29 January 2026

(続き、これでおしまい)文献バイアスのチェック

 【これまで】

1)租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

2)以上を、法学全体の研究潮流の中で、位置づけよ

3) 上記の「法学全体の研究潮流」は、どんなソースに依拠して、記述しているのか?

【今回】

この3)の結果をみると、リンク先の文献が存在することは確認できた。しかし、参照している文献に偏りがあるのでは、と気になる。そこで、文献バイアスのチェックをやってみよう。ちょっと迂遠なやり方だが、別のプロンプトで、次のようにきいてみた。

4) いま、法学は何が面白いか?日本語文献に加え、英語・仏語・スペイン語・中国語の文献にも目を配って、公法学・私法学・基礎法学を問わず、解説せよ

すると、ChatGPTは次のテクストを生成してきた。思考時間58秒。


以下引用++++++++++++++++++++++++++++

以下は、2026年初頭の時点で「いま法学が面白い」と言える論点を、公法・私法・基礎法を横断して“研究の争点(research frontier)”として整理したものです。結論から言うと、**対象(社会の変化)方法(研究技法)**が同時に更新されているのが、いまの面白さの源泉です。


1. いま法学が面白い理由(総論)

対象が「国家×市場×技術×地球」に拡張した

  • AI・データ・プラットフォームが、行政・企業・司法・生活を貫く“新しいインフラ”になり、憲法・行政法・民刑法・知財・国際法まで一気に接続されました(例:AIの透明性、説明責任、著作権、差別、国家安全保障)。EU AI Actの施行スケジュールを見ても、規制が「理念」から「執行・実装」段階に入っています。 (Sénat)

  • 気候変動は、環境法だけでなく、行政訴訟・憲法(将来世代)・会社法(取締役の注意義務)・金融規制(サステナブル投資)・国際法(適応・損失と損害)を束ねる巨大テーマになっています。 (ロンドン政治経済学校)

方法が「ドグマ」一辺倒から“混成(ハイブリッド)”へ

  • 実証・計量・計算社会科学が、解釈学と競合するのでなく接合され始めています(判例・立法過程・行政裁量・契約文言・制裁実務のデータ化)。欧州でも Empirical Legal Studies の組織化が進み、学会・会議のインフラが整っています。 (Esels)

  • 生成AIが、研究対象であると同時に研究手段になり、「法学の知の生産」自体が問い直されています(引用の真正性、学説形成の速度、教育の再設計)。 (papers.ssrn.com)


2. フロンティア①:AI・データ・アルゴリズム統治(Digital/AI Governance)

何が面白いか(争点)

  • 規制の型:リスクベース(EU)/推進法型(日本)/行政的統制+産業政策の複合(中国)など、設計思想が分岐し、比較法がそのまま政策論になる。 (Sénat)

  • “法の実装”:条文解釈だけでは終わらず、監督当局・標準化・監査・ガバナンス文書(チャーター)まで含む「制度生態系」を読む必要がある(公法と私法の境界が溶ける)。フランス行政裁判所(Conseil d’État)の司法内部向けAI利用憲章は象徴例。 (Conseil d'État)

  • 法学の教育・実務も巻き込む:AIがリサーチや起案を代替し、法曹・裁判・行政の職能設計が再編される。 (inlibra.com)

言語別「入口」文献(例)

  • 日本語:AI規制論の整理(法科大学院ローレビュー) (sllr.j.u-tokyo.ac.jp)/日本のDXと法(『法律時報』特集) (nippyo.co.jp)/日本のAI法(e-Gov・内閣府まとめ) (e-Gov 法令検索)

  • 英語:生成AIと法学研究の将来(SSRN) (papers.ssrn.com)

  • 仏語:生成AIと法曹職、EU AI規則の射程(仏上院報告) (Sénat)/行政裁判所のAI利用憲章 (Conseil d'État)

  • 独語:法のデジタル化(Max Planck系の論集) (pure.mpg.de)/EU AI規則(KI-VO)運用論点(BeckのRDi) (RSW)

  • 西語:デジタル法・フロンティア技術の特集号(IUS ET SCIENTIA) (revistascientificas.us.es)/民主主義とAI・DSA等(Revista de Derecho Político) (revistas.uned.es)

  • 中国語:デジタル法学の研究動向(人大・月報) (lti.ruc.edu.cn)/ネット法治・AIガバナンスの年次報告(CAICT等) (caict.ac.cn)


3. フロンティア②:プラットフォーム規制・ダークパターン・情報環境

何が面白いか(争点)

  • 表現の自由・消費者保護・競争政策・個人情報保護・刑事法(詐欺・名誉・ハラスメント)が、**同じ現場(UI/UX・推薦アルゴリズム・広告)**に折り重なる。

  • 研究は「価値」だけでなく「設計」へ:ダークパターン研究のように、法学がHCIや実証レビューと接続して“規制の対象定義”そのものを作っていく。 (サイエンスダイレクト)

  • 日本でもプラットフォーム規制を包括設計する科研プロジェクトが走っており、学界側の研究組織化が見える。 (KAKEN)


4. フロンティア③:気候訴訟・将来世代・サステナビリティ(公法×私法の合流)

何が面白いか(争点)

  • 訴訟が政策を動かす(政府枠組み訴訟/企業責任訴訟)。世界の年次スナップショットが整備され、比較研究が急速に進む。 (ロンドン政治経済学校)

  • グローバル・サウスの法形成:北だけが規範を作る構図が揺らぎ、気候訴訟の地図が塗り替わる。 (OUP Academic)

  • 会社法・金融法の中核化:サステナブル投資、取締役の義務、開示とグリーンウォッシュ規制は、私法の“周縁”ではなく中心争点。 (OUP Academic)


5. フロンティア④:法秩序の分断と接続(地政学・経済安全保障・越境規制)

何が面白いか(争点)

  • データ移転・輸出管理・制裁・サプライチェーンなどで、国際法・国内公法・私法(契約・準拠法・仲裁)が同時に動く。

  • “一つのグローバル法”ではなく、複数レジームが並立する 断片化/多元的法秩序(legal pluralism) を、どう統治するかが基礎法学・法理論のど真ん中になっています(AIと多元秩序を結ぶ議論も出ている)。 (ResearchGate)


6. フロンティア⑤:研究手法としての「データ化された法学」

何が面白いか(争点)

  • 判例・立法・行政裁量・監督執行のデータを用いて、**解釈学の前提(何が問題になっているか)**を経験的に描ける。

  • ただし「正しさ」は自動では出ない:生成AIの利用は、引用・判例参照の真正性問題を露呈させ、学術倫理・プロセス設計が研究テーマ化しています(実務でも“ハルシネーション事件”が問題視)。 (Cinco Días)


7. 6言語で読むための、最小限の“棚”の作り方(実務的提案)

  • 共通テーマで束ねる:AI/気候/プラットフォーム/越境規制/手法(実証)で文献を集めると、言語をまたいで比較しやすい。

  • 各言語で「年次報告」「特集号」「官庁白書」を起点にする

    • 日本:特集号(DX×法) (nippyo.co.jp)

    • 仏:上院報告・司法内部ガイドライン (Sénat)

    • 独:専門誌エディトリアル(AI規則の適用局面) (RSW)

    • 西:デジタル法の特集号 (revistascientificas.us.es)

    • 中:ネット法治・デジタル法学の年次/月次動向 (caict.ac.cn)

    • 英:SSRN+大学研究所レポート(気候訴訟など) (papers.ssrn.com)



【とりあえず、これでおしまい】

(さらに続き)ChatGPT、租税法の研究動向を語る

【これまで】

1)租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

2)以上を、法学全体の研究潮流の中で、位置づけよ

【今回】

ちょっと大風呂敷を広げている感じがしたので、ハルシネーションではないかどうか、確認してみた。

Q 上記の「法学全体の研究潮流」は、どんなソースに依拠して、記述しているのか?

