国のグローバル・ミニマム課税(米国ルール)のみが適用される」という成果として説明し、米国の主権R&Dクレジット等のインセンティブ価値の保護を前面に出しています。 (U.S. Department of the Treasury)


3) EU/加盟国(例:アイルランド):確実性を歓迎しつつ「2029年レビュー」で歯止め

アイルランド政府は、SbSパッケージ採択により、制度全体としての**certainty / stability(確実性・安定性)**が高まる点を歓迎しています。他方で、**2029年のstocktake(点検)**を明示し、リスクや競争力上の問題が生じた場合に是正する枠組みも強調しています(欧州委員会の影響評価にも言及)。 (gov.ie)


4) 産業界・ビジネス団体:実務負担の低減、二重課税回避、予見可能性

産業界の反応は概ね「理念」よりも、コンプライアンス/二重課税/予見可能性の観点から肯定的です。

  • **NAM(全米製造業者協会)**は、投資・雇用・競争条件の観点から「大きな勝利」と位置づけ、確実性が増す点を強調しています。 (NAM)

  • **NFTC(全米対外貿易評議会)**は、SbS統合に伴う「意図しない影響」を最小化する観点から、今後のOECDガイダンス精査と関与を表明しています。 (National Foreign Trade Council)

  • **ICI(投資会社協会)**は、セーフハーバーが米国ビジネスを「重複する外国ミニマム課税」から守る点で、議会・政権の方針と整合的だと述べています。 (ici.org)


5) 市民社会・タックスジャスティス系:強い「後退」「骨抜き」批判

タックスジャスティス/透明性を掲げる団体は、SbS合意を「実質的な米国多国籍企業の保護(適用除外)であり、Pillar Twoの趣旨を弱める」と批判しています。

  • Tax Justice Networkは、OECDが“side-by-side system”により米国を免除する形になったと批判的に評価しています。 (Tax Justice Network)

  • FACT Coalitionは、米国企業がPillar Twoの主要要素から引き続き免除されることは、法人税回避との戦いにとって「後退」だと述べています。 (The FACT Coalition)


6) 実務家・テクニカル論点:SbS/UPEセーフハーバーの運用効果が焦点

実務面で最も注目されているのは、SbSおよびUPEセーフハーバーの「効き方」です。Side-by-Side Packageでは、例えば以下が明示されています。

  • SbSセーフハーバー:UPEが「Qualified SbS Regime」所在なら、選択により当該年度のIIR/UTPR上のTop-up Taxをゼロ扱いにするメカニズム。 (OECD)

  • UPEセーフハーバー:2026年1月1日以降開始年度から適用、UTPR上、UPE所在国分のTop-up Taxをゼロ扱いにし、適格要件として少なくとも**名目法人税率20%**などを掲げています(QDMTTの運用には影響しない旨も明記)。 (OECD)


参照リンク(一次資料)


報道ベースの概況(参考:リンク集)

2025/12/27

令和8年度税制改正の大綱、閣議決定

2025年12月26日、政府が「令和8年度税制改正の大綱」を閣議決定。冒頭の文章を箇条書きに直して、そのまま引用する。

  • 物価高への対応の観点から、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みを創設するほか、就業調整に対応するとともに、中低所得者に配慮しつつ、所得税の課税最低限を178 万円まで特例的に先取りして引き上げる。
  • 「強い経済」の実現に向けた対応として、大胆な設備投資の促進に向けた税制措置を創設するほか、租税特別措置等の適正化の観点から、賃上げ促進税制の見直しや研究開発税制の強化等を行う。
  • 税負担の公平性を確保する観点から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し等を行う。
  • このほか、自動車関係諸税について、自動車税等の環境性能割の廃止や軽油引取税の当分の間税率の廃止等を行う。
  • また、国際観光旅客税の税率の引上げや防衛特別所得税(仮称)の創設等を行う。
【財務省サイト】
      • 令和8年度税制改正要望 HTML ※令和7年8月29日時点での税制改正要望となります。
      • 税制改正の大綱 PDF
      • 税制改正の大綱の概要 PDF
【総務省サイト】

