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2017/07/01

昭和財政史の3シリーズが,アップされていた

財務総研のサイトに6月30日付けで次のお知らせがでていて
財政史の3つのシリーズが閲覧できるようになりました。『昭和財政史』(戦前編), 『昭和財政史-終戦から講和まで』, 『昭和財政史-昭和27~48年度』
クリックすると,下のようにリンクが張られていた。 「終戦から講和まで」の第8巻植松論文など,授業で言及する必読文献が多いだけに,これは朗報。

「財政史」は、財務省の行政事績を政策分野別に期間を区切って編纂した史録であり、その編纂・刊行は、財務行政の正確な記録をのこし、財務行政の企画立案及び一般の学術研究の参考の用に供することを目的としています。「財政史」はこれまでに『明治財政史』から『昭和財政史-昭和49~63年度』までが刊行され、現在、7シリーズ目に当たる『平成財政史-平成元~12年度』の編纂を進めています。『平成財政史-平成元~12年度』シリーズについては、平成23年度以降現在までに、第2巻(予算)、第4巻(租税)など7つの巻が刊行されています。
各シリーズの概要については、下記シリーズ名のリンクからご覧になれます。
「財政史」各シリーズ全巻数内容対象期間
『明治財政史』全15巻明治元年~明治35年
『明治大正財政史』全20巻明治36年~大正15年
『昭和財政史』(戦前編)全18巻昭和元年~昭和20年8月
『昭和財政史-終戦から講和まで』全20巻昭和20年8月~昭和27年4月
『昭和財政史-昭和27~48年度』全20巻昭和27年度~昭和48年度
『昭和財政史-昭和49~63年度』全12巻昭和49年度~昭和63年度
『平成財政史-平成元~12年度』全12巻平成元年度~平成12年度

  • 昭和財政史 49~63平成財政史

2023/06/20

法システムとしての租税法Ⅰ:法制度の中における租税法の機能

 フィナンシャルレビュー152号の特集が、本日公刊された。目次をコピペしておこう。

<特集>法システムとしての租税法Ⅰ:法制度の中における租税法の機能

 

 序文(PDF:605KB)

  1. ローマ数字1.本特集号の目的
  2. ローマ数字2.本特集号の視座と構成
  3. ローマ数字3.今後の展望

中里  実

(東京大学名誉教授)

神山 弘行

(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 法制度の効率性と租税法の役割
―Kaplow & Shavell の“double distortion” テーゼ再訪

本文(PDF:1126KB)

  1. ローマ数字1.本稿の研究課題と意義
  2. ローマ数字2.Kaplow & Shavell(1994)再訪
  3. ローマ数字3.KS1994 を巡る米国法理論史
  4. ローマ数字4.考察のまとめ

藤谷 武史

(東京大学社会科学研究所教授)

 所得再分配を巡る法制度:GAFA 課税問題と才能課税問題との接点に関する試論

本文(PDF:1221KB)

    1. ローマ数字1.序:最適課税論の出発点と前提
    2. ローマ数字2.従来の移転価格税制の考え方は何故GAFA 等にうまく当てはまらないか
    3. ローマ数字3.長期個人視点の租税法学と短期世帯視点の社会保障法学
    4. ローマ数字4.生涯単位の稼得能力
    5. ローマ数字4.まとめ:所得税という名前だから所得稼得者側の属性の単一の指標を突き詰めることが理想とは言い切れないかもしれない

浅妻 章如

(立教大学法学部教授)

 スタートアップ企業によるイノベーションを促進する税制の設計のあり方

本文(PDF:1142KB)

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.イノベーション促進税制の正当化
    3. ローマ数字3.イノベーション促進税制の設計
    4. ローマ数字4.わが国のイノベーション促進税制の評価
    5. ローマ数字5.おわりに

長戸 貴之

(学習院大学法学部教授)

 通商法と租税法の抵触
―デジタルサービス税をめぐる論点を素材として―

本文(PDF:863KB)

