08 December 2023

租税法入門第3版

租税法入門第3版を出版していただきました。

第2版の刊行後5年余りの間に、税制改正が繰り返され、重要判例が登場し、注目すべき研究が公表されました。そこで、このような新しい動きを織り込んで、第3版としました。所得課税を中心に租税法の見取図を簡潔に描くこと、そのさい租税政策を意識すること、という基本方針に変更はありません。

租税法の学習を山登りにたとえると、所得課税を素材として租税法に入門するのは、よく整備された太い山道を登ることに似ています。登山者の往来も多く、議論の蓄積もあるので、初めて租税法を学ぶ方に適しています。日本における公的サービスの資金源としては社会保険料や消費税の比重が高まっていますが、租税法の学習にあたってまず所得課税に取り組むことの利点は明らかです。

ときおり、『租税法入門』という本書の題名が入門書のイメージにそぐわない、とおっしゃる方がいます。これに対しては、本書の初版への書評が次のように指摘してくれています。「本書は、租税法の入門書といっても、税金の計算方法を学ぶ書物ではなく、『租税法』という学問として、そのような計算を基礎付ける思想や計算の意味を考えて、あるべき課税の姿を考えようとする書物である。」(須藤典明「Book Review 租税法の明日を求めて 増井良啓『租税法入門 (法学教室ライブラリィ) 』を読んで」金融法務事情1998号[2014年]124頁)。まさにこの指摘の通り、現行法の骨格を学び、その基礎を問う営みへの入門、という意味として題名をご理解いただければ幸いです。

本書の改訂が可能になったのは、あたたかく励ましてくれた先輩・同僚・友人と、熱心に講義や演習に参加された方々のおかげです。安佐鎮裁判官は本書第2版の韓国語版を公刊されました。有斐閣編集部の皆さまはプロフェッショナルな仕事を遂行されました。感謝申し上げます。