海洋掘削等の事業を行う内国法人が、パナマ子会社から、海洋掘削の作業の用に供するリグの貸付けを受け、その対価を支払った。これが日本の所得税法上、「内国法人に対する船舶・・・の貸付けによる対価」(161条3号)として源泉徴収の対象となるかどうかが争われた。東京地裁、そしてその控訴審である東京高裁は、ともに、この3号にいう国内源泉所得にあたるとして、源泉徴収を肯定。
原告は、本件リグは船舶ではなく、減価償却資産としての「機械及び装置」(161条7号ハ)にあたり、専ら国外において行う業務の用に供されていたから,国内源泉所得にあたらないと主張していた。裁判所が「機械及び装置」該当性を論じなかった理由として、浅妻章如・判批・ジュリスト1477号(2015年3月)8頁、9頁は、「船舶」に関する規定は「機械及び装置」に関する規定の特則である
という構造が判旨の前提にあると指摘する。
国際運輸業で船舶を運航する事業については、古くから相互主義免税のルールが発展してきた。これに対し、所得税法上の源泉徴収では、船舶の所在地や業務関連性を問わず、貸付けを受ける者が内国法人であるかどうかに着目して国内源泉所得に取り込んでいることに気づかされる。