    1. ローマ数字1.問題の所在
    2. ローマ数字2.新しい領域における衝突
    3. ローマ数字3.結びに代えて

吉村 政穂

(一橋大学大学院法学研究科教授)

 租税の機能としての景気調整機能

本文(PDF:1106KB)

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.租税法と租税政策における景気調整機能の位置付け
    3. ローマ数字3.現行法の分析
    4. ローマ数字4.おわりに

藤岡 祐治

(一橋大学大学院法学研究科准教授)

 世代間衡平と租税法
―租税・財政・社会保障―

本文(PDF:1212KB)

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.現在世代の将来世代への責任
    3. ローマ数字3.危機対応の財源
    4. ローマ数字4.社会保障法と租税法
    5. ローマ数字5.結びに代えて

神山 弘行

(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 

2020/10/24

「租税法学習のためのリンク」のトリセツ

大学の授業でご一緒する学生の皆さんのためによかれと思ってリンクを掲げてきたが,不親切にも取扱説明書をつけないままで,もう20年以上になってしまった。遅ればせながら,かんたんに使い方を記しておこう。

租税法学習のためのリンクをクリックすると,授業でよく言及するサイトを並べてある。これが簡略版。そこから詳細版をクリックすると、ほぼ地域別にリンク先を並べてある。日本のものだと,「e-Gov」の「法令検索」から,所得税法や所得税法施行令などをとってくることができる(毎年3月末の税制改正が反映されるまで数か月タイムラグがあることに注意)。裁判例への無料アクセスも充実していて,たとえば「税務訴訟資料」は租税関係行政・民事事件裁判例のうち国税に関する裁判例をほぼ網羅的に収録(それなのにわざわざ事件番号を消してあるのが資料としての価値を損なってしまっていてとても残念)。「SSRN」のサイトは,ワーキングペーパーなどを入手するうえで不可欠。★リンク集を「簡略版」と「詳細版」に分けたことを受けて、記述を修正(2023.12.23)。

税制改正の内容(国税 地方税)は,それぞれ,財務省と総務省のサイトへのリンク。とくに便利なものとして,「国税」→「税制改正の概要」→各年度の「税制改正の解説」と進むと,それぞれの年度改正について立案担当者の執筆した解説が手に入る。解説は現在,平成17年度までさかのぼってみることができる。もっと古いものもアップしてほしいが,いまのところ,紙媒体の「改正税法のすべて」をみるしかなさそう。

租税条約へのアクセスに関しては,先日ポストしたこれをみてほしい。税制史をクリックすると,そこにリンクを張っておいたように,1949年のシャウプ勧告をボランティアの方がアップしてくれている。Literacyは、データベース一覧が便利。★かつてのGACoSがLiteracyに進化したことを受けて、記載を修正(2021.08.13)。

なお,ゼミで租税法の英語文献を読むときに,「この単語の意味がワカラネ」と思って,普通の辞書をみてもまだサッパリわからん,ということがあるかもしれない。そういう困りごとを助けてくれるのが,立教大学浅妻章如教授のこの単語帳

2025/08/10

宇賀古希記念論文集

1.行政法の理論と実務ー宇賀克也先生古稀記念が公刊された。行政法総論、行政救済法、行政組織法と地方自治、行政法各論と租税法、の4部構成。

2.寄稿の機会をいただき、私は「タックス・ギャップ推計の有用性」を論じた。基準時は原稿締切の2024年7月末。その後、現在までの1年でいくつか展開があったが、次の文献が重要と思う。ひとつは森信茂樹・わが国でも「タックス・ギャップ」の本格的な議論をであり、申告書の個票データを利用した学術研究に触れつつ、「条件は整いつつあるので、タックス・ギャップに関する本格的な議論を進めていく必要がある」とする。 

3.いまひとつは、藤岡祐治・徴収の制度設計についての理論的検討(租税法研究53号所収)であり、行動変化に関する税収弾力性(BETR)の枠組みを参照して、tax compliance gap最小化が制度設計の目的とはならないこと、制度設計にあたり徴税費用・納税協力費用の考慮が重要であること、を指摘する。もっともである。私の論文でも「やみくもな執行強化が資源配分や所得分配の上で最適であるわけでもない(1016-1017頁)」と述べた。これに対し、BETRは社会全体の資源に着目して精密なモデルをたてている。

