近藤絢子・深井太洋「市町村税務データを用いた既婚女性の就労調整の分析」が、RIETIディスカッション・ペーパー23-J-049として公表されていた。個人住民税の課税データを用いることにより給与収入を把握し、1万円単位でどこに分布の不連続があるかを明らかにしている。
制度的には、100万円、103万円、130万円といったところに壁がある。
- 個人住民税の均等割がかかり始める年収の閾値は⾃治体によって異なり、ほとんどの⾃治体で96万円から100万円の間
- 年収が100万円を超えると、個人住民税の所得割がかかり始める
- 年収が103万円を超えると国の所得税がかかりはじめるが、超えた部分に対して5%の税率が適用されるだけだし、夫の配偶者控除・配偶者特別控除は38万円で変わらない
- 年収が130万円を超えると、年⾦の第3号被保険者と健康保険の扶養家族の上限に達する
しかし、このペーパーは、データに基づく分析により、103万円で年収調整している人が多い実態を明らかにしている。ノンテクニカルサマリーから引用しよう。
「2018年の配偶者控除・配偶者特別控除の変更後、103万円以下に年収を調整する有配偶女性の割合は減り、130万円以下の範囲で103万を超える割合が増えたが、依然として多くの有配偶女性が103万円以下に調整している」
このことを端的に示す下記のグラフが印象的。どうしてそうなるのか・・・。これまで私の授業でも130万円の壁が大きいと述べてきたが、ちょっと認識を改めないと。