これに対する応答は、以下の通り。所要時間52秒。


以下引用***********

上記の「法学全体の研究潮流」は、特定の1冊に依拠した叙述ではなく、(少なくとも英語圏を中心とする)法学の“プログラム論文/概念史的整理/方法論宣言”として広く参照される文献群を、いくつかの軸で**総合(triangulation)**して描いたものです。依拠したソースの「類型」と「代表文献」を、私が使った対応関係が分かるように整理します。


1) 「ガバナンス転回(規範中心→統治・実装中心)」の根拠

ここは、行政法・規制研究・公共政策の交点で形成された“regulatory state / governance”系の古典と、法学内部の “New Governance” 論が柱です。

  • **Regulatory state(規制国家)**の概念化:Majone「From the Positive to the Regulatory State」など(規制による統治へのシフトを説明)(Cambridge University Press & Assessment)

  • **Governance(governing without government)**の整理:Rhodes「The New Governance」(SAGE Journals)

  • 法学内部での“New Governance”宣言:Lobel「Setting the Agenda for New Governance Research」(規制領域横断の研究潮流として提示)(scholarship.law.umn.edu)

私の叙述で言う「正当化だけでなく、誰が・どの手続で・どう運用するかへ」という部分は、この系譜(規制国家+新ガバナンス論)に依拠しています。(Cambridge University Press & Assessment)


2) 「トランスナショナル化(国内法の閉域→国際的ルール形成・ソフトロー・相互運用)」の根拠

ここは、国際法/国際関係法の側の“トランスナショナル法過程”と、国際機関・私的主体を含む規制の「行政法化」を論じる潮流が柱です。

  • Transnational Legal Process:Koh「Transnational Legal Process」(国家・非国家アクターが複数フォーラムで規範を“作り・解釈し・執行し・内面化する”という枠組み)(UNL Institutional Repository)

  • Global Administrative Law(グローバル行政法):Kingsbury/Krisch/Stewart「The Emergence of Global Administrative Law」(国際機関等の意思決定に、手続・理由提示・審査など行政法的コントロールが立ち上がるという整理)(Duke Law Scholarship Repository)

私の叙述で「条約だけでなくモデルルール・ソフトローが実質拘束」「法源・正統性が前景化」としたのは、この2つ(TLP+GAL)の議論枠組みを下敷きにしています。(UNL Institutional Repository)


3) 「実証・社会科学化(Empirical/Socio-legal turn)」の根拠

ここは、**Empirical Legal Studies(ELS)**の制度化を示す編集序文・ハンドブック類と、法と社会(socio-legal studies)の系譜です。

  • JELS創刊と方法論宣言(ELSの自己定義・制度化の指標):Eisenbergら「Editor’s Introduction」(Journal of Empirical Legal Studies, 2004)(Wiley Online Library)

  • ELSの概説・位置づけ:Eisenberg「The Origins, Nature, and Promise of Empirical Legal Studies」(2011)や、Oxford Handbookの導入部(ELSの国際的拡がりにも言及)(scholarship.law.cornell.edu)

  • 規制研究と“応答的規制”(法執行のデザインを社会科学と結ぶ代表作):Ayres & Braithwaite『Responsive Regulation』(1992)(John Braithwaite)

私の叙述で「解釈学だけでなく制度効果の検証が標準化」「コンプライアンス研究が方法論的に拡張」とした部分は、ELSの制度化(JELS等)+応答的規制の流れに依拠しています。(Wiley Online Library)


4) 「データ化・AI化(アルゴリズム行政/手続保障の再設計)」の根拠

ここは比較的新しい領域なので、行政法原理(適正手続・説明責任・裁量統制)を、アルゴリズム意思決定にどう移植するかを論じる研究が中心ソースです。

  • 公共部門におけるアルゴリズム意思決定と行政法原理:Oswaldら「Algorithm-assisted decision-making in the public sector…」(2018)(royalsocietypublishing.org)

  • アルゴリズムが「ルール」か「ガイダンス」か(手続法=APA等との接続):Henderson & Krass「Algorithmic Rulemaking vs. Algorithmic Guidance」(2023)(jolt.law.harvard.edu)

  • 「手続的正義」や“voice(聴聞・参加)”の欠落を論じる近時研究:Kinchin「Voiceless: the procedural gap in algorithmic justice」(2024)や、due process by design(2025)(OUP Academic)

私の叙述で「説明可能性・バイアス・適正手続・救済が中核論点」とした部分は、こうした“algorithmic governance × administrative law/procedural justice”文献群に依拠しています。(royalsocietypublishing.org)


5) 要するに、何に依拠して“潮流”と言っているのか

私が「潮流」と言うときの根拠は、だいたい次の4種類です。

  1. 分野を定義した古典(概念装置の提示):Majone(規制国家)、Rhodes(ガバナンス)、Koh(TLP)、Kingsburyら(GAL)(Cambridge University Press & Assessment)

  2. 法学内部での方法論・運動の制度化:JELS創刊序文、ELS概説・ハンドブック(Wiley Online Library)

  3. 実装・執行設計を軸にした学際の定番:Responsive Regulation(John Braithwaite)

  4. 新領域(AI等)で行政法原理を再定式化する近時研究:Oswald、Henderson & Krass、Kinchin など(royalsocietypublishing.org)


(続く)

(続き)ChatGPT、租税法の研究動向を語る

【ひとつ前】租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

【その続きがこのページ】

続いて、次のプロンプトを打ち込んだ。

以上を、法学全体の研究潮流の中で、位置づけよ

すると即座に、以下のテクストが生成された。


以下引用*********************

法学全体の研究潮流(とくに2000年代後半〜現在)を大きく捉えると、租税法研究の国際化・学際化は、次の「大きな潮流」の交点に位置します。そこで「租税法の流れ(BEPS 2.0/透明化・執行/コンプライアンス/AI)」を、法学一般の地図に落とし込みます。


1. 法学全体の大潮流:規範中心から「統治・実装・データ」へ

近年の法学は、分野横断で次の方向に寄っています。

(1) “規範の正当化”だけでなく、“統治(governance)”の設計論へ

  • 何が正しいか(権利・正義)に加え、誰が・どの手続で・どのデータで・どう運用するかが研究の中心課題に。

  • 行政法・規制法・企業法・国際法で共通するキーワードは、レギュラトリー・ガバナンス/グローバル行政法/多中心的統治(polycentric governance)/実装(implementation)

→ 租税法の「透明化・執行協力・申告インフラ・紛争処理」は、このガバナンス転回のど真ん中です。

(2) 国内法の閉域から「トランスナショナル化」へ

  • 条約だけでなく、**国際機関の基準、モデルルール、ソフトロー、相互運用(interoperability)**が実質的に国内制度を拘束する。

  • 法源論・憲法論・民主的正統性(正当性)論が、再び前景化。

→ OECD主導のBEPS 2.0と、UN枠組条約化の動きは、まさに「法源と正統性」をめぐる法学一般の関心に直結します。

(3) 実証・経験科学との接続(Empirical/Socio-legal turn)

  • 立法論・政策論で、**実証(統計・因果推論)社会科学的説明(行動・規範・信頼)**を組み込むのが標準化。

  • これにより、法学は「解釈学」だけでなく、制度の効果検証を含む学問編成に。

→ コンプライアンス/tax morale/ナッジ/執行の最適化は、この潮流の租税法版です。

(4) デジタル・データ化と法:手続保障の再設計

  • AI・アルゴリズムによる選別、データ連携、リアルタイム規制が進むほど、説明可能性・バイアス・適正手続・救済が中核論点に。

  • 行政法・刑事法・個人情報保護法・競争法などが交差。

→ 税務行政3.0(リスク選別、第三者情報、プラットフォームデータ)は、法学全体の「デジタル行政/データ統治」研究の一部です。


2. 租税法研究動向は、法学的には「規制・行政・国際秩序」の結節点

上の大潮流に照らすと、租税法の国際化・学際化は、分野配置として次のように整理できます。

(A) 国際秩序形成(国際法/国際経済法/グローバル行政法)

  • BEPS 2.0・Pillar Twoは、租税法というより国際的ルール形成と国内実装の研究対象。

  • 典型論点:ソフトローの拘束力、国内立法裁量、正統性、フォーラム競合(OECD↔UN)、紛争処理。

(B) 行政法・規制法(執行、プロセス、裁量統制)

  • 情報収集、リスク選別、調査、制裁、争訟というプロセス法が前景化。

  • 典型論点:適正手続、比例原則、説明責任、司法審査の在り方。

(C) 企業法・金融法・会計(ガバナンス/開示/リスク管理)

  • 税務が企業の内部統制・開示・ESGと結合し、租税法が企業統治インフラの一部になる。

  • 典型論点:税務リスクの取締役責任、開示の標準、ステークホルダーとの関係。

(D) 刑事法・制裁論(抑止+規範)