4.なお、私の論文ではある時期の国会における特定のやりとりを念頭において、そこで前提とされていた「推計なければ増税なし」という考え方に大きな問題があると主張した(1016頁)。この主張は、上記3の藤岡論文が租税実体法との連続性を念頭に置いた徴収の制度設計を志向することと、なんら矛盾しない。むしろ、どの程度の徴税費用・納税協力費用をかけてどの程度の「もれ」が生じているかを定量的に測定することは、BETRのような枠組みを活かしていくために必要なステップというべきであろう。

5.ついつい自分の論文のことばかり書いてしまった。この論文集には興味深い論文が並んでおり、手に取るとついつい時間を忘れてしまう。日光太郎杉事件はこんな歴史的文脈で下されたのか、と引き込まれる。行政の実効性確保について、各措置の作用機序を明確にして分類する努力が不足しているという指摘に接すると、この指摘は法道具主義や行動主義との関係でも展開可能性があると思う。宇賀先生の記念論文集だけに国家賠償に力がこもっているのは当然かもしれないが、相互保障主義について歴史をたどって国賠法6条を違憲と断案する論文は特に印象的。

6.以下に目次をコピペしておこう。
第1部 行政法総論
  行政法の基礎理論
 「民間」による社会のデジタル化と行政法理論………………………飯島淳子
 騒音被害に対する行政法と民法の連携………………………………大橋洋一
 さらば行政法……………………………………………………………折橋洋介
 行政上の基本法制の整備と課題……………………………………北島周作
 シャルル・アイゼンマンの国家作用論 ………………………………小島慎司
 法的空間としての海・宇宙・サイバー ………………………………櫻井敬子
 行政法総論体系と「法的仕組み」……………………………………橋本博之
  行政活動の法的仕組みと行為形式
 表現にかかわる自主規制と公法学の新たな役割 …………………板垣勝彦
 複数処分間の適法要件・違法事由・処分庁の判断権限の関係……興津征雄
 「解釈裁量の否定」とは何を意味するか ……………………………角松生史
 原子力発電所の安全性に関する「社会通念」の検討………………桑原勇進
 中国における計画の体系化と都市計画法の変革 ………………………肖軍
 日光太郎杉判決………………………………………………………高橋信行
 行政機関による法解釈における裁量の存否…………………………船渡康平
  行政情報法
 オーストリアにおける情報公開制度の展開……………………………大江裕幸
 通信の秘密・再訪………………………………………………………宍戸常寿
 秘密と記録………………………………………………………………田尾亮介
 我が国におけるデジタルID普及の展望………………………………髙野祥一
 公的部門に対する個人情報保護法の執行……………………………巽 智彦
 行政情報法における法制度設計と立法準則・試論……………………横田明美
  行政の実効性確保
 行政の実効性確保論の再考……………………………………………中川丈久
  行政手続
 電子規則制定(E-Rulemaking)と公衆参加の強化……………………常岡孝好
 子どもの意見表明権と適正手続の保障………………………………横田光平
第2部 行政救済法
  行政上の不服申立て
 行政法学における苦情処理の位置づけ………………………………徳本広孝
 行政庁の調査義務と行政不服審査……………………………………中原茂樹
  行政訴訟
 行政冤罪の基本構造……………………………………………………岩橋健定
 行政契約と行政訴訟 ……………………………………………………王 天華
  国家賠償
 規制権限不行使事案における保護対象論……………………………金﨑剛志
 国家賠償法6条の相互保証主義 ………………………………………斎藤 誠
 熊本水俣病事件における食品衛生法適用問題 ………………………島村 健
 連邦コモンローの不在と権力分立原則 ………………………………玉井克哉
 営造物責任における瑕疵要件と因果関係要件の交錯 ………………土井 翼
 国家賠償法2条に関する覚書 …………………………………………仲野武志
 公権力発動要件欠如説の展開…………………………………………西上 治
第3部 行政組織法と地方自治
  行政組織法
 公共施設法制における営造物概念の歴史的な展開…………………木村琢麿
 国家行政組織に対する憲法上の規律…………………………………兪 珍式
  地方自治
 条例の適法性判断における「合理性」概念の検討 ……………………礒崎初仁
 ベルリン州における「社会化」の試み ……………………………………諸岡慧人
第4部 行政法各論と租税法
  行政法各論
 「国制」と「会計法制」のあいだ…………………………………………石川健治
 1853年2月21日プロイセン高等法院総会決定について………………太田匡彦
 外国銀行の日本支店の制度上の性格…………………………………進藤 功
 消費者法における行政の手続法構造に関する若干の考察 …………山本隆司
  租税法
 租税法とEBPM …………………………………………………………神山弘行
 タックス・ギャップ推計の有用性 ………………………………………増井良啓
宇賀先生の古稀に寄せて
 良心と理性の声 ………………………………マーク・A・レヴィン=福島千会子
宇賀克也先生略歴
宇賀克也先生著作目録