上記引用の冒頭の文章と対比させる趣旨で、自由民主党と日本維新の会による与党税制改正大綱の「基本的考え方」を引用しておく。

  • まず、足元の物価高への対応として、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みを創設した。また、長年にわたって据え置かれてきた税制上の基準額について、網羅的な点検を行い、マイカー通勤に係る通勤手当や従業員への食事の支給に関して所得税が非課税となる限度額など、暮らしに関わる分野を中心に見直しを行い、物価高への対応を行った。また、物価高を超える賃上げの実現に向けて、賃上げ促進税制については、措置期間中ではあるが、臨機応変に対応する考えの下、防衛的賃上げに苦しむ中小企業に特化した形に見直す。
  • 「強い経済」を実現するために、大胆な設備投資促進税制を創設し、高付加価値化型の設備投資を強力に後押しする。他方、設備投資時のキャッシュフローを支援するとともに、設備投資後の収益で財政を支える償却制度を積極的に活用することで複数年の財政均衡に配慮した制度とした。さらに、貯蓄から投資への流れを後押しするNISAについては、つみたてNISAの拡充の一環として、国内市場を対象とした一定の株式指数を新たに追加する。結果として、個人の現預金が国内経済に投資され、経済成長を後押しする流れが加速化されることも期待される。
  • 「強い経済」とともに「世界で輝く日本」の実現に向けて、AI・量子・バイオ等の戦略技術分野の研究開発を促進する観点から、研究開発税制について「戦略技術領域型」を創設するとともに、国内の研究人材や研究開発拠点を強化する観点から必要な見直しを行う。また、国際的な租税回避を防止し、企業間の公平な競争環境を整備する観点から、わが国が主導してきた国際課税のBEPSプロジェクトについても積極的に進めていかなければならない。
  • 租税特別措置等については、的を絞り、メリハリを明確にすることでインセンティブを大胆に強化する。また、賃上げや設備投資に積極的ではない企業については租税特別措置の適用除外とする制度の強化・拡充を断行し、積極的に挑戦する企業を集中的に支援する制度に変えていく。今後更なる適用拡大についても検討を行う。
  • 他方で、累次の法人税率引下げによって、企業の利益が設備投資・研究開発そして賃上げの原資として適切に投資されてきたのか、不断の検証と改革も求められる。
  • 税制の公平性の確保に向けては、現行制度を躊躇なく見直す。まず、国内外での公平性の確保については「国境を越えた電子商取引に係る消費税の適正化」等の見直しを行うほか、外国人旅行者向け免税制度や、国外居住親族に係る扶養控除等の適用についてもあり方を検討していく。また、不当廉売関税に係る迂回防止制度を創設し、不公正な貿易に対する措置の実効性と抑止力を高める体制の構築を行う。財政の再分配機能を高める一環として「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」の見直しを行う。さらに、税制への信頼感を著しく棄損する租税回避への対応として「貸付用不動産の評価方法」「インボイス制度導入に係る経過措置」を利用した租税回避について厳格に対応していくとともに、時代の変化にこれからも対応していく。また、「ふるさと納税」について、健全な運用に向けた見直しを行い、制度導入時の崇高な理念の実現に向けた改正を行う。
  • 住民生活に密着した行政サービスを支える地方公共団体の税収をしっかり確保するとともに、経済社会の構造変化に対応し、都市と地方もお互いに支え合うという基本的考えに立ち、偏在性の小さい地方税体系の構築に向けた具体的な取組みについて検討を行っていく。
  • また、デジタル化の進展に伴い、納税手続のデジタル化への対応を国税・地方税とも行うとともに「道府県民税利子割の清算制度」を導入する。今後も、デジタル化の進展による社会経済活動への変化に機敏に対応していく。
  • さらに、消費者が支払った消費税相当分が、全て納税されることなく、事業者の手元に一部残る要因となっている「インボイス制度導入に係る経過措置」については、これまでに決定した各種経過措置を含めて最終的に終了することを堅持しつつ、個人・中小事業者の対応状況等も踏まえた更なる配慮を行うために、見直しを行う。
  • 「基幹産業」としてわが国経済を牽引する自動車産業は、技術面や国際環境など、大きな変化を迎えている。こうした中、自動車関係諸税の見直しについて、わが国の技術的優位性を踏まえた「マルチパスウェイ」等の自動車戦略や国・地方の安定的な財源確保、カーボンニュートラル目標等を踏まえ、今後、車体課税・燃料課税を含めた総合的な検討を行う。
  • 恒久政策には安定財源が必要との考えの下、揮発油税等の当分の間税率廃止及びいわゆる教育無償化に係る財源確保、防衛力強化に係る財源確保について税制上の対応を行う。また、高校生年代の扶養控除の見直しについては、先行して住宅ローン控除や生命保険料控除が拡充されていることも念頭に、今後も真摯な議論を行っていかなければならない。
  • 最後に、財政健全化と積極財政の二項対立ではなく、両者の思想を包含する「責任ある積極財政」の方針の下、「温故知新」の言葉を噛み締めつつ、税制改正に終わりはなく、連綿不断の改革と検証を行っていく決意をもって、以下、令和8年度税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