  • 脱税・不正・制裁の設計は、刑事法理・行政制裁・行動科学が交わる領域へ。


(続く)


ChatGPT、租税法の研究動向を語る

 窮屈な場所での長い待ち時間に、ChatGPTに聞いてみた。

Q 租税法の研究動向を、国際的・学際的視野の下で、説明せよ

すると、以下のテクストが生成された。所要時間25秒。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

以下は、**国際的(制度形成の場・各国実装)学際的(法学×経済学×会計×政治学×心理学×情報科学)**の両軸から見た、近年(とくにBEPS 2.0以後)の租税法研究動向の「見取り図」です。


1. 国際租税秩序の再設計が、研究の“主戦場”になった

(1) グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)を中心に、国内法・条約・会計・執行が一体化

  • GloBE(IIR/UTPR/QDMTT)実装が進むにつれ、研究テーマは「理念」から実務に耐える法技術へシフトしています(立法選択、定義、セーフハーバー、申告・情報報告、二重課税調整、紛争処理)。(OECD)

  • 2026年1月には、“Side-by-Side package”(共存・並立の枠組み)が提示され、特定国制度との整合や、QDMTT・申告(GIR)負担の位置づけが論点化しています。(OECD)
    → 研究としては、①「国際合意の法的性質(ソフトローの拘束力)」、②「国内実装の裁量と限界」、③「企業グループ課税の再構成(連結ベースの租税法理)」が中心課題です。

(2) Pillar Oneは“全面合意”より、部分モジュール(Amount B等)へ:TP研究が再編

  • Amount B(基礎的マーケ・販売活動の簡素化)がTPガイドラインに組み込まれ、2025年以降の適用選択が制度設計論点になっています(適用範囲、比較可能性、紛争予防)。(OECD)

(3) UN税条約化の動き:国際課税の“フォーラム競合”が研究対象に

  • 国連では**国際租税協力の枠組条約(Framework Convention)**をめぐるプロセスが進行し(交渉プロセスは2025–2027を目標とする説明もある)、OECD中心の秩序と並走する形で、正統性・包摂性・配分正義が強く論じられています。(financing.desa.un.org)
    → 「誰がルールを作るのか(ガバナンス)」と「どの価値を優先するのか(配分・開発・税源配分)」が、法解釈論そのものに影響する局面が増えています。


2. “執行・透明化・情報”が、租税法を情報法・刑事法・行政学へ接続した

  • 自動的情報交換、受益者情報、プラットフォーム課税、実質的支配者、ペナルティ設計など、透明化インフラが租税法の中核テーマとして定着。

  • 研究の焦点は、

    1. データ収集権限とプライバシー/適正手続(憲法・人権・行政手続)

    2. 国境を越える執行協力(国際行政法)

    3. 刑事・制裁の最適設計(刑事法・行動経済学)
      へ広がっています。
      → “課税要件論”だけではなく、情報→リスク選別→調査→争訟という「税務行政のプロセス法」が、研究フロンティアになっています。


3. 企業租税法は「会計・ガバナンス・サステナビリティ」と融合

  • 税務は企業の**ガバナンス(取締役の監督、税務リスク管理、開示)**と不可分になり、会計(不確実性、引当、実効税率)と一体で論じられます。

  • ESGの文脈では、**“tax transparency / responsible tax”**が、ソフトロー(開示基準・投資家要請)として企業行動を拘束し、法規範との交錯が研究テーマに。


4. 学際化の中心は「実証」「行動」「計量」:租税法研究の方法論が変わった

(1) 実証(Empirics)の標準化

  • 租税法の議論が、判例・条文解釈に加えて、ミクロデータ分析、自然実験、差の差分析、RCT、フィールド実験などを前提に組み立てられる場面が増加。

  • “租税法学”が、**法政策評価(リーガル・ポリシー・アナリティクス)**へ寄ってきています。

(2) 行動科学(tax compliance / tax morale)

  • 「なぜ人は税を払うのか」を、制裁だけでなく、社会規範・信頼・手続的公正・ナッジで説明し、制度設計(申告簡素化、通知文言、第三者報告)に落とし込む研究が定着。

(3) AI・デジタル化:税務行政3.0と法的統制

  • AIによるリスク選別、電子インボイス、リアルタイム報告、プラットフォームデータ連携が進み、論点は

    • アルゴリズムの透明性・説明可能性

    • 差別・偏り(バイアス)と救済

    • 自動化された不利益処分の適正手続
      へ展開。租税法が情報法・行政法・統計倫理と接続します。


5. 比較法・政治経済学の再評価:税は「制度の産物」として研究される

  • 同じ“所得課税”でも、執行能力、社会保障、財政連邦制、地方税体系、政治文化で機能が変わるため、比較制度論が強まっています。

  • とくに国際課税では、国内政治(産業政策・対外関係)と租税立法が直結するため、**政治経済学(誰が得て誰が負担するか)**が解釈・立法論に入り込む傾向が顕著です。


研究動向を一言でまとめると

  1. 国際協調(OECD/UN)×国内実装が中心軸になり、

  2. 租税法は情報・執行・会計・ガバナンス・行動科学・AIへ接続して、

  3. 「解釈」だけでなく**制度運用と効果(実証)**を含む総合領域へ拡張しています。


(続く)

23 January 2026

閣議決定で、グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置を令和8年度改正で講ずることに

 これであるSbS packageを受けたもの。冒頭のパラグラフを引用しておく。

グローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)は、各国の法人税引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境を整備するため、多国籍企業に対して各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組みであり、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトの一環として、令和3年に約140カ国・地域が参加するOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」において合意され、我が国としても法制化した。

その上で、国際課税システムの安定化等の観点から、グローバル・ミニマム課税と、独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について、令和7年6月以降「BEPS包摂的枠組み」において交渉が行われ、令和8年1月5日に合意が成立したことから、当該合意に則り、令和8年度税制改正において、次のとおり我が国制度の見直しを行うこととする。

06 January 2026

昨夜のOECD SbS packageへの各界反応まとめ

昨夜のリリースから丸1日たたないうちに、世界中でいろんなコメントがとびかっている。ChatGPTに調べさせたら、リンク付きで、下記引用のまとめがでてきた。

  • リンク先をたどってみると、かなり裏が取れている印象
  • ただし6)については「実務家がこういっている」というリンクは付いておらず、OECD文書へのリンク
  • 日本の記事については、「今回(2026年1月5〜6日頃の報道)は、国内ではまず通信社(ロイター/共同)電が流れ、それを地方紙サイトやポータルが掲載する構図が強いように見えます」とな

ーー以下引用ーーーーーーーーーーーーーーー

主要な反応の整理(リンク付き)

1) OECD自身の位置づけ(「安定・確実性」「途上国の一次的課税権」)

OECDは、147の包摂的枠組み参加国・地域が「グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の協調運用の今後(way forward)」に合意したとし、“side-by-side”(既存ミニマム課税との並立)を通じて国際課税アーキテクチャの安定性・確実性を確保する、という語り口です。また「特に途上国の一次的課税権(first taxing rights)の保護」を強調しています。 (OECD)


2) 米国政府(財務省):明確な「非適用」・主権フレーミング

米国財務省は、今回の合意を「米国本社(U.S.-headquartered)の企業はPillar Twoの適用を免れ、米国のグローバル・ミニマム課税(米国ルール)のみが適用される」という成果として説明し、米国の主権R&Dクレジット等のインセンティブ価値の保護を前面に出しています。 (U.S. Department of the Treasury)


3) EU/加盟国(例:アイルランド):確実性を歓迎しつつ「2029年レビュー」で歯止め

アイルランド政府は、SbSパッケージ採択により、制度全体としての**certainty / stability(確実性・安定性)**が高まる点を歓迎しています。他方で、**2029年のstocktake(点検)**を明示し、リスクや競争力上の問題が生じた場合に是正する枠組みも強調しています(欧州委員会の影響評価にも言及)。 (gov.ie)


4) 産業界・ビジネス団体:実務負担の低減、二重課税回避、予見可能性

産業界の反応は概ね「理念」よりも、コンプライアンス/二重課税/予見可能性の観点から肯定的です。

  • **NAM(全米製造業者協会)**は、投資・雇用・競争条件の観点から「大きな勝利」と位置づけ、確実性が増す点を強調しています。 (NAM)