2019/12/13

占領下における外国人・外国法人課税再開の過程

加野裕幸「占領下における外国人・外国法人課税再開の過程」関西大学大学院法学ジャーナル97号(2019年)21-47頁は,「昭和25年の外国人・外国法人の課税の再開は,きっかけはGHQの覚書で始まり,その内容はシャウプ使節団の影響を受けていない(46頁)」と主張。

かつて非永住者制度の沿革を調べたおりに,私は,シャウプ勧告の「外国人」という一節に着目し,この勧告をうけて,GHQが非円通貨による外国人所得の非課税措置を廃止する旨の覚書を発したと考えた(ジュリスト1128号109頁)。これに対し,昭和25年の租税特別措置法改正の内容については,基本政策の点からは,外国資本とともに外国人が一緒に日本にこなければならないとしたシャウプ勧告の叙述に照応する,とまでしかいえなかった。

この点につき,加野論文は,一歩進んで,シャウプ使節団は特別措置の内容には距離をとっていたと主張している。その論拠をみてみると,戦後財政史口述資料(1951年)を参照して,外国人・外国法人の利子・配当・給与の軽減措置(当時の租税特別措置法3条から5条)につき,これは司令部の要望によるもので,シャウプ勧告は「そういう問題は全然ごめんだというようにさらりとやられた」という発言を引用している(32頁)。理想の租税政策を追い求めた使節団の一面がうかがえる記録であり,それ自体興味深い。

ほかにも,いかにも直接に史料をあたった研究らしい、興味深い点がある。
  • 忠佐市氏らが1947年に行った外国法人3社への聞き取り調査の記録を発掘。当時の外国法人がいろんな理由をつけて源泉徴収義務をなかなか履行したがらない様子が改めて明らかになる(28頁以下)。
  • 安川七郎氏の1951年の論文をもとに制限納税義務者の課税の範囲を追跡(33頁以下)。この部分は,1954年日米租税条約締結前後の議論に接続し,1962年に国内源泉所得の概念を法令で明確化するところにつながっていくであろう。
この論文がndlの検索でヒットしないのは,惜しい。