2025/11/27

日米租税条約13条2(b)にいう「合衆国不動産持分」

法科大学院の「国際租税法」の授業で、日米租税条約13条2(b)にいう「合衆国不動産持分」ってどんな意味ですか、という質問があった。

これは、英文テキストでは"United States real property interest"のことだ。この用語については条約において定義されていない。だから3条2により、米国国内法上の意義による。より厳密にいうと、米国による条約の適用に際して、米国の国内法令において適用時に有する意義を有するものとする。つまり、日米租税条約13条との関係では、米国が源泉地国として課税する場合である。この場合、居住地国としての日本国は、23条1(a)により、条約の規定に従って米国において租税を課されていれば、外国税額控除を行うことになる。

このことを前提として、米国政府の技術的説明は 

Under section 897(c) of the Code, the term "United States real property interest" includes shares in a U.S. corporation that owns sufficient U.S. real property interests to satisfy an asset-ratio test on certain testing dates. The term also includes certain foreign corporations that have elected to be treated as U.S. corporations for this purpose. See section 897(i) of the Code. In addition, any distribution made by a U.S. real estate investment trust or certain U.S. regulated investment companies is taxable under paragraph 1 of Article 13 of the existing Convention (rather than under Article 10 (Dividends) of the existing Convention) to the extent that it is attributable to gains derived from the alienation of U.S. real property interests. See section 897(h) of the Code.

と解説している。米国の内国歳入法典897条はこれ

ちなみに、この質問がでてきた文脈は、次の議論をやっていた副産物だ。

  • 国際租税法第4版の第4章練習2③について、今回担当の吉村浩一郎さんが学生さんと質疑応答をしていた。
  • 2013年議定書の発効により、日米租税条約13条2が修正されて、(b)の「法人」が日本の内国法人だけでなく外国法人も含むようになった。
  • そのため、巻末の「考え方のヒント」がちと古くなっていた。
  • というのも、国際租税法第4版の基準時は2019年4月1日で、同年8月30日に議定書が発効したからだ。
  • 要するに、練習2③は、議定書発効前の状態を前提にしたものなので、改めて留意が必要。→第2刷のときに、いくつかの点を補正している

2025/10/30

OBBBAの続き、国際面

 悪くない。国際課税の側面に特化することもできますよ、とあったので、さらに調べさせた。


ぼく:

intl tax


ChatGPT:

Awesome—here’s a tight, international-tax–only hit list for tracking and using OBBBA changes in practice. Each item is what I’d keep open in a working browser tab.