  • **NFTC(全米対外貿易評議会)**は、SbS統合に伴う「意図しない影響」を最小化する観点から、今後のOECDガイダンス精査と関与を表明しています。 (National Foreign Trade Council)

  • **ICI(投資会社協会)**は、セーフハーバーが米国ビジネスを「重複する外国ミニマム課税」から守る点で、議会・政権の方針と整合的だと述べています。 (ici.org)


5) 市民社会・タックスジャスティス系:強い「後退」「骨抜き」批判

タックスジャスティス/透明性を掲げる団体は、SbS合意を「実質的な米国多国籍企業の保護(適用除外)であり、Pillar Twoの趣旨を弱める」と批判しています。

  • Tax Justice Networkは、OECDが“side-by-side system”により米国を免除する形になったと批判的に評価しています。 (Tax Justice Network)

  • FACT Coalitionは、米国企業がPillar Twoの主要要素から引き続き免除されることは、法人税回避との戦いにとって「後退」だと述べています。 (The FACT Coalition)


6) 実務家・テクニカル論点:SbS/UPEセーフハーバーの運用効果が焦点

実務面で最も注目されているのは、SbSおよびUPEセーフハーバーの「効き方」です。Side-by-Side Packageでは、例えば以下が明示されています。

  • SbSセーフハーバー:UPEが「Qualified SbS Regime」所在なら、選択により当該年度のIIR/UTPR上のTop-up Taxをゼロ扱いにするメカニズム。 (OECD)

  • UPEセーフハーバー:2026年1月1日以降開始年度から適用、UTPR上、UPE所在国分のTop-up Taxをゼロ扱いにし、適格要件として少なくとも**名目法人税率20%**などを掲げています(QDMTTの運用には影響しない旨も明記)。 (OECD)


参照リンク(一次資料)


報道ベースの概況(参考:リンク集)

05 January 2026

OECDのPillar Two(GloBE)Side-by-Side Package(2026)が出た

年を越して公表。BEPS包摂的枠組み(IF)の合意だ。OECD (2026), Tax Challenges Arising from the Digitalisation of the Economy – Global Anti-Base Erosion Model Rules (Pillar Two), Side-by-Side Package: Inclusive Framework on BEPS, OECD, https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/topics/policysub-issues/global-minimum-tax/side-by-side-package.pdf.  

グローバル・ミニマム課税の実施に関するAdministrative Guidanceだ。プレスリリースによると、5つの構成要素がある

The package includes five key components:

First, a series of simplification measures will reduce compliance burdens for multinational enterprises (MNEs) and tax authorities in calculating and reporting under the global minimum tax rules.

Second, the package further aligns the treatment of tax incentives globally through the introduction of a new targeted substance-based tax incentive safe harbour.

Third, new safe harbours are available to MNE Groups having an ultimate parent entity located in an eligible jurisdiction which meets minimum taxation requirements.

Fourth, the package includes an evidence-based stocktake process to ensure a level playing field is maintained for all Inclusive Framework Members.

Fifth, the package reinforces the objective that qualified domestic minimum top-up tax regimes remain a primary mechanism in the global minimum tax framework for ensuring the protection of local tax bases, particularly in developing countries. 

とのこと。(例によって)解読に時間のかかる88頁の文書だが、パッケージの骨子はこんな感じ。

1) Material simplifications

  • Simplified ETR Safe Harbour(恒久的)
  • Transitional CbCR Safe Harbourの1年延長

2) Substance-based tax incentives

  • Substance-based Tax Incentive Safe Harbour→QTI(Qualified Tax Incentive)

 3) Side-by-Side (SbS) system

  • SbS Safe Harbour
  • UPE Safe Harbour
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27 December 2025

令和8年度税制改正の大綱、閣議決定

2025年12月26日、政府が「令和8年度税制改正の大綱」を閣議決定。冒頭の文章を箇条書きに直して、そのまま引用する。

  • 物価高への対応の観点から、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みを創設するほか、就業調整に対応するとともに、中低所得者に配慮しつつ、所得税の課税最低限を178 万円まで特例的に先取りして引き上げる。
  • 「強い経済」の実現に向けた対応として、大胆な設備投資の促進に向けた税制措置を創設するほか、租税特別措置等の適正化の観点から、賃上げ促進税制の見直しや研究開発税制の強化等を行う。
  • 税負担の公平性を確保する観点から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し等を行う。
  • このほか、自動車関係諸税について、自動車税等の環境性能割の廃止や軽油引取税の当分の間税率の廃止等を行う。
  • また、国際観光旅客税の税率の引上げや防衛特別所得税(仮称)の創設等を行う。
【財務省サイト】
      • 令和8年度税制改正要望 HTML ※令和7年8月29日時点での税制改正要望となります。
      • 税制改正の大綱 PDF
      • 税制改正の大綱の概要 PDF
【総務省サイト】

上記引用の冒頭の文章と対比させる趣旨で、自由民主党と日本維新の会による与党税制改正大綱の「基本的考え方」を引用しておく。

  • まず、足元の物価高への対応として、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みを創設した。また、長年にわたって据え置かれてきた税制上の基準額について、網羅的な点検を行い、マイカー通勤に係る通勤手当や従業員への食事の支給に関して所得税が非課税となる限度額など、暮らしに関わる分野を中心に見直しを行い、物価高への対応を行った。また、物価高を超える賃上げの実現に向けて、賃上げ促進税制については、措置期間中ではあるが、臨機応変に対応する考えの下、防衛的賃上げに苦しむ中小企業に特化した形に見直す。
  • 「強い経済」を実現するために、大胆な設備投資促進税制を創設し、高付加価値化型の設備投資を強力に後押しする。他方、設備投資時のキャッシュフローを支援するとともに、設備投資後の収益で財政を支える償却制度を積極的に活用することで複数年の財政均衡に配慮した制度とした。さらに、貯蓄から投資への流れを後押しするNISAについては、つみたてNISAの拡充の一環として、国内市場を対象とした一定の株式指数を新たに追加する。結果として、個人の現預金が国内経済に投資され、経済成長を後押しする流れが加速化されることも期待される。
  • 「強い経済」とともに「世界で輝く日本」の実現に向けて、AI・量子・バイオ等の戦略技術分野の研究開発を促進する観点から、研究開発税制について「戦略技術領域型」を創設するとともに、国内の研究人材や研究開発拠点を強化する観点から必要な見直しを行う。また、国際的な租税回避を防止し、企業間の公平な競争環境を整備する観点から、わが国が主導してきた国際課税のBEPSプロジェクトについても積極的に進めていかなければならない。
  • 租税特別措置等については、的を絞り、メリハリを明確にすることでインセンティブを大胆に強化する。また、賃上げや設備投資に積極的ではない企業については租税特別措置の適用除外とする制度の強化・拡充を断行し、積極的に挑戦する企業を集中的に支援する制度に変えていく。今後更なる適用拡大についても検討を行う。
  • 他方で、累次の法人税率引下げによって、企業の利益が設備投資・研究開発そして賃上げの原資として適切に投資されてきたのか、不断の検証と改革も求められる。
  • 税制の公平性の確保に向けては、現行制度を躊躇なく見直す。まず、国内外での公平性の確保については「国境を越えた電子商取引に係る消費税の適正化」等の見直しを行うほか、外国人旅行者向け免税制度や、国外居住親族に係る扶養控除等の適用についてもあり方を検討していく。また、不当廉売関税に係る迂回防止制度を創設し、不公正な貿易に対する措置の実効性と抑止力を高める体制の構築を行う。財政の再分配機能を高める一環として「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」の見直しを行う。さらに、税制への信頼感を著しく棄損する租税回避への対応として「貸付用不動産の評価方法」「インボイス制度導入に係る経過措置」を利用した租税回避について厳格に対応していくとともに、時代の変化にこれからも対応していく。また、「ふるさと納税」について、健全な運用に向けた見直しを行い、制度導入時の崇高な理念の実現に向けた改正を行う。
  • 住民生活に密着した行政サービスを支える地方公共団体の税収をしっかり確保するとともに、経済社会の構造変化に対応し、都市と地方もお互いに支え合うという基本的考えに立ち、偏在性の小さい地方税体系の構築に向けた具体的な取組みについて検討を行っていく。
  • また、デジタル化の進展に伴い、納税手続のデジタル化への対応を国税・地方税とも行うとともに「道府県民税利子割の清算制度」を導入する。今後も、デジタル化の進展による社会経済活動への変化に機敏に対応していく。
  • さらに、消費者が支払った消費税相当分が、全て納税されることなく、事業者の手元に一部残る要因となっている「インボイス制度導入に係る経過措置」については、これまでに決定した各種経過措置を含めて最終的に終了することを堅持しつつ、個人・中小事業者の対応状況等も踏まえた更なる配慮を行うために、見直しを行う。
  • 「基幹産業」としてわが国経済を牽引する自動車産業は、技術面や国際環境など、大きな変化を迎えている。こうした中、自動車関係諸税の見直しについて、わが国の技術的優位性を踏まえた「マルチパスウェイ」等の自動車戦略や国・地方の安定的な財源確保、カーボンニュートラル目標等を踏まえ、今後、車体課税・燃料課税を含めた総合的な検討を行う。
  • 恒久政策には安定財源が必要との考えの下、揮発油税等の当分の間税率廃止及びいわゆる教育無償化に係る財源確保、防衛力強化に係る財源確保について税制上の対応を行う。また、高校生年代の扶養控除の見直しについては、先行して住宅ローン控除や生命保険料控除が拡充されていることも念頭に、今後も真摯な議論を行っていかなければならない。
  • 最後に、財政健全化と積極財政の二項対立ではなく、両者の思想を包含する「責任ある積極財政」の方針の下、「温故知新」の言葉を噛み締めつつ、税制改正に終わりはなく、連綿不断の改革と検証を行っていく決意をもって、以下、令和8年度税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