2020/11/30

首藤重幸教授古稀祝賀退職記念論集がアップされていた

ここと,ここから,ダウンロードできる。目次は,以下のとおり。

江泉芳信教授 加藤哲夫教授 首藤重幸教授 古稀祝賀退職記念論集 早稲田法学第95巻第 3 号(第 2 分冊)
 論 説
要綱行政の再検討   李   斗 領  (189)
審査請求における審査庁の管轄決定の標準時    岡 田 正 則  (225)
イギリスにおける司法審査請求の今日的要件についての一考察─いわゆる「第 2 段階目の上訴に関する基準:Second Appeal Criteria」の司法審査請求への適用の意義と射程─    長 内 祐 樹  (243)
我が国国際租税法における法令遵守確保策─OECD/ICAP プログラムを展望して─ 川 端 康 之  (269)
持続可能な土地市場政策・法への模索(下)─ドイツにおける農業構造の変動と農林地取引法の動揺─ 楜 澤 能 生  (291)
フクシマ後の原発安全規制と司法審査─基本設計論に着目して─  黒 川 哲 志  (337)
事業承継税制の諸問題   小 池 正 明  (355)
ロースクールでの行政法教育とその成果    小 島 延 夫  (385)
許認可又は免許の更新   小 林 博 志  (413)
原子力規制の変化と行政訴訟に関する一考察─川内原発設置変更許可取消訴訟・福岡地裁判決の検討を中心に─ 下 山 憲 治  (441)
行政の裁判的統制におけるコンセイユ・デタモデルの可能性─ヨーロッパ比較行政裁判制度からみたフランス─ 杉 原 丈 史  (465)
制限行為能力者の納税義務履行行為に関する若干の考察─租税法における私人の行為に係る基礎的考察─ 高 野 幸 大  (495)
自衛隊災害派遣法制の一考察  田 村 達 久  (525)
処分性拡大再論と訴訟選択論に関する一試論    趙   元 済  (551)
消費課税における中小事業者─消費税の性質論を基礎として─  西 山 由 美  (583)
市場規制としてのプリンシプルとその実効性確保    坂 東 洋 行  (607)
地方議会による所属議員に対する出席停止の懲罰議決の司法審査について   人 見   剛  (639)
違法な課税処分をめぐる国家賠償訴訟─固定資産税の誤課税に関する公定力克服の「その後」─ 平 川 英 子  (665)
税務行政の ICT 化の現状と当面の課題    藤 曲 武 美  (691)
地方交付税法第 6 条の 3 第 2 項の解釈と運用    森   稔 樹  (717)
防衛の需要を充足するための土地調達をめぐる法的問題について─ドイツにおける防衛目的の土地調達における衡量判断の枠組みを参照して─  山 田 真 一 郎  (741)
イギリスにおける付加価値税制度と税収ギャップ(Tax Gap)    山 元 俊 一  (771)
学術世界の生態系─アメリカ連邦取引委員会 vs. OMICS 事件を契機として─ 山 本 順 一  (797)
株式対価 M&A と課税─株式交付に対応する課税制度のあり方─ 渡 辺 徹 也  (825)

2014/08/06

佐藤健太郎『「平等」理念と政治 ―大正・昭和戦前期の税制改正と地域主義』

日本政治史の本格的な研究書。神戸正雄の思想形成過程を河上肇と対比して論じ(第1章)、臨時財政経済調査会の税制改正案を分析し(第2章)、さらに進んで、知事公選・両税委譲・雪害運動・沖縄救済・地租法改正法案という諸問題を地域の「平等」に関する政治過程として捉え検討する(第3章)。

おおいに蒙を啓かれる。神戸正雄のものはこれまで断片的にしか読んだことがなかった。納税道義に関する彼の関心がどこに由来するか、本書によりはじめて理解できる。「道義院」設立論者であった彼の思想的枠組みは、「対外的な危機意識を背景にした国家的視点、非道義的な気風の排除、富豪への嫌悪感から来る社会主義との一定の親和性」にあったのである(22頁)。この考え方と財産税導入論が結合する。しかも神戸の場合、社会政策的税制論とは一線を画し、給付能力原則に適合した租税理論を展開した(65頁)。本書は、このような神戸学説の読み込みを経て、臨時財政経済調査会の議事がどのような対立軸を有していたかをつぶさに検討する(たとえば141頁)。なるほど。

時代を超えて、税制改正に携わるアクターに対して、「あなたはどういう理念をもって行動しているのですか」、と静かに問いかけるような、奥行きと広がりを感じた。日本史年表を片手に読み進むのも楽しい。


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2026/01/29

(さらに続き)ChatGPT、租税法の研究動向を語る

【これまで】

1)租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

2)以上を、法学全体の研究潮流の中で、位置づけよ

【今回】

ちょっと大風呂敷を広げている感じがしたので、ハルシネーションではないかどうか、確認してみた。

Q 上記の「法学全体の研究潮流」は、どんなソースに依拠して、記述しているのか?