Primary law, policy, and Hill materials

  • IRS OBBBA page / fact sheet — Canonical summaries and links to official guidance (even if not intl-specific, it’s the ground truth you’ll cite back to). (IRS)

  • House Ways & Means — Section-by-Section (PDF) — Best single map to where the intl provisions live (renaming GILTI→NCTI, §250 changes, QBAI elimination, etc.). (Ways and Means)

  • JCT materials — Revenue estimate tables and methodology notes; use for quant support and footnotes. (jct.gov)

  • U.S. Treasury (G7 “side-by-side” statement) — Sets the policy frame for Pillar Two interactions (IIR/UTPR exclusions for U.S.-parented groups). (U.S. Department of the Treasury)

Independent modeling & think-tank explainers

  • Penn Wharton Budget Model (OBBBA intl update) — Fresh cost/ETR modeling of NCTI/FDDEI and §250 mechanics. (Penn Wharton Budget Model)

  • Tax Foundation (intl changes + Pillar Two “side-by-side”) — Practitioner-friendly technical rundowns and state-spillover notes. (Tax Foundation)

Big-Four / major firm trackers (implementation detail & examples)

  • KPMG TaxNewsFlash (intl provisions PDF) — Dense, section-by-section with planning observations (NCTI, FDDEI, FTC, §250). (KPMG)

  • EY alert on G7 “side-by-side” — Useful to reconcile cross-border policy with U.S. implementation. (EY)

  • RSM — foreign tax credit under OBBBA — Practical FTC limitation implications under NCTI/FDDEI; good for examples. (rsmus.com)

Law-firm client alerts (great for nuance & traps)

  • McDermott Will & Emery — Clear summary of NCTI (ex-GILTI), §250 to 40%, and loss of QBAI; handy ETR impacts. (McDermott)

  • WilmerHale — Crisp outline of NCTI/FDDEI changes and timing—useful for “what’s effective when.” (ウィルマー・ヘイル)

  • Baker McKenzie (InsightPlus PDF) — Deep dive on mechanics (renaming, DTIR removal, permanency of §250 percentages). (insightplus.bakermckenzie.com)

Solid mid-tier practitioner notes (quick checks, cross-border angles)

  • HCVT — Bulletized NCTI/FDDEI/FTC changes (incl. 90% indirect FTC, QBAI elimination) for quick reference. (hcvt.com)

  • BDO (Canada-facing brief) — Good cross-border perspective; helpful when coordinating with foreign advisors. (BDO Canada)

  • IBA feature — Policy-level summary on global repercussions; useful for board memos. (IBA)


If you tell me your specific workstream (e.g., FTC basketing/§904, loss/expense allocation to NCTI, FDDEI documentation, CFC structuring), I’ll stitch these into a focused reading stack with the 2–3 must-print PDFs and a one-page checklist.

2025/10/17

G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2025.10)の議長総括のうち、国際課税に関する部分

 財務省のこのサイトに、第 4 回 G20 財務大臣・中央銀行総裁会議議長総括(仮訳)(2025 年 10 月 15-16 日 於:米国・ワシントン D.C.) が出ていた。このうち、国際課税に関する部分は、6つのパラグラフから成る。引用者が段落番号と着色を施し、言及されている文書等へのリンクを張りつつ、直下に日本語仮訳を引用しておく。

以下引用*********

国際課税(International Taxation)

①メンバーは、全ての関係者にとって受け入れ可能な、均衡ある、かつ実用的な解決策を可能な限り早期に見出すという共有された目標をもって、「第2の柱」のグローバル・ミニマム課税に関する懸念に対処することへの建設的な関与を継続することにコミットした。解決策の実現は、実質ベースの税制上の優遇措置の公平な取扱いに関する議論を含む、公平な競争環境の観点から特定され得る重大なリスク、及び、税源浸食と利益移転のリスクへの対処へのコミットメントを含む必要があるとともに、経済のデジタル化に伴う課税上の課題に関する建設的な対話を含む、国際課税システムを安定させるための更なる進展を促す。これらの取組みは、全ての国の課税主権を保持しつつ、OECD/G20「包摂的枠組み」(IF)のメンバー間の緊密な協力によって進められる。

②メンバーは、「国際租税協力に関する G20 リオデジャネイロ閣僚宣言」を想起しつつ、グローバルな移動について研究し、税制、格差、及び成長の相互作用を理解するために、段階的かつ証拠に基づいたアプローチを採用するという IF の決定を引き続き歓迎する。