25 December 2025

大企業の税務コンプライアンスを考える

大企業の税務コンプライアンスを考える」と題する講演を、日本租税研究協会の第77回租研大会記録に掲載していただいた。2025年9月17日に東京の日本工業倶楽部で口頭報告した原稿をもとに、当日にフロアからいただいたコメントを織り込んで活字にしたもの。

この講演では、5 つの問いをたてて、考えてみた。

  •  大企業の税務コンプライアンスがなぜ重要か
  • 協力的コンプライアンス(cooperative compliance)の研究状況はどうなっているか
  • 応答的規制(responsive regulation)の理論的基礎はどこまで強靭か
  • 日本の取組みはどうなっているか
  • 租税の確実性(tax certainty)は神話なのか

結果の一部を記すと、第2の点について、協力的コンプライアンスは、OECDの2013年報告書を基本文書として、内外で意欲的に研究されてきた。第3の点について、 応答的規制の理論的基礎は、協力的納税者と非協力的納税者の分布に依存しており、そのため両者をどう判別するかという課題がある。第4の点について、 日本の取組みとして、2011年から税務コーポレートガバナンスの働きかけがはじまり、対象拡大やインセンティブ付与をめぐって議論が続いている。このように、過去10年の議論状況を整理し、意見を述べることができた。

フロアから最も反応を得たのは、第5のtax certaintyに関する点で、"good enough" complianceを求めるべきだ、というPeter Barnes教授の指摘への共感が明らかに存在した。加算税の「正当な理由」や、企業がPillar Twoに対応するためのコンプライアンス・コストなど、まさに具体的な素材が関心事なのだとわかる。




23 December 2025

二羽のウサギを仕留める井上弁護士

井上康一・租税条約と国内税法―プリザベーション条項の歴史と意義(東京大学出版会2025)は、二兎を追う書物だ。一羽目は、「租税条約は国内租税法上の恩典を制限しない」というプリザベーション条項が確認規定である、という定説を覆すこと。二羽目は、租税条約解釈論を再構築すること。はしがきにそう書いてある。

本書から感銘を受けるのは、疑問に対して正面から向き合い、かつての自説を乗り越えようとする知的誠実さだ。かつて、2011年の共著において、井上弁護士はプリザベーション条項を確認規定ととらえ、租税条約解釈論を展開した。その真骨頂は個別条約規定を素材とする各論の検討にあり、私も高く評価してきた。他方で、プリザベーション条項の位置づけについては、いわば消極要件の不充足を念のためにチェックする、という意味をもつにとどまるというのが、2011年の共著を書評したおりに私が感じたことだった。今回新しく公表された本書は、プリザベーション原則は幻であり、プリザベーション条項が確認規定か創設規定かを議論する実益自体がない、という立場に到達している。井上弁護士はかつての自説を乗り越えたのである。

二羽目のウサギ、すなわち租税条約の再構築についてはどうか。一言で言えば、上書き特定型と違反審査型の二類型の提示によって、新たな境地を切り拓くことに成功している。松田浩道教授の問題提起を真摯に受け止めて、裁判例の悉皆的検討を行うなど、深く検討を重ねた成果だ。私は、松田説の租税条約解釈論上の意義に注目してきた一人であるから、この方向への井上弁護士の知的前進を慶賀したい。

本書カバー写真は、ブールデルの弓をひくヘラクレス。剛腕が二兎を射止める瞬間をとらえる。国立西洋美術館の前庭でみることができる。




09 December 2025

IFA日本支部でAvi-Yonah講演

Avi-Yonah教授が訪日し、東京でセミナーを開いてくれた。米国はGILTI/NCTIとCAMTでもってUS MNEに厳格な全世界所得課税をしているから、OECDはside-by-sideを受け入れるべきだ、という彼の主張を展開。米国系多国籍企業がexcess limit(15%限度額との関係で余裕のある状態)であればglobal blending(averaging)であろうが国別限度額管理であろうが違いはない、という数値例は、Should the OECD Accept GILTI as an Income Inclusion Rule?で展開していたことの要領のいい解説。さらに、同日付けのTax Notes International誌で公開されたCan Side by Side Work?の内容なども含まれていたが、記事自体は1か月はpaywallの中とのこと。共存を甘受せよ、という線を超えて、Rest of the Worldは(より優れている)米国型の制度を採用せよ、とまでいうところが刺激的。いわく、

The solution to these problems is for the OECD to follow the United States’ lead by abolishing SBIE and QRTC and require QDMTT countries to adhere to the same transfer pricing and sourcing rules that OECD countries have.

1時間の講演のあと、びっしり1時間、質疑応答ができた。通訳の方の優秀さが印象的。発言者名とともにテープ起こしが租税研究に掲載される予定。ここでは超速報版として、私の手控えでフロアからの質問骨子のみ書いておく。

  • 国別限度額方式は事務負担重いので、やめたら?
  • 国の競争力なのか、企業の競争力なのか?
  • Pillar 2をglobal blendingにしたら?
  • Side-by-sideに対するGlobal Southの反応は?
  • 「米国がUS MNEに厳格な全世界所得課税をしている」ということから、なぜ「OECDはside-by-sideを受け入れるべきだ」といえるのか?
  • Safe harborだけで十分では?
  • 「US MNEのほうが不利だ」というのは、米国内ではどう受け止められているか?
  • 米国以外でexcess credit(限度額超過)の国は?
  • Single Tax Principleとの関係は?
  • インドネシアのIFA会合?
  • Pillar 2のequity loss gain?
  • averagingはやはり大事?

セミナーのご案内は、IFA日本支部のウェブサイトで、以下のとおりだった。

2025年12月開催IFA 日本支部セミナー(対面形式)のご案内

 このたびIFA日本支部セミナーを日本租税研究協会との共催で下記の通り開催いたしますので、ご案内申し上げます。なお、今回は対面方式での開催となります(同時配信はありませんが、後日の録画配信があります)。

 みなさまのご参加をお待ちしております。

【日  時】2025年12月8日(月)13:30-15:30

【場  所】AP東京丸の内(千代田区丸の内1-1-3 日本生命丸の内ガーデンタワー 3F)

【内  容】The United States and Pillar 2

【講  師】ミシガン大学 Reuven S. Avi-Yonah教授

 講演は英語で行われますが、通訳がつきます。

 お申し込みはこちらから可能です。お申込みに必要なID・PWはお送りしたメールに記載されております。 

(2025/10/9)

東京地判令和7年1月16日(令和5年(行ウ)488)相続税更正処分等取消請求事件

いつも租税判例研究会の様子は、浅妻教授の「ブログだったもの」に詳しく掲載される。しかし今回はまだのようだ。私の聞き取り精度が低いため浅妻教授の代わりにはならないが、独断と偏見に基づきここにノートしておく。そのような性質のものなので、評釈者や発言者のお名前はあえて記さない。

【事案】親と子の間で借地権設定→親から子に現金贈与→相続時精算課税の選択→相続開始

【争点】本件借地権相当額を相続税の課税価格に加算すべきか?

