08 November 2015

大阪高判平成26・6・18 歯科医の死亡共済金を一時所得とした事例

 本件負担金270万円           本件共済金800万円
B ------------------>社団法人A -----------------------> X

親子が歯科医だった。父親のBが死亡して,Xが800万円を受け取った。これが相続税法9条のみなし贈与財産に当たらず,しかも,一時所得の計算上270万円は控除できないとして,Xが敗訴。結論は第1審大阪地裁平成25年12月12日税務訴訟資料263号順号12351も, この控訴審も,同じであるが,理由付けにおける一般論がかなり違う。

控訴審は,相続税法9条の適用があるためには
贈与と同様の経済的利益の移転があったこと,すなわち,一方当事者が経済的利益を失うことによって,他方当事者が何らの対価を支払わないで当該経済的利益を享受したことを要する
と判示する。また,所得税法34条2項の解釈として
「収入を生じた行為をするため,又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」とは,その収入に直接対応する支出に限られ,その収入との個別的対応関係が不明な支出は含まれない
と述べる。

一般論の射程をみきわめる必要があるが,かんじんの事案にはいろいろとわからないところがある。Xにとって800万円がストレートに贈与税の対象になってしまうならば,所得税の対象になるよりも不利ではなかったか。(Xは自分で負担したと主張しているようであるが)もしBが270万円を負担していたのであったなら,最判平成24年1月13日民集66巻1号1頁(逆ハーフ・タックス・プラン)の理由付けによって,Xは自ら負担していない金額につき控除が否定されるのではないか。