これに対する応答は、以下の通り。所要時間52秒。


以下引用***********

上記の「法学全体の研究潮流」は、特定の1冊に依拠した叙述ではなく、(少なくとも英語圏を中心とする)法学の“プログラム論文/概念史的整理/方法論宣言”として広く参照される文献群を、いくつかの軸で**総合(triangulation)**して描いたものです。依拠したソースの「類型」と「代表文献」を、私が使った対応関係が分かるように整理します。


1) 「ガバナンス転回(規範中心→統治・実装中心)」の根拠

ここは、行政法・規制研究・公共政策の交点で形成された“regulatory state / governance”系の古典と、法学内部の “New Governance” 論が柱です。

  • **Regulatory state(規制国家)**の概念化:Majone「From the Positive to the Regulatory State」など(規制による統治へのシフトを説明)(Cambridge University Press & Assessment)

  • **Governance(governing without government)**の整理:Rhodes「The New Governance」(SAGE Journals)

  • 法学内部での“New Governance”宣言:Lobel「Setting the Agenda for New Governance Research」(規制領域横断の研究潮流として提示)(scholarship.law.umn.edu)

私の叙述で言う「正当化だけでなく、誰が・どの手続で・どう運用するかへ」という部分は、この系譜(規制国家+新ガバナンス論)に依拠しています。(Cambridge University Press & Assessment)


2) 「トランスナショナル化(国内法の閉域→国際的ルール形成・ソフトロー・相互運用)」の根拠

ここは、国際法/国際関係法の側の“トランスナショナル法過程”と、国際機関・私的主体を含む規制の「行政法化」を論じる潮流が柱です。

  • Transnational Legal Process:Koh「Transnational Legal Process」(国家・非国家アクターが複数フォーラムで規範を“作り・解釈し・執行し・内面化する”という枠組み)(UNL Institutional Repository)

  • Global Administrative Law(グローバル行政法):Kingsbury/Krisch/Stewart「The Emergence of Global Administrative Law」(国際機関等の意思決定に、手続・理由提示・審査など行政法的コントロールが立ち上がるという整理)(Duke Law Scholarship Repository)

私の叙述で「条約だけでなくモデルルール・ソフトローが実質拘束」「法源・正統性が前景化」としたのは、この2つ(TLP+GAL)の議論枠組みを下敷きにしています。(UNL Institutional Repository)


3) 「実証・社会科学化(Empirical/Socio-legal turn)」の根拠

ここは、**Empirical Legal Studies(ELS)**の制度化を示す編集序文・ハンドブック類と、法と社会(socio-legal studies)の系譜です。

  • JELS創刊と方法論宣言(ELSの自己定義・制度化の指標):Eisenbergら「Editor’s Introduction」(Journal of Empirical Legal Studies, 2004)(Wiley Online Library)

  • ELSの概説・位置づけ:Eisenberg「The Origins, Nature, and Promise of Empirical Legal Studies」(2011)や、Oxford Handbookの導入部(ELSの国際的拡がりにも言及)(scholarship.law.cornell.edu)

  • 規制研究と“応答的規制”(法執行のデザインを社会科学と結ぶ代表作):Ayres & Braithwaite『Responsive Regulation』(1992)(John Braithwaite)

私の叙述で「解釈学だけでなく制度効果の検証が標準化」「コンプライアンス研究が方法論的に拡張」とした部分は、ELSの制度化(JELS等)+応答的規制の流れに依拠しています。(Wiley Online Library)


4) 「データ化・AI化(アルゴリズム行政/手続保障の再設計)」の根拠

ここは比較的新しい領域なので、行政法原理(適正手続・説明責任・裁量統制)を、アルゴリズム意思決定にどう移植するかを論じる研究が中心ソースです。

  • 公共部門におけるアルゴリズム意思決定と行政法原理:Oswaldら「Algorithm-assisted decision-making in the public sector…」(2018)(royalsocietypublishing.org)

