商人は一つの国の国民であるとは限らない(A merchant...is not necessarily the citizen of any particular country)
最近の租税事件を含めて,そのおりおりに思ったことの断片をつづります。 Candid and biased, and hopefully stimulating, comments on recent tax developments in Japan (and other matters).
23 November 2013
20 November 2013
米国―Max Baucusの国際課税討議ドラフト
2013年11月19日付けで、上院財政委員会がInternational Business Tax Reform Discussion Draftをリリース。
外国子会社所得の課税繰延を廃止したうえで、次のものに置き換える案である。
また、税制改正による新税制への移行時に、これまで米国で課税されてこなかった外国子会社所得に対して、1回限りで20%課税を行う(8年間で分割納付)。
さらに、チェック・ザ・ボックス規則の国際的適用を廃止する案が盛り込まれるなど、BEPS Projectに対応する面もある。
今後の米国の税制改正論議に一石を投ずるものといえるが、どの程度の支持を得られるだろうか。2014年1月17日までコメントを募っている。Dan Shaviroのコメントがもう出ている。
外国子会社所得の課税繰延を廃止したうえで、次のものに置き換える案である。
- 米国顧客への販売益はフル税率で課税
- 外国市場に売られる製品やサービスから生ずる所得に対しては毎年ミニマム税を課税
- 受動的で可動性の高い所得はフル税率で課税
また、税制改正による新税制への移行時に、これまで米国で課税されてこなかった外国子会社所得に対して、1回限りで20%課税を行う(8年間で分割納付)。
さらに、チェック・ザ・ボックス規則の国際的適用を廃止する案が盛り込まれるなど、BEPS Projectに対応する面もある。
今後の米国の税制改正論議に一石を投ずるものといえるが、どの程度の支持を得られるだろうか。2014年1月17日までコメントを募っている。Dan Shaviroのコメントがもう出ている。
I teach Tax Law at UTokyo.
19 November 2013
米国―会社形態からの逃走
すでに1975年にワイオミング州でLLCができ、連邦租税法上そのパス・スルー取り扱いが認められたころから、きざしはあった。その後、法人段階で法人所得税を課されるいわゆる「C法人」の数は減少し、21世紀初頭にはパートナーシップの数のほうが多くなった。
しかし、このthe Economistの記事が取り上げるのは、天然資源など特定の業種だけが利用できるMLP(master limited partnership)が、上場会社に対する規制と法人所得税のいずれにも服さないため、会社という事業形式よりも好まれるようになっているという驚くべき事実である。日本語訳が
JB Pressにある。よりくわしい記事として、Rise of the distorporationがある。このdistorporationというのは聞きなれない言葉だが、会社の設立(incorporation)の逆という意味で使っているのだろう。
The Economistの処方箋は、会社に対する法人税率を下げ、上場会社に対する規制をゆるめるべし、というものである。たしかに、いずれかの事業形式が極端に有利になる状況は、改善すべきであろう。もっとも、簡単に税務上の赤字を配ることができたり、ガバナンスや開示などに関する最低限の要請をかいくぐることができたりする法形式こそ、いかにもあやしいのではないか。
しかし、このthe Economistの記事が取り上げるのは、天然資源など特定の業種だけが利用できるMLP(master limited partnership)が、上場会社に対する規制と法人所得税のいずれにも服さないため、会社という事業形式よりも好まれるようになっているという驚くべき事実である。日本語訳が
JB Pressにある。よりくわしい記事として、Rise of the distorporationがある。このdistorporationというのは聞きなれない言葉だが、会社の設立(incorporation)の逆という意味で使っているのだろう。
The Economistの処方箋は、会社に対する法人税率を下げ、上場会社に対する規制をゆるめるべし、というものである。たしかに、いずれかの事業形式が極端に有利になる状況は、改善すべきであろう。もっとも、簡単に税務上の赤字を配ることができたり、ガバナンスや開示などに関する最低限の要請をかいくぐることができたりする法形式こそ、いかにもあやしいのではないか。
I teach Tax Law at UTokyo.
11 November 2013
英国―受益者情報の登録と開示
このthe Economistの記事によると、受益者の登録が6月のG8によって支持されたのち、10月31日に英国がその公開を打ち出したという。より短い記事はこれ。Tax Justice Networkの番付も記事になっている。
I teach Tax Law at UTokyo.
10 November 2013
国連モデル租税条約7条1項の影響力―さらに低下
2013年10月下旬の国連専門家会議に,IBFDの報告書が提出されていた。この報告書は,国連モデル租税条約の条項が各国の締結する租税条約にどの程度反映しているかを調査するもので,1997年と2011年の調査の延長にある。今回は,1997年から2013年に締結された租税条約2036本を対象として,若干のものを除外したうえで,5条や7条,14条などいくつかの条項の反映具合を検討した。
手堅い基礎データとして重要であるばかりでなく,いろいろ興味深い結果を得ている。たとえば,
こういった事実を実証的に明らかにするのは,大変な労力を要する。調査作業をリードしたWimとJanには,「公表おめでとう」といいたい。
手堅い基礎データとして重要であるばかりでなく,いろいろ興味深い結果を得ている。たとえば,
- 恒久的施設の定義に関する5条3項のように,40%以上の租税条約で採用されているものがあること
- 7条1項の限定的な吸引力主義(limited force of attraction)ルールのように,15%以下の租税条約でしか採用されておらず,しかも,1997年の調査時と比べても採用率が低下したものがあること
こういった事実を実証的に明らかにするのは,大変な労力を要する。調査作業をリードしたWimとJanには,「公表おめでとう」といいたい。
I teach Tax Law at UTokyo.
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