③メンバーは、国際租税協力に関する国連枠組条約を策定するための進行中の交渉に留意するとともに、参加している G20 メンバーは、不要な努力の重複を避けるよう努めつつ、幅広いコンセンサスを得る、並びに、既存の成果、プロセス、及び他の国際機関において現在進行中の作業を基礎とするという目的を再確認した。

④メンバーは、国際機関からの5つの重要なレポート及びケープタウンで開催された国内資金動員に関する G20 税サイドイベントからの1つのレポートを歓迎した。IFによるレポート「BEPS イニシアティブの 10 年:G20 財務大臣・中央銀行総裁への包摂的枠組みによる実績評価に係るレポート」は、BEPS プロジェクトが達成しようとした、国際課税システムにおける、更なる一貫性、実質性、透明性及び安定性をもたらすことに対する進展と影響を評価する。また、協力することの有益性も示している。これまでの成果に基づいて途上国が十分に参加し恩恵を受けられるようにするためには、包摂的な参加及びニーズに応じた税に関する能力の向上を支援することが必要である。

⑤OECD 及びグローバル・フォーラムによるレポート「透明性と税務目的の情報交換に関する進捗の実績評価」は、G20 主導の国際租税協力が、税務当局の情報共有能力を強化し、結果として税収を増加させる、重要な進展をもたらすことができることを示す。OECD によるレポート「不動産に関する即時利用可能な情報の自動交換の枠組み:G20 財務大臣・中央銀行総裁に向けたレポート」は、関心を持つ法域間における不動産に関する国際的な税の透明性を強化するための任意の共通アプローチを示す。南アフリカ財務大臣による、各法域にこのイニシアティブへの参加を求めるレターを受け、G20 議長国南アフリカは、これまでに示された法域による関心を歓迎するとともに、他の法域にも参加を奨励する。

⑥メンバーは、国内資金動員(DRM)が共通の重要課題であることに合意した。IMF による「歳入行政の強化を通じた国内資金動員の強化に関する G20 背景ノート」は、歳入管理を税制の重要な柱として強調する。「税に関する協働のためのプラットフォーム(PCT)」によるレポート「税に関する能力構築枠組みの強化に関する進展」は、能力構築提供者間における協調及び連携の重要性を示すとともに、各国主体で、各国が主導し、納税者との社会契約を果たす改革への構造的なアプローチの価値を認識する。地域機関が果たす重要な役割は、両レポートで強調されている。2025 年2月に開催され幅広い支持を得た DRM に関する税サイドイベントに基づくモデレーターのレポートは、DRM を最も効果的な資金源として優先付けること、現代的で強靭な歳入管理へ投資すること、そして国際協力を深化させることを奨励する。メンバーは、来年東京で開催予定の DRM に焦点を当てた PCT の「税と開発カンファレンス」、及び OECD によるレポート「税の安定性と成長を促進するための簡素化の強化:G20 財務大臣・中央銀行総裁に向けたレポート」を受け取ることを期待する。

2025/10/07

Graetz (2016) Follow the Moneyを演習会読風にしてみた

Graetz (2016) Follow the Moneyは、国際課税に関するGraetz教授の論文集だ。歴史、事業所得、ポートフォリオ所得、ヨーロッパ、の4部構成で、20年にわたって公表されてきた9つの著名な論文を収録している。私も、これらの論文が公表されてきたそのおりおりに、おおいに刺激を受けてきた。

この論文集は、全体がopen accessになっていて、学習用教材としても使いやすい。そこで、日本で国際課税をともに学ぶ学生さんたちを念頭に、さらに一歩、身近なものにしてみたい、と考えた。

そのためのひとつのやり方として、この本の序文を演習で会読する、という仮想の設定のもとで、ChatGPTに会話台本を作成させてみた。

私のプロンプト:大学の演習で、この文書を会読して議論する、という設定で、会話台本をつくれ

以下が、ChatGPTの作成した結果をもとに、すこし手を加えたものだ。読んでみて、もし興味を覚えた方がいらっしゃったら、今度は、この本そのものをご覧いただければうれしい。