  • アルゴリズムが「ルール」か「ガイダンス」か(手続法=APA等との接続):Henderson & Krass「Algorithmic Rulemaking vs. Algorithmic Guidance」(2023)(jolt.law.harvard.edu)

  • 「手続的正義」や“voice(聴聞・参加)”の欠落を論じる近時研究:Kinchin「Voiceless: the procedural gap in algorithmic justice」(2024)や、due process by design(2025)(OUP Academic)

私の叙述で「説明可能性・バイアス・適正手続・救済が中核論点」とした部分は、こうした“algorithmic governance × administrative law/procedural justice”文献群に依拠しています。(royalsocietypublishing.org)


5) 要するに、何に依拠して“潮流”と言っているのか

私が「潮流」と言うときの根拠は、だいたい次の4種類です。

  1. 分野を定義した古典(概念装置の提示):Majone(規制国家)、Rhodes(ガバナンス)、Koh(TLP)、Kingsburyら(GAL)(Cambridge University Press & Assessment)

  2. 法学内部での方法論・運動の制度化:JELS創刊序文、ELS概説・ハンドブック(Wiley Online Library)

  3. 実装・執行設計を軸にした学際の定番:Responsive Regulation(John Braithwaite)

  4. 新領域(AI等)で行政法原理を再定式化する近時研究:Oswald、Henderson & Krass、Kinchin など(royalsocietypublishing.org)


(続く)

2014/07/04

今年の租税法史研究会@Cambridgeのペーパーが、アップされていた

2年に1回、夏なのでそろそろかと思っていたら、ここであった。本になるのが楽しみ。

2024/10/12

諸富・宮本・篠田編著『デジタル時代の税制改革』

諸富・宮本・篠田編著『デジタル時代の税制改革』は、「100年ぶりの国際課税改革の分析」という副題のとおり、2つの柱を中心として近年の改革の意義と限界を論ずる論文集。

財政学者と租税法学者の共同研究の成果。序章と第8章が全体像、第1章から第3章が2つの柱に関する検討、第4章と第5章が米国との関係、第6章がEUとの関係、第7章がGloBE情報申告書。一読して、次の点がとくに印象に残る。

  • Pillar One多国間条約が発効しなくても新ルールが今後つねに参照されることになるという認識
  • GloBEが課税ベースに会計の数値を利用するものであるため会計基準ショッピングや会計基準間の競争が生ずること
  • 2017年米国GILTI創設が国際交渉におけるフォーカルポイントを作り出して合意を成立しやすくしたこと
  • ドイツのGloBE受容がCFC税制の相当の改変を伴っていること
  • GloBE情報申告書をCbCRとの比較でみていくという視点
  • 途上国の視点
さらに時間をかけて読んでみたい。この論文この紹介とも密接に関連する。

以下に目次をコピペしておこう。

序 章 新しい国際課税ルールの内容,その意義,直面する課題,そして税収効果(諸富 徹)

第1章 経済のデジタル化と「市場国」への課税権配分を巡る論理の変遷(篠田 剛)

第2章 利益Aに係るデジタル課税の意義と課題──移転価格税制の経験を踏まえて(江波戸順史)

第3章 グローバル・ミニマム課税における所得合算ルール(IIR)──税法と会計の関係(中嶋美樹子)

第4章 TCJA2017におけるアメリカ法人税の国際課税方式の変更に関する議論とその影響(吉弘憲介)

第5章 グローバルタックスガバナンスへのアメリカのパワーの影響──「BEPS2.0」第2の柱を素材として(松田有加)

第6章 EUにおけるGloBEルールの受容──ドイツでの国内法制化を中心に(辻 美枝)

第7章 BEPS2.0第2の柱におけるGloBE情報申告書の意義と手続保障(金山知明)

第8章 経済のデジタル化に伴う国際課税の動向と課題(宮本十至子)