19 February 2012

国税不服審判所裁決平成23・6・28 所得税法183条1項「国内において給与等の支払をする」の意義

所得税法183条1項「国内において給与等の支払をする」の意義。

海外事業所で勤務する社員に,現地で所得税がかかる。すると,賃金手取額が少なくなってしまう。これを補うために,内国法人が海外勤務者について内規を設けた。そして,そのような外国所得税について,日本の内国法人が海外勤務者に代わって負担し納付することにしていた。

日本          外国
内国法人      海外事業所       
海外勤務者

この負担額のうち,社員が帰国後のものが問題とされた。税務署長は,「国内において給与等の支払をする」という要件に該当し,日本所得税の源泉徴収が必要だとした。これに対し,国税不服審判所は,支払事務が海外事業所で行われていたと認定し,源泉徴収義務はないと判断した。「国内において・・・支払をする」とは,「国内の事業所等において給与等の支払事務を取り扱うことをいう」と解釈したうえで,より具体的に,「支払事務を行った給与等の支払事務とは、給与等の支払額の計算、支出の決定、支払資金の用意、金員の交付等の一連の手続からなる事務をいう」と述べている。

同じ解釈は,所得税法212条1項「国内において・・・支払をする」についても,とられている。内国法人がドイツ法人に使用料を支払うさいに,たまたま役員がドイツに出張していたため,現地で支払ったという場合について,「国内で支払事務が取り扱われた」ものについては国内支払に該当するという質疑応答事例がある。

なお,国外支払であっても,国内源泉所得の支払者が国内に事務所,事業所その他これらに準ずるものを有する場合には,国内支払と同様に源泉徴収を要する(所得税法第212条第2項,事例)。