【原告らの主張】原告ら(相続人)は、贈与税の除斥期間が過ぎているから加算すべきでないと主張した。

相続税法21条の15第1項にいう相続税の課税価格に加算すべき相続時精算課税適用財産というためには、特定贈与者からの贈与に係る贈与税について課税当局による課税権限の行使が可能であることが必要となる。そうすると、特定贈与者からの贈与に係る贈与税に対する更正決定等の除斥期間が経過したことにより、課税当局による課税権限の行使が不可能となった場合には、相続時精算課税適用財産として相続税の課税価格に加算することは許されない。

【判旨】 請求棄却

ア 原告らは、平成22年3月9日に提出した相続時精算課税選択届出書に係る財産の贈与を受けた平成21年以後の年である同年中に、対価を支払うことなく本件借地権相当額の経済的利益を受けたことにより、当該経済的利益を贈与により取得したものとみなされる(相続税法9条)。

 そのため、本件借地権相当額は、特定贈与者である亡Fからの贈与により取得した財産として相続時精算課税の適用を受けるものであって、原告らの贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されるものに該当する。これに対し、その該当性を否定する規定は相続税法その他関連法令において見当たらない。

 したがって、本件借地権相当額は、本件相続税の課税価格に加算されるべきものである。

【原告の主張に応答する判示部分(下線は増井による)】 

イ(ア)原告らは、上記第2の5(原告らの主張)(1)及び(2)のとおり、本件借地権相当額の贈与に係る贈与税に対する更正決定等の除斥期間は既に経過していたから、同贈与税について課税当局による課税権限の行使は不可能であり、本件借地権相当額は、本件相続税の課税価格に加算することができない旨主張する。

 しかし、相続税法21条の15は、相続税の課税価格に加算される相続時精算課税適用財産の範囲について、相続税精算課税制度の適用を受ける財産のうち「当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの」と規定するにとどまり、これを超えて、納税者の申告や税務署長の更正決定等により贈与税の課税価格に算入されたものとは規定していない。そのほか、同法の規定や本件全証拠によっても、原告らの主張を裏付ける規定や見解は見当たらない。

 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。

【フロアからの指摘】

  • もし相続時精算課税を選択していなかったら、贈与税については除斥期間により課税できない。このこととの対比では、結論のスワリがわるい。しかし21条の15の文言は「算入されるもの」となっており、「算入された」となっていないから、文言上、加算するほうが自然。
  • この判決が定着すると、相続時精算課税を選択せずに贈与税を脱税し、7年過ぎることをじっと待つと除斥期間を利用できることになる。これは相続時精算課税を使いやすくするという方向とは逆。
  • みなし贈与を加算するのは、文言上はそうならざるを得ないとはいえ、そもそも相続時精算課税制度の本来の趣旨に合致しているか?
  • 相続時精算課税の選択をしても、贈与税の除斥期間が進行するのか?
  • これはそもそも贈与税の除斥期間の問題ではない、と判断したからこそ、つれない判決文になっている。相続税の除斥期間だけの問題だ。
  • 相続時精算課税はいったん選択したら一生付きまとう制度だ。「一体化措置」という趣旨を厳格にセットとして理解する。
  • 判決文を読んだ段階では当たり前の判断だと考えたので、いろいろ論点を出してもらってありがたい。別の方向の議論として、贈与税につき課税処分を受けていなくても加算してよいのか。あるいは、仮に贈与税について処分を受けていたらそれと異なる加算は可能か。
  • 相続時精算課税においては、贈与税は仮の課税でしかない。それが誤っていたとして、本来の課税を直さなければならないわけではない。
  • 19条1項(7年加算)にも波及する判断であろう。自分たちの知らないところで贈与が起こっていたら、税理士の先生方が困る。
【増井のコメント】
  • 裁判所は贈与税除斥期間の問題ではないと考えて、21条の15の「算入されるもの」という文言からあっさりと理由を説示するにとどまったのだろう、というフロアの議論が腑に落ちた。
  • ChatGPTが、「相続税及び贈与税等に関する質疑応答事例(令和5年度税制改正関係)について(情報)」という文書を探してきたので、その 10頁の問2-4をみてみた。しかしそれは、「相続時精算課税に係る贈与により取得した財産について贈与税の除斥期間経過後に評価誤り等が判明した場合の相続税の課税価格に加算される金額」というもので、評価誤りのケースであって本件のようにそもそも加算しなかったケースではなかった。

05 December 2025

OECD (2025) Public trust in tax 2025で、アジア諸国のインタビュー調査

今回のPublic Trust in Tax 2025: Asia and Beyondは、継続してやってきたシリーズの第7版だ。今年は対象国が拡大し、過去最多となる29か国。2024年のラテンアメリカに焦点を当てた分析に続き、本年版ではアジアを深く掘り下げている。

【概要】
  • OECD、ACCA(英国勅許公認会計士)、CA ANZIFAC (国際会計士連盟)の共同調査
  • オンライン・インタビューの対象は、29か国、12,467名
  • 今回はとりわけアジア19か国を中心とし、税に対する認識(perceptions)、経験(experiences)、情報源への信頼(trust)をきいた
【Key Findings】
  • アジアでは「財政契約(fiscal contract)」の認識が比較的強い (The fiscal contract appears to be in better health in much of Asia and the Anglophone Pacific than in Western Europe and Latin America.)
  • アジア内でも国による差が大きい (Views on tax do however vary, sometimes significantly, within Asia.) →東南アジアは肯定的評価が強いのに対し、日韓は欧州型の厳しい評価に近いという結果
  • アジアの約8割の国で「税は能力に応じて公平に徴収されている」と回答した割合が多数派 (In 80% of the countries surveyed in Asia, but only in 20% of those outside Asia, more respondents agreed than disagreed that the tax system collects tax in an equitable way.)
  • ほぼ全ての国で、オンライン申告・情報提供の利便性が最も高い評価 (In all countries, respondents viewed the provision of online/digital tax services as the most positive experience of the tax administration.) →しかし情報の「理解しやすさ」は多くの国で課題→日独伊などでは税務行政全般の経験が相対的にネガティブ
【コメント】
  • 公表に必要な資金は日本政府が提供した、との追記が4頁にある
  • データセットはここ
  • "Accountants are the most trusted source of information on tax in almost all countries surveyed."という調査結果は、専門家への信頼という意味では自然かもしれないが、もしかしたらサンプルなどのバイアスがかかっている可能性も排除できない。ちなみにこの結果は、会計士以外の比較対象は、「税務当局・政治家・SNS・メディア・NGO・ビジネスリーダー」等で、それらとの比較で相対的にヨリ信頼できるか、を質問した結果だ



04 December 2025

最低賃金引き上げに関するthe Economistの記事

2025年11月22日号のEconomists get cold feet about high minimum wagesと題する記事は、興味深い。この記事は、最低賃金に関する経済学の知見が変遷してきたことを、次のように説明。

1)伝統的見解

  • 教科書的には「最低賃金は雇用を減らす」とされ、OECDも1990年代には慎重姿勢

2)1990年代半ば以降の転換

  • Card & Krueger(1994)→最低賃金引上げが必ずしも雇用減につながらない
  • Dube & Zipperer →雇用への悪影響は2010年代後半にはほぼゼロ近くまで縮小した
  • これらが各国政府に共有され、2010年代の最低賃金引上げラッシュ

3)揺り戻し

  • シアトルの大幅賃上げを分析した研究→低賃金労働者で、労働時間が減少(賃金は増加)、新規雇用減少
  • Hurstら(2023)→長期的には低所得層の雇用・所得・厚生を悪化
  • Bergerら(2024)→8ドルがthresholdだ
  • Farkas (2024)、 Liuら(2024)、Cho(2024)
  • MaCurdy (2015)→最低賃金に伴う物価上昇は州売上税よりも逆進的
  • Bilsら(2024) →ブラジルで高賃金者が得をする

以上の文献紹介を踏まえ、この記事は、長年賃上げを続けてきた今こそ、各国の政策担当者は慎重に歩を進める(tread carefully)べきだ、と結ぶ。この結びのところでは、(本来は政治的立場がthe Economist誌と対極にあるはずの)the Resolution Foundationの言葉を引用している。その言葉そのもののリンクは見つけられていないが、関連しそうなのがこれ

ところで、the Economistの記事は、依拠した論文の題名や掲載誌を明記しないスタイルで書かれている。そこで、ChatGPTで調べたら、次のリストを生成してきた。以下これをコピペする。

 Below are formal academic-style citations for every study and report referenced in the article, reconstructed in APA 7th edition format.