🎓大学演習会話台本:「Graetz『Follow the Money』序文を読む」

登場人物

  • A教授(女性)…租税法・国際課税論の専門家。指導的かつ穏やかな語り口。

  • Bさん(男性学生)…素朴な疑問を率直に投げかけるタイプ。

  • Cさん(女性学生)…国際政治の視点から制度を考えるタイプ。

  • Dさん(男性学生)…理論分析を重視し、批判的に読むタイプ。


【場面】大学ゼミ室。

テーマは「国際課税の制度構造とその政治経済的意味」。
学生たちはGraetzの『Follow the Money』序文を読み終えたところ。


【導入:金の流れを追う】

A教授
さて、今日はGraetzの『Follow the Money』の序文を読みましたね。まず、この本のタイトル——「金の流れを追う」とは何を意味していると思いますか?

Bさん
単に「税金の流れ」ってことですか?つまり、どの国でどれだけ取ってるか、みたいな?

A教授
それも一部です。でもGraetzはもっと広い意味で使っています。お金の流れを追うとは、「資本や利益が国境を越えてどう動き、それに対して国家がどう課税権を主張するか」という制度の構造を解き明かす、ということなんです。

Cさん
なるほど、税制の技術的な話ではなく、国家と市場の関係全体を見るということですね。

A教授
その通り。彼は国際課税を“国家の政治経済的構造を映す鏡”と捉えています。租税を通じて、国家がどのように富を制度化しているかが見えるんですね。


【第1幕:源泉地と居住地】

Dさん
序文の中盤では、1920年代の国際連盟がつくった「源泉地」と「居住地」の二原理が国際課税の基礎だと説明されていました。でも、もう100年も前の仕組みが、今も続いているのは驚きです。

A教授
ええ。国際課税の骨格は100年前にできた枠組みなんです。つまり、どの国がどの所得を課税できるかを「源泉地」と「居住地」で分ける構造。けれど、Graetzが指摘するように、この枠組みはいまや揺らいでいます。なぜだと思いますか?

Bさん
デジタル企業のせいですよね。どこで利益が生まれてるのか、わかりにくいから。

A教授
そうですね。所得の「源泉地」を地理的に特定するのが難しくなっている。企業の「居住地」も、登記を動すなどして簡単に変えられる。つまり、国家の国境と課税の範囲が一致しなくなっているんです。


【第2幕:国際課税と国家主権】

Cさん
このあたりで、Graetzが「国際課税は国家の主権の問題でもある」と言っていたのが印象的です。税って経済だけの話かと思っていたけれど、主権と深く結びついてるんですね。

A教授
ええ。近代国家は、徴税を通じて国民を統合してきました。租税は国家の正統性の基盤なんです。
ところがグローバル化によって、国境を越える資本や企業が国家の課税権を相対化してしまった。だからこそGraetzは「国家がどのように財政的主権を再構築できるか」を問うているわけです。

Dさん
つまり、税制改革は単なる技術ではなく、「国家の再設計」でもある、と。

A教授
ええ。だから彼は税制を「社会契約」の一部として見るんです。


【第3幕:租税競争と協調】

Bさん
最後の節で、租税競争と協調の話が出てきましたよね。僕は「競争」と「協調」って正反対のことだと思ってたんですが、Graetzは「同じ制度の二つの面」だと書いていました。どういう意味なんですか?

A教授
いい質問です。国家は、資本を呼び込むために税率を下げたり優遇措置を作ったりします。これが租税競争。でもその結果、みんなが税収を失う「囚人のジレンマ」に陥る。だから、その弊害を抑えるために協調の仕組みが必要になる。つまり、競争があるから協調が生まれる、というのです。

Cさん
OECDやG20のBEPSプロジェクトもその流れの一部ですね。でも、Graetzは「協調も政治的妥協の産物だ」とも言っていました。先進国が主導している構造は変わらないのでは?

