原審大阪地判平成20・10・14判例自治318・20のコメントが強烈。いわく,「公売処分手続において恣意的に配当をしてきたY市の租税の徴収方法を否定したものであり,同様の徴収方法を行っている他の地方公共団体に対して警鐘を鳴らす重要な裁判例である。」
Y市側は,公売手続における配当や充当について公定力を理由に不当利得返還請求訴訟ができないと主張した。しかし,この点については,すでに最判平成3・3・22民集45・3・322が,取消訴訟なくして直接に不当利得返還請求ができる旨を判示していた。そうであるのに,Y市側は,どうしてこのような主張をしたのだろうか。自治体法務の改善についてはいろいろな提案がされているが,訴訟に至った場合の先例との整合性チェックなど,工夫ができないものか。
地裁と高裁は,次の論点について異なる判断を下している。裁判所による配当が古い年度の租税債権についてされた場合に,新しい年度の租税債権に充当できるか。法定納期限を基準に担保権者との優先劣後関係を決するから,新しい年度の租税債権に充当すれば本来は劣後したはずの租税債権の満足を得られるし,その分だけ古い年度の租税債権が生き残って私債権者に優先することになる。地裁は,地方税法14条の10,国税徴収法16条等の趣旨からして,どの年度の税に充当するかは課税庁の裁量によるものではないとした。これに対し,高裁は,民法489条3号の法定充当の適用はなく,いずれに充当するかは課税庁の裁量に任されていると判示した。最高裁は上告不受理。