2.読んでみると、BEPSという言葉の代わりに、スピルオーバーという汎用性の高いコンセプトを用いている。すなわち、スピルオーバーとして
- 実物・金融フローへの影響
- 投資その他の実際の経済活動とペーパー上の利益移転の両方を含む法人課税ベースへの影響(base spillover)
- 各国の税率設定や優遇措置導入などへの影響(strategic spillover)
- 世界価格への影響
3.この文書の特色は、IMFの技術協力活動の経験をふまえ、途上国目線にたっていることである。続くくだりでは、途上国にとっての問題領域として
- 条約漁り(租税条約締結の得失をよく検討すべきこと、締結する場合にはLOB条項で条約漁りに対処すべきこと)
- キャピタルゲイン(インドのVodafone事件で有名になった間接譲渡の取り扱い、特に天然資源がらみで問題になる)
- 利子費用控除
- 移転価格(途上国にcapacity buildingが必要であること、比較可能性検証のために公開データを改善すべきこと)
4.スピルオーバーへの対処策について、正直に困難を指摘するところは、良心的だと思う。対処策として
- 最低課税(minimum tax)
- 全世界課税の要素を強化
- 定式分配(formulary apportionment)
- 独立企業原則との整合性を考慮した定式的プロフィット・スプリット(formulary profit split)
- 仕向地主義法人課税