Where the article did not provide full bibliographic detail (typical for The Economist), I supply the correct full citation from the underlying academic literature.

These citations correspond to all works referenced in the PDF.


Formal Academic Citations (APA 7th Edition)

1. OECD (1994) minimum-wage position

Organisation for Economic Co-operation and Development. (1994). The OECD jobs study: Facts, analysis, strategies. OECD Publishing.


2. Card & Krueger (1994)

Card, D., & Krueger, A. B. (1994). Minimum wages and employment: A case study of the fast-food industry in New Jersey and Pennsylvania. American Economic Review, 84(4), 772–793.


3. Dube & Zipperer minimum-wage research database

Dube, A., Lester, T. W., & Reich, M. (2010). Minimum wage effects across state borders: Estimates using contiguous counties. Review of Economics and Statistics, 92(4), 945–964.
Zipperer, B., & Dube, A. (2024). Minimum wage research compendium [Database]. Economic Policy Institute / University of Massachusetts Amherst.
(Note: The Economist refers to their long-standing meta-database rather than a specific paper.)


4. Manning (2021) literature summary

Manning, A. (2021). The elusive employment effect of the minimum wage. Journal of Economic Perspectives, 35(1), 3–26.


5. Dube (2019) UK Government Review

Dube, A. (2019). Impacts of minimum wages: Review of the international evidence. Report commissioned by HM Treasury and the UK Low Pay Commission.


6. Seattle Minimum Wage Study (2015–2016; published 2022)

Jardim, E., Long, M. C., Plotnick, R., van Inwegen, E., Vigdor, J., & Wething, H. (2022). Minimum wage increases and low-wage employment: Evidence from Seattle. American Economic Journal: Economic Policy, 14(1), 315–351.


7. Hurst et al. dynamic adjustment paper

Hurst, E., Notowidigdo, M. J., & Şahin, A. (2023). The long-run effects of minimum wage increases on low-wage employment (NBER Working Paper No. 31570). National Bureau of Economic Research.
(The Economist refers to a “working paper by Erik Hurst and three co-authors.”)


8. Berger, Herkenhoff & Mongey (June 2024) threshold paper

Berger, D., Herkenhoff, K., & Mongey, S. (2024). Minimum wages and monopsony: Theory and evidence (NBER Working Paper No. 32412). National Bureau of Economic Research.
(Their finding: U.S. minimum-wage “distortion threshold” below $8/hour.)


9. Farkas (Columbia) working paper on scheduling

Farkas, H. (2024). Minimum wages and work schedule volatility (Working paper). Columbia University, Department of Economics.


10. Qing Liu et al. (2024) minimum wage and workplace injuries

Liu, Q., Lu, R., & Zhang, X. (2024). Minimum wages and workplace injuries: Evidence from China. Journal of Labor Economics, 42(2), 291–330.


11. Cho (University of Sydney) working paper on investment

Cho, D.-K. (2024). Minimum wages and firm investment: Evidence from administrative data (Working paper). University of Sydney.


12. MaCurdy (2015) price incidence of minimum wages

MaCurdy, T. (2015). How effective is the minimum wage at supporting the poor? National Bureau of Economic Research Working Paper No. 20827.
(Also appears in Journal of Political Economy, 2021, in revised form.)


13. Bils et al. working paper (Brazil bargaining spillovers)

Bils, M., González, L., & Mello, R. (2024). The distributional consequences of minimum wages: Evidence from Brazil (NBER Working Paper No. 31804). National Bureau of Economic Research.

27 November 2025

日米租税条約13条2(b)にいう「合衆国不動産持分」

法科大学院の「国際租税法」の授業で、日米租税条約13条2(b)にいう「合衆国不動産持分」ってどんな意味ですか、という質問があった。

これは、英文テキストでは"United States real property interest"のことだ。この用語については条約において定義されていない。だから3条2により、米国国内法上の意義による。より厳密にいうと、米国による条約の適用に際して、米国の国内法令において適用時に有する意義を有するものとする。つまり、日米租税条約13条との関係では、米国が源泉地国として課税する場合である。この場合、居住地国としての日本国は、23条1(a)により、条約の規定に従って米国において租税を課されていれば、外国税額控除を行うことになる。

このことを前提として、米国政府の技術的説明は 

Under section 897(c) of the Code, the term "United States real property interest" includes shares in a U.S. corporation that owns sufficient U.S. real property interests to satisfy an asset-ratio test on certain testing dates. The term also includes certain foreign corporations that have elected to be treated as U.S. corporations for this purpose. See section 897(i) of the Code. In addition, any distribution made by a U.S. real estate investment trust or certain U.S. regulated investment companies is taxable under paragraph 1 of Article 13 of the existing Convention (rather than under Article 10 (Dividends) of the existing Convention) to the extent that it is attributable to gains derived from the alienation of U.S. real property interests. See section 897(h) of the Code.

と解説している。米国の内国歳入法典897条はこれ

ちなみに、この質問がでてきた文脈は、次の議論をやっていた副産物だ。

  • 国際租税法第4版の第4章練習2③について、今回担当の吉村浩一郎さんが学生さんと質疑応答をしていた。
  • 2013年議定書の発効により、日米租税条約13条2が修正されて、(b)の「法人」が日本の内国法人だけでなく外国法人も含むようになった。
  • そのため、巻末の「考え方のヒント」がちと古くなっていた。
  • というのも、国際租税法第4版の基準時は2019年4月1日で、同年8月30日に議定書が発効したからだ。
  • 要するに、練習2③は、議定書発効前の状態を前提にしたものなので、改めて留意が必要。→第2刷のときに、いくつかの点を補正している

15 November 2025

第18回税務長官会議

ケープタウンで開かれる第18回税務長官会議(FTA PLENARY 2025)のアジェンダが発表されていました。びっしり2日半にわたって、以下の論題を扱うとのこと。開始前日の11月17日に、Tax Administration 2025が公開されるそうです。→FTAの報告書のこれまでの流れについてはこれ、税務行政3.0についてはこれ、さらに最近、おとといの税調専門家会合資料でもFTAの議論が紹介されています。

DAY 1: 18 November

SESSION I – INTRODUCTION

SESSION II – TAX GAPS AND COMPLIANCE BURDENS

SESSION III – TACKLING TAX DEBT

SESSION IV – TAX MORALE →日本から江島一彦国税庁長官が登壇

DAY 2: 19 November

SESSION V – NEXT STEPS ON TAX ADMINISTRATION 3.0

SESSION VI – ACCELERATING TRANSFORMATION JOURNEYS

SESSION VII – SUPPORTING VOLUNTARY COMPLIANCE

1. Effective taxpayer services (Main Plenary room)

2. Outreach and communication (Breakout room 1)

3. Influencing taxpayer behaviours (Breakout room 2)

SESSION VIII – TAX CRIME THREATS →武田一彦国税庁調査査察部長がChair of the Task Force on Tax Crimeとして司会

DAY 3: 20 November

SESSION IX – INTERNATIONAL TAX POLICY AND TAX CERTAINTY

The International Tax Policy Agenda →OECD CPAのManal Corwin局長とAchim Pross次長

SESSION X – CLOSING SESSION

Agreement of the Statement of Outcomes



05 November 2025

今日の法Ⅱ

10月から駒場の大学1年生のみなさんとご一緒に、「法Ⅱ」という授業で実定法学に入門している。教科書は森田(2020)。この本のChapter 1がすばらしいことはすでに述べた

Chapter 2の合意に関するストーリーも読み応えがあって、物々交換の世界→契約法の導入→貨幣の導入→評判による解決→反復継続による信頼形成ときて、Greif (JEH 1989)で閉じるあたり、まことに憎い構成だ。森田教授のonline appendixも参照。ただし、実定法学入門を標榜するぼくの授業では、貨幣を利用することを「契約法によらない対処法」(33頁)と表現している点については、注釈が必要だった。日本の実定法では、売買は代金の存在を前提としていて(民法555条)、契約法の規律を受けるからだ。

