11 June 2017

BEPS多国間条約に関する日本国の選択の概要,速報版

定例のSteve Towersの金曜ショーによると,各国のポジションを示すリストの合計頁数は2000頁を超えており,国際課税の専門家にとってはこの週末に読むべきものが多いらしい(もちろん冗談)。残念ながら私には,それらの全部に目を通す気力も(視力も)ない。

とりあえず,日本国の選択の概要(暫定版)をもとに,署名時の日本国の留保と通告のリストを読んでみた。これなら合計23頁。いまのところ,対象租税協定(Covered Tax Agreements)になるのは,日中や日英など,35本のよう。

とくに印象的なのは・・・

  • 7条(条約の濫用)につきPPTを選択
  • PE認定につき,12条(問屋)は選択,13条(準備的補助的活動)は選択肢A,14条(契約の分割)は留保
  • 仲裁(第6部)は選択

といった点である。条約締結ポリシーの機微を反映して,細かいところでいろいろと留保がついている。

  • 3条(課税上存在しない団体 transparent entities)→3条2に留保
  • 4条(双方居住者に該当する団体 dual resident entities)→4条1第2文に留保
  • 5条→特に記載がなく,要するに適用しないということらしい
  • 7条→PPTを選択し,すでに既存条約で入っている規定をリストアップ,たとえば日英や日仏の配当条項など
  • 8条→留保
  • 9条(不動産化体株式)→9条4を選択,9条1に相当する規定をもつ既存条約をリストアップ
  • 10条(第三国PE)→受け入れ,ただしリストアップはまだのよう
  • 11条(セービング条項)→留保
  • 12条(問屋)→受け入れ,既存条約をリストアップ
  • 13条(準備的補助的活動)→選択肢A
  • 14条(契約の分割)→留保
  • 16条(相互協議)→受け入れ
  • 17条(対応的調整)→受け入れ,ただしリストアップはまだのよう
  • 18条(仲裁)→受け入れ
  • 19条12→留保
  • 23条2→留保,いわゆるベースボール方式をとらない
  • 26条→仲裁条項を有する7本の既存条約をリストアップ
  • 28条→仲裁の範囲につき留保と異議
以上,暫定版として公表されたものの,速報版。読み間違えていないといいのだが・・・。
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