01 October 2022

IFA日本支部セミナーで、岡直樹・GloBEルールと日本のCFC

1.2022年9月開催IFA日本支部Webセミナーを視聴した。
*日時:2022年9月30日(金)15時00分~16時30分
*場所:Zoom
*内容:GloBEルールと日本のCFC
*講師:岡直樹会員(東京財団政策研究所)
コメント:浅妻章如会員(立教大学教授)、山川博樹会員(デロイトトーマツ税理士法人パートナー)

2.岡会員のメッセージは明確で
(あ)15%グローバルミニマム税により全世界どこでも超過利益に対し最低15%の課税となりクロスボーダーで租税回避しにくい状態になる
→したがって、
(い)日本のCFC税制を見直して経済活動基準は廃止して差支えない
というもの。
この主張の背景には、多国籍展開する日本企業の事務負担がきわめて大きい、という抜き差しならぬ事情がある。すでに経産省「最低税率課税制度及び外国子会社合算税制のあり方に関する研究会」の9月1日報告書は、複数の声を併記していた。

3.これに対し、今回のセミナーは岡会員個人の単一の声で語られたし、より広く国際課税に関する「新しい展望」が語られた(後述の5)。さらに、岡会員の報告に対するコメントとして、浅妻会員が移転価格との役割分担や未実現所得課税の米欧比較を問い、山川会員がCFC税制の改革の方向(9月1日報告書の13頁以下も参照)やUTPRの合理性を論じた。総じて、GloBEルールの何たるかを皆で共有するためにおおいに有益であったと思う。近い将来に「租税研究」誌上で引用可能になることが待たれる。

4.上記2(あ)の前提については、今後、Pillar 2を実施していく段階で、全世界どこでも最低税率15%という状態への移行がどこまで進むか。逆に言えば、現実にはどの程度の「漏れ」が出てくるか。このことを注視していきたい。substance based carveoutで抜ける部分は当然あるし、軽課税国がQDMTTで「対応したふり」をする(一般法人税率は依然として15%を下回っていてもかまわない)ことなど、いろんな展開がありうる。また、議論の大前提として、日本が法人税率30%を維持する場合、その半分の水準で割り切ってよいか、という点はあらためて要確認。

5.岡会員は結びのところで、「IIR、UTPRは、国境を越えた課税のありかたに新しい展望をもたらしたと言えそうだ」と述べた。この感触をきけたのが、ぼくにとっては一番大きな収穫。もはや、個別法人単位の規律をとびこえていることはもちろん、自国にnexusがあるから課税するというわけでもなく、そもそも自国の税収確保のための課税でもない。軽課税国に最低税率15%をやらせるための手段として税を使っているだけ。だから既存の国際課税のロジックはとびこえている。一般国際法が許容する範囲でなんでもあり(経済制裁でも安保理決議でもOK)という世界ではないか。