A教授
その通り。制度は常に力関係の上に立っています。だからこそ、租税協調は“政治的プロセス”なんです。単なる経済的効率化ではなく、誰がルールをつくるのか、という問題なんです。


【終幕:租税と社会契約】

Dさん
Graetzは最後に「租税は社会契約の表現である」と締めくくっていますね。これは、租税を単なる財政手段としてでなく、正義や民主主義の制度的基盤と見るという立場なんでしょうか。

A教授
ええ。国際課税を考えることは、「グローバルな正義」をどう制度化するかを考えることでもある。国家と企業、そして市民社会がどんなルールで富を分け合うか——それがこの本の主題です。

Bさん
なるほど。国際課税って、すごく“政治哲学的”なテーマなんですね。

A教授
そうなんです。数字よりも、「制度の背後にある理念」を読むことが、この本を理解する鍵といえるかもしれません。


【ゼミ討論のまとめ】

  • 「金の流れを追う」とは、制度の構造を解き明かすことを通じて資源配分の力学を分析すること。

  • 国際課税の構造(源泉地課税と居住地課税の二分法)は、もはや現実に適合しない。

  • 租税競争と協調は、単純な二項対立ではなく、国際制度の生成過程の両側面。

  • 租税は社会契約の表現だ。

2025/10/03

租税競争をくいとめる(2024)をインタビュー形式にしてみた

新学期、授業の教材づくりの時期だ。以下では、教材づくりの一環として、増井良啓「租税競争をくいとめる」東京大学法学部「現代と法」委員会編『いま、法学を知りたい君へ』(有斐閣2024年)185-199頁の内容を、AさんがBさんにインタビューする、という形式に展開してみた。2025年10月3日にChatGPTを用いて作成。元の原稿の基準時は2023年12月末であり、その後の展開、とりわけ2025年6月末のG7と米国の共存アプローチ(side-by-side approach)については盛り込んでいない。

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導入

Aさん:いやあ、税金の話って難しいですね。なんか「法人税がどうのこうの」と言われても、正直ピンと来ないんです。今日はBさんに「租税競争をくいとめる」という論文について教えてもらおうと思います。よろしくお願いします!

Bさん:はい、任せてください。税金の世界は一見とっつきにくいですけど、実は「国際社会の知恵比べ」みたいな部分があって、面白いんですよ。

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Ⅰ 租税競争ってなに?

Aさん:まず「租税競争」って何ですか?なんか国家同士で「うちの税金安いよ~」って言い合ってるイメージですけど。

Bさん:そのイメージ、かなり正解です(笑)。

「租税競争」とは、各国が法人税をどんどん下げて、企業に来てもらおうとする現象のことです。例えば、ある国が「法人税を25%に下げました!」とすると、隣の国も「じゃあうちは20%!」と対抗する。そうやって下げ合戦が始まるんですね。これを「底辺への競争(race to the bottom)」と呼びます。

Aさん:なるほど…。企業にとっては税金が安い方がいいですけど、国としては税収が減って大変そうですね。

Bさん:そうなんです。税収が減ると教育や医療などにお金が回らなくなりますし、結局みんな困ってしまうんです。

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Ⅱ じゃあどうするの?──柱2(Pillar Two)

Aさん:じゃあ各国はどうやって「下げすぎ」を防いでるんですか?

Bさん:そこで出てくるのが「柱2(Pillar Two)」です。2021年に140近い国が合意して、「法人税の最低ラインを15%にしよう!」と決めたんです。

Aさん:へぇ~。つまり「どの国に行っても、法人税は最低でも15%」ってことですか?

Bさん:そうです。これで極端に安い国に企業が逃げるのを防ごうというわけです。ちなみに日本の法人税は国税+地方税で30%弱なので、15%は「最低ライン」としては控えめですが、それでも大きな意味があります。

Aさん:へえ、日本から見れば「うちの方が全然高いよ!」って感じですね(笑)。

Bさん:そうなんですよ。

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Ⅲ どうやって最低税率を実現するの?