今日はChapter 3を読んで、要件・効果の組み合わせである「ルール」について考えた。

  • 作成主体、適用対象、実施主体の話がわかりやすい
  • ルールの望ましさの判定基準として、目的と手段を考えるというのも、法道具主義の本書らしいすっきりした話だ
  • サッカーのルールの具体例は、サッカーになじみのない読者を念頭に、もうすこし説明が必要(バックパスルールの例で「間接フリーキック」の意味がわからない方もいた)
  • 校則の具体例は、高校生活を送ったことのある若者にとって、とてもわかりやすい例
  • ルールの規律密度が高まっていく現象を、校則の「成長」や、センター試験(2020年度(2021年1月実施)をもって廃止され現在は大学入学共通テスト)の受験ルールなどで例解するのも、わかりやすい
  • ここからrule versus standardの話につなげていくのは容易
全体として、だいぶ前に宮澤俊義を意識して書いたこのコラムと響きあう内容で、「ことばによる統制」の意義を考えさせるChapterだ。

校則の例が出てきたことを受けて、今日の授業の後半では、大阪髪染め訴訟の地裁判決をみんなで読んでみた。多くの問題点があるところ、焦点はふたつにしぼった。①校則の性質と、②地裁判決の構成だ。②については、下級審における争点整理と事実認定の決定的重要性など。授業で触れなかった点について最後にフロアから質問が出て、持ち帰って調べたところ、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金の計算は複利計算ではなく単利計算だった(最判令和4年1月16日民集76巻1号1頁)。いやー、勉強になりました。

来週のテーマは「解釈」。ある最高裁判決を読む予定。さらに、同じコマの「法Ⅱ」を別クラスで担当している白石忠志教授に、遠藤聡太「鳥獣保護管理における銃猟行為の刑法的規律」Law&Practice 19号(2026年2月)掲載予定の存在を教えてもらったので、ぼくのクラスでもどこかでとりあげたい。このクラスで読む時期には、いま話題の熊出没がおさまっていればいいのだけど。

30 October 2025

OBBBAの続き、国際面、academic

さらに進めた。


ぼく:

what about academic


ChatGPT:

 Yes — there are academic-style resources you can tap to deepen your understanding of the international tax side of the One Big Beautiful Bill Act (OBBBA). They vary in degree of “peer-reviewed scholarly journal” vs working-paper format, but they’ll give you thoughtful theory, modelling, and critique rather than just practitioner how-to.

Here are some good ones + how I recommend you use them:


✅ Good academic-style pieces on OBBBA & related international tax reform

  • Brookings Institution: “When tax laws defy public opinion: What OBBBA reveals” — looks at how the law passed despite public opposition, discussing political economy and implications for tax legitimacy. (Brookings)

  • Budget Lab at Yale University: “Long-term Impacts of the One Big Beautiful Bill Act” — includes macro-modelling of the law’s effects, useful for international spill-over thinking. (The Budget Lab at Yale)

  • On more general international tax reform (not OBBBA-specific but strongly relevant): Profit Shifting and International Tax Reforms (Ferrari, Laffitte, Parenti & Toubal) — models how multinational profit shifting reacts to tax changes, which is very applicable to how OBBBA modifies regimes like GILTI/FDII. (arXiv)

  • A working academic summary of the OBBBA: Understanding the Tax Provisions of the One Big Beautiful Bill Act (Donaldson) — outlines many of the key provisions including international ones. (SSRN)


🔍 Why these help for international tax workstream

  • They provide theory and modeling (not just “what changed”) — e.g., how profit-shifting might respond, how tax base erosion flows may change.

  • They help position your planning advice in a broader context (global tax competition, treaty networks, BEPS/anti-avoidance) not just US-only detail.

  • They help with risk-spotting: by showing what kinds of behavioural responses are plausible you can anticipate what models/structures you’ll need to stress-test.

  • They help with commentary and publication if you or your firm want to write a thought-leadership piece.


🧠 How to use them in practice

  • Map theory → practice: Take a model result (e.g., the “elasticity of profit shifting” from the Ferrari et al work) and ask: how does the renamed/rewritten provisions in OBBBA (e.g., GILTI → “Net CFC Tested Income” etc) change that elasticity for US multinationals?

  • Use as supporting references: When you deliver a memo to clients, cite the academic work to back up planning warnings (“the literature suggests home-jurisdiction tax reform triggers profit-shifting increases of X%…”).

  • Identify gaps: The academic literature may not yet fully cover the new OBBBA international provisions (because the law is so recent). So you’ll want to flag “area needing further study” (e.g., how treaty networks will adjust to FDDEI changes) — and your client memo can note “we are working in area of limited empirical precedent”.

  • Stay alert for new working papers: Because OBBBA is very recent, many “academic” papers will be working papers or pre-prints rather than fully peer-reviewed. But that’s fine if you mark them as such.


If you like, I can scan and pull 5–10 recent academic/working-paper articles that address OBBBA’s international tax provisions (GILTI/FDII renaming, FTC limit changes, BEAT/BSMT changes, treaty impacts) and send you an annotated bibliography (with links, abstracts, and key findings) for your reference. Would you like me to pull that together?

OBBBAの続き、国際面

 悪くない。国際課税の側面に特化することもできますよ、とあったので、さらに調べさせた。


ぼく:

intl tax


ChatGPT:

Awesome—here’s a tight, international-tax–only hit list for tracking and using OBBBA changes in practice. Each item is what I’d keep open in a working browser tab.

Primary law, policy, and Hill materials

  • IRS OBBBA page / fact sheet — Canonical summaries and links to official guidance (even if not intl-specific, it’s the ground truth you’ll cite back to). (IRS)

  • House Ways & Means — Section-by-Section (PDF) — Best single map to where the intl provisions live (renaming GILTI→NCTI, §250 changes, QBAI elimination, etc.). (Ways and Means)

  • JCT materials — Revenue estimate tables and methodology notes; use for quant support and footnotes. (jct.gov)

  • U.S. Treasury (G7 “side-by-side” statement) — Sets the policy frame for Pillar Two interactions (IIR/UTPR exclusions for U.S.-parented groups). (U.S. Department of the Treasury)

Independent modeling & think-tank explainers

  • Penn Wharton Budget Model (OBBBA intl update) — Fresh cost/ETR modeling of NCTI/FDDEI and §250 mechanics. (Penn Wharton Budget Model)

  • Tax Foundation (intl changes + Pillar Two “side-by-side”) — Practitioner-friendly technical rundowns and state-spillover notes. (Tax Foundation)

Big-Four / major firm trackers (implementation detail & examples)

  • KPMG TaxNewsFlash (intl provisions PDF) — Dense, section-by-section with planning observations (NCTI, FDDEI, FTC, §250). (KPMG)

  • EY alert on G7 “side-by-side” — Useful to reconcile cross-border policy with U.S. implementation. (EY)

  • RSM — foreign tax credit under OBBBA — Practical FTC limitation implications under NCTI/FDDEI; good for examples. (rsmus.com)

Law-firm client alerts (great for nuance & traps)

  • McDermott Will & Emery — Clear summary of NCTI (ex-GILTI), §250 to 40%, and loss of QBAI; handy ETR impacts. (McDermott)

  • WilmerHale — Crisp outline of NCTI/FDDEI changes and timing—useful for “what’s effective when.” (ウィルマー・ヘイル)

  • Baker McKenzie (InsightPlus PDF) — Deep dive on mechanics (renaming, DTIR removal, permanency of §250 percentages). (insightplus.bakermckenzie.com)

Solid mid-tier practitioner notes (quick checks, cross-border angles)

  • HCVT — Bulletized NCTI/FDDEI/FTC changes (incl. 90% indirect FTC, QBAI elimination) for quick reference. (hcvt.com)

  • BDO (Canada-facing brief) — Good cross-border perspective; helpful when coordinating with foreign advisors. (BDO Canada)

  • IBA feature — Policy-level summary on global repercussions; useful for board memos. (IBA)


If you tell me your specific workstream (e.g., FTC basketing/§904, loss/expense allocation to NCTI, FDDEI documentation, CFC structuring), I’ll stitch these into a focused reading stack with the 2–3 must-print PDFs and a one-page checklist.