Aさん:でも「最低15%」って決めても、守らない国が出てきそうですよね。

Bさん:いい質問です。そこで登場するのが「GloBEルール」です。これは「もしある国が15%に満たない税しか取ってなかったら、他の国で上乗せ課税しちゃいますよ」という仕組みです。

Aさん:えっ、他国が代わりに課税するんですか?なんか強引ですね。

Bさん:すごいでしょう(笑)。「あなたの国が安すぎるから、その分は親会社の国で回収しますね」という感じです。これで「抜け駆け」しにくくなる仕組みなんです。

Aさん:なるほど…。でも、別の国のことを考えて上乗せ課税するなんて、企業のほうは対応大変じゃないですか?

Bさん:そう、そこがまさに課題です。企業にとっては「頭痛が止まらない制度」なんです。日本の企業なんて、既存のCFC税制と合わせてダブル対応になっちゃって大変です。

Aさん:CFC…ってなんですか?

Bさん:簡単に言うと、日本の企業がタックスヘイブンに利益を移転するのを防ぐ仕組みです。柱2のIIRと似てるけど目的が違う。両方あると「二重チェック」みたいで、事務負担が増えるんです。

Aさん:あぁ…それ、会社の経理担当が泣きますね(笑)。

Bさん:ここ、笑うところじゃないですよ。なんて。

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Ⅳ 課題はいろいろある

Aさん:完璧な制度に聞こえるけど、何か問題あるんですか?

Bさん:ええ。大きく3つあります。

1. どの国が採用するか

 かなりの国がやらなきゃ意味がありません。主要国は進めてますが、もちろん全てではありません。

2. 軽課税国の抜け道

 補助金を活用したり、工場を呼び込むインセンティブを利用したりして、「形を変えた租税競争」が続く可能性があります。

3. ルールが複雑すぎる

 企業も国も事務負担が大きい。特に人手や制度が整っていない途上国には重荷です。

Aさん:へえ、いろいろありますね。抜け道って、なんだか、テストで「カンニング禁止!」って決めても、みんな工夫して新しいカンニング法を編み出す…みたいな話ですよね(笑)。

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Ⅴ 将来の展望──法人税はどうなる?

Aさん:でも根本的には「法人税」ってもう時代に合ってないんじゃないですか?

Bさん:そういう議論もあります。現在の法人税は無形資産に依存していて逃げやすい。だから将来的には「市場がある国に課税権を配分する仕組み」や「キャッシュフロー課税」に移行した方が安定的かもしれない、と研究者たちは提案しています。

Aさん:なるほど…。つまり「企業がどこにあるか」じゃなくて「商品がどこで売れてるか」で課税するってことですね。

Bさん:そうです。その方が「租税競争」が生まれにくい仕組みになる可能性が高いんです。

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Ⅵ 民主主義との関係

Aさん:ちょっと話は変わりますけど、国際合意って官僚が集まって決めるんですよね?それって国会の役割が小さくなって、民主主義的に問題ないんですか?

Bさん:そこも重要な論点です。条約や国際合意は官僚や政府が決め、国会は「事後承認」するだけ。つまり、国民の代表が細かい中身を修正する余地はあまりないんです。

Aさん:あ、それって「代表なくして課税なし」という原則に反しません?

Bさん:そう。だから「もっと国会や市民が監視できる仕組みが必要だ」という人もいるんです。透明性を高めることが大切なんですね。

Aさん:でも正直、僕ら普通の人は「税金の細かい国際ルール」って眠くなっちゃうんですよね(笑)。

Bさん:そこを何とか頑張ってほしいんです!少なくとも「こんな大きなルールが裏で決まってるんだ」っていう意識を持つだけでも違いますから。

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まとめ

Aさん:いやあ、今日のお話で「租税競争」って、国家同士の「法人税ディスカウント合戦」みたいなものだってわかりました。それを止めるために「柱2=最低税率15%」が導入されたけど、まだ課題山積みなんですね。

Bさん:そうです。そして「法人税の将来」や「民主主義との関係」も含めて考える必要があります。ちょっと堅いテーマですが、実は私たちの生活とも密接につながっているんですよ。

Aさん:なるほどです。今日